日本デジタルゲーム学会(DiGRA JAPAN)は2014年8月24日、東京工科大学(東京都八王子市)で2014年夏期研究発表大会を開催した。大会では24件の口頭発表と、12件のインタラクティブセッション、1件の企画セッションが行われ、100名以上の研究者・学生・ゲーム業界関係者などが参加した。予稿集はウェブ上で公開され、口頭発表の内容もUstream上で録画配信されており、自由に参照できる。

本大会のテーマは「技術・研究・教育」で、テレビゲーム全体を総括的に扱う同学会らしく、様々な分野の研究発表が行われた。なかでも「デジタルゲーム研究の新地平」と題して行われた企画セッションは、その性質が色濃く見られた。セッションでは大会委員長を務めた三上浩司氏(東京工科大学)をはじめ、学会編集委員も務める6名の研究者が、各々の研究分野(社会心理学・人文学・社会学・教育学・経営&経済学・工学)におけるゲームと研究の関係や、求められる論文傾向などについて紹介した。

実際、国内のテレビゲームを巡る学問的な研究は長く低調だったが、近年では状況が改善しつつあり、各々の専門学会で論文投稿が増加しつつある。また工学分野に限定しても、コンピュータグラフィックや人工知能など、様々な専門学会が存在する。そのため学会のさらなる活性化のためには、論文投稿を増やして学会誌の発刊サイクルを増やす必要性があり、査読体制の強化が求められていた。こうした課題に対して積極的に取り組む姿勢を示した点が、本大会の大きな意義として挙げられるだろう。

口頭発表では『ゼビウス』『ドルアーガの塔』などの生みの親として知られる、遠藤雅伸氏(東京工芸大学)による「人はなぜゲームをやめるのか?〜ゲームデザイン由来の理由〜」が注目された。遠藤氏はインターネット上で行ったアンケートをもとに、プレイヤーがゲームを中断する理由について、1532件の有効データから10項目を整理。「苦痛(本来の楽しさの喪失)」「不一致(自分の趣味嗜好と一致しない)」「失敗(与えられた課題が達成できない)」「面倒(プレイに手間がかかりすぎる)」の4つの理由が、全体の75%以上を占めると報告した。近年のゲーム業界では基本プレイ無料のアイテム課金モデルが主流になっており、プレイヤーのゲーム体験における「中断と再開」の適切な管理が重要視されるで、本研究の持つ意味は大きく、追加・派生研究が期待される。

インタラクティブセッションでは、シリアスゲームやゲーミフィケーションといった、ゲームメカニクスを用いた実用領域のコンテンツ開発における研究発表が、全10件のうち6件を占めた。東京工科大学メディア学部では、短期間で即席の開発チームがゲームを開発する、ゲームジャムの手法を用いて開発した英語学習ゲームの制作実例などについて発表。中部大学人文学部からは、恋愛シミュレーションゲームを用いた地域振興コンテンツの企画開発という発表が行われた。

このほか閉会式では2014年度の年次大会に関する発表も行われた。2015年3月7日・8日に宮城大学(宮城県仙台市)で実施される。投稿募集は追って公式サイト上で行われる予定だ。

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日本デジタルゲーム学会
http://digrajapan.org/