2013年3月、国際アニメーション学会(Society for Animation Studies)が「アニメーション・スタディーズ2.0 (Animation Studies 2.0)」というブログを立ち上げ、それを通じた新たな活動を開始した。

このブログは、発展目覚ましい近年のアニメーションの現状を通常の学会の活動ペースでは捉え損ねてしまうというジレンマを背景に、その解消のために立ち上げられたものであり、ブログ媒体の特徴を活かして、アニメーションの最新動向を反映した学術的エッセイをタイムリーに発表できる場所となっている。また、ブログという開かれた場であることから、学会員ではない人にでも学会の動向が見えるようにすることもひとつの目的とされている。

「アニメーション・スタディーズ2.0」は月ごとにテーマを設定し、英文で300〜500ワード程度の短い原稿の投稿を募る。応募のあった原稿は編集委員会の選定を経て、週に約1本のペースでブログにアップされていく。

3月の立ち上げ以来、これまでに取り上げられたテーマは、「アニメーション・スタディーズ2.0」、「アニメーション・ドキュメンタリー」、「アニメーションにおける技術的発展(デジタル以前)」、「アニメーションにおける技術的発展(デジタル以後)」、「アニメーションにおける映像と音」といったもので、アニメーション研究の現代的意義を問うものから、近年のトレンドになっているテーマについて議論を深めるもの、クラシカルな題材を現代的に再考するものまで、幅広い。

「アニメーション・スタディーズ2.0」の各記事を見てみると、比較的短い分量での投稿が求められていることもあり、しっかりと論考を展開するよりは、問題提起やアイデアの投げかけといったオープンな性質を持った文章が目立つ。その結果、アニメーション研究者がどのような前提のもと、何をトレンドとして考え、それに対してどんなアクションを起こそうとしているのかが明確になっており、アニメーション研究の成果を概観する入口として最適なものとなっている印象がある。

たとえば、これまでアップされた記事には、レイ・ハリーハウゼン、フライシャー・スタジオ、ノーマン・マクラレン、オスカー・フィッシンガーといった、すでに評価の定まった感のある「大物」も取り上げられているが、アニメーション・スタディーズの最新の知見からまた新たな側面が明らかになりつつあることを知ることができる。また、近刊予告や進行中のプロジェクトの経過報告といったようなものもあり(たとえば、来年はノーマン・マクラレンの生誕100周年であり、数多くのプロジェクトが進行中であるということなど)、近い将来のアニメーション研究の主要なトピックとなりそうな動向についても、ある程度理解することができる。

「アニメーション・スタディーズ2.0」は、1987年の設立以来25年近くの蓄積を積み重ねてきた国際アニメーション学会の研究の蓄積を凝縮されたかたちで読み取ることを可能にするものであるといえる。開かれた場において、これまでよりも明快に研究の知見が発表されているという意味においても、アニメーション研究の分野における注目すべき試みと考えることができるだろう。

Animation Studies 2.0

http://blog.animationstudies.org/