カナダの映画雑誌「24images」のオンライン版にて、映画祭関係者・批評家による2014年の短編アニメーショントップ10リストが公開された。

このリストは、カナダ・モントリオールのシネマテーク・ケベコワーズのキュレーター(アニメーション担当)で同誌の編集委員も務めるマルコ・ドゥ・ブロワ氏の発案によるもので、2013年のトップ10を選ぶ昨年の第一弾に続いて、二年目となる。

同リストは、アヌシー、ザグレブ、オタワ、ファントーシュ、メルボルンをはじめとする主要なアニメーション映画祭のアーティスティック・ディレクターや、短編アニメーションを専門的に観ている批評家・プログラマーなど計17名が、2014年に初めて観た短編アニメーション作品の中からベストの10本を選ぶというものである。

 
「2014年公開・発表」ではなく、「選者が2014年に初めて観た作品」が対象となっているのは、映画祭を中心として公開・発表される短編アニメーション特有のスケジュールによるものだ。短編アニメーションは完成後世界中の映画祭へと応募されていくわけであるが、それぞれの映画祭の応募受付期間との兼ね合いもあり、だいたい2年くらいをかけて様々な映画祭を回っていくこととなる。それゆえ、地域によって、プレミア上映の年度が異なってくるケースが多い。そのような事情から、今回のリストの対象となる作品には、2014年作品のみならず、2012年・2013年制作のものが混じる可能性がある。ある選者が選んだ作品が、他の選者の昨年のリストに入っているというケースも考えられる。このようなトップ10リストには選者全員の評価に基づく総合ランキングがつきものだが、今回のリストにおいてそれが行われていないのは、短編アニメーションをめぐるそのような事情も影響しているだろう。

そのかわり、多くの選者のリストに入っている作品の集計は行われている。この集計結果は、今年のアニメーション映画祭シーンにおいて最も注目を集め、話題を呼んだ作品群として理解することができる。昨年のリストにおいて最も多くの選者がリストに入れた作品は、カナダ国立映画製作庁(NFB)製作、テオドール・ウシェフ監督の『グロリア・ヴィクトリア』(カナダ、2013年)だったが(14名中11名が言及)、今年のリストでは、NFBとエストニアのヨーニスフィルムによる国際共同制作作品『パイロット・オン・ザ・ウェイ・ホーム』(プリート&オルガ・パルン監督、エストニア=カナダ、2014年)が17名中7名のリストに挙げられ、トップとなった。NFBの関わった作品が2年連続で「最も注目を浴びた作品」の栄誉に輝いたことになる。日本作品では、水江未来監督の『WONDER』(日本=フランス、2014年)が最多となっている(4名)。

アニメーション映画祭関係者によるこのトップ10リスト作成の背景には、短編作品に対して最も成熟した評価を与えるアニメーション映画祭シーンの見方が、その外部となかなか共有されにくい現状がある。短編アニメーション作品は、尺の制約上、なかなか一般的な商業流通に乗りにくい。近年はYouTubeやVimeoをはじめとするオンライン動画サイトの整備により、鑑賞できる環境自体は過去に比べて増えてはきているが、短編作品の市場規模の小ささとそれに伴うジャーナリズム・批評の不足ゆえ、体系化された見方はなかなか共有されづらい。現状において短編アニメーション作品が最も大きな露出にさらされるのは米アカデミー賞の短編アニメーション部門だが、同賞によるノミネート作品や受賞作品の選定は、選ばれる作品の地域的・文脈的な偏りや保守的なアニメーション観ゆえ(アカデミー賞会員に対しては、短編どころか長編を含めたアニメーション全体への理解の不足も指摘されている)、とりわけ関係者からの批判を受けることが多い。

今回のトップ10リストは、このような状況において、容易にアクセスができるウェブ上にてリストを公開することにより、短編を扱うことを仕事とする専門家たちの見識を共有することを可能にするという意味で、とても意義深いものであるといえるだろう。

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