立命館大学専門職大学院経営管理研究科(RBS)と立命館大学ゲーム研究センター(RCGS)が主催する特別セミナー「温故知新—ファミコンとプレイステーションにみる“プラットフォーム”ビジネスの神髄」が2017年10月14日、立命館大学で開催された。セミナーでは1980年代~90年代を支えた両家庭用ゲーム機の開発責任者が登壇。経営学をはじめ、さまざまな学術関係者が聴講する中で、当時の開発意図やゲーム産業の拡大などについてディスカッションを繰り広げた。

聴講者は100名近くに及んだ(撮影:筆者、この頁以下同様)

セミナーは二部構成をとり、前半では元任天堂でファミコン・スーパーファミコンの開発を担当した上村雅之(うえむら・まさゆき)氏(現立命館大学ゲーム研究センター長・衣笠総合研究機構客員教授)と、元ソニー・コンピュータエンタテインメント(現ソニー・インタラクティブエンタテインメント)でプレイステーションシリーズの開発を主導した久夛良木健(くたらぎ・けん)氏(サイバーアイ・エンタテインメント代表取締役社長など)の両名が、ゲーム機の企画・開発とサードパーティの拡大について、当事者ならではの講演を行った。

後半ではGzブレイン代表取締役社長で、『週刊ファミ通』をはじめ様々なゲームメディアの出版に携わった浜村弘一(はまむら・ひろかず)氏も加わり、当時の誌面を紹介しながら、上村氏・久夛良木氏とパネルディスカッションを展開。モデレータは映像学部の中村彰憲氏が務め、各々のゲーム機におけるサードパーティの増加とプラットフォームビジネスの拡大の相違点・類似点について議論が行われた。このほか、オープニングスピーチを経営管理研究科研究科長の奥村陽一氏、クロージングスピーチを映像学部の細井浩一氏が務めた。

上村雅之氏(立命館大学ゲーム研究センター長・衣笠総合研究機構客員教授)

ファミコンとプレイステーションの開発秘話

上村氏は任天堂の社史を紐解きながら、「任天堂は『遊び道具』のメーカーで、会社にDNAが染みついており、テレビゲームも玩具の延長線上で捉えていた」と振り返った。そのためファミコンでは当初、他社の参入を想定していなかったとのこと。その一方、ファミコンでPPU(映像処理用の半導体)の再設計を繰り返したことから、サードパーティ製ソフトの全数チェックを行う必要性に迫られたこと。これらを背景として、プラットフォームビジネスの概念が生まれてきたこと、などを解説した。

久夛良木氏は1986年にシーグラフで公開された短編CG映画『ルクソーJr.』の衝撃が、プレイステーションの発端になったと述べた。『ルクソーJr.』はプリレンダーCGだったが、いつの日かリアルタイムCGでインタラクティブに操作できる時代が来ると想像したからだ。その上で「事業用に作られていたコンピュータとエンターテインメントを結びつけ、新しい市場を作り出したかった」とコメント。これが映像業界をはじめ、さまざまなクリエイターの流入につながり、世界で12兆円の産業に繋がったと振り返った。

久夛良木健氏(サイバーアイ・エンタテインメント株式会社代表取締役社長/立命館大学大学院経営管理研究科客員教授)

拡張するゲームビジネスの方法論

パネルディスカッションでは、スーパーファミコンとプレイステーションのそれぞれにおける代表作の傾向や、プラットフォームマネジメント戦略、海外企業との連携などについて議論が行われた。浜村氏はスーパーファミコンのカートリッジ方式について、「スーパーFXチップのように専用の半導体を加えることで機能拡張ができた」と指摘。一方でプレイステーションについて、異業種のクリエイターを積極的に取り込むことで、ソフトの多様性が格段に増加したと振り返った。

これに対して上村氏は「スーパーFXチップを最初に用いた『スターフォックス』の社内評価は低かった。社内評価と売上は別ものだった」として、さまざまなアイディアを試せる環境を用意することが大切だとコメントした。久夛良木氏は「クリエイターが何でも描ける白いキャンバスを作るような感覚でハードを設計していた」とコメント。ハードウェアと異なり、ソフトウェアによる拡張には限界がなく、特に海外市場で大人向けのゲームが多数発売されたことで、ゲーム文化が広がったと語った。

聴講者の大半はゲーム業界には縁がない、一般の学術関係者だった

最後にゲーム業界に対する提言として、久夛良木氏は「初代プレイステーションは弾けまくっていた。今、ゲームを作っている人は、もっと楽しんで作ってほしい」とコメント。上村氏は「シンプルイズベストの追求を日本人にはしてほしい」と指摘した。浜村氏は「VRゲームやeスポーツなど、それまで想像の世界でしかなかったものが、どんどん現実の風景になってきている。キャッチアップするのも大変だが、非常にエキサイティングで、今後も期待している」と述べた。

これらの議論を巻き取り、中村氏は「ゲームのプラットフォームビジネスを研究することで、他のビジネスにも応用できる」と分析。細井氏は「日本で家庭用ゲームビジネスが最も盛況だった時代が、すでに今の学生には過去の話になりつつある」と指摘しつつ、上村氏と久夛良木氏は共に「舞台を作る」仕事をしていたとコメント。その中でも任天堂は最終消費者に、ソニーはクリエイターに焦点を当てていたと分析した。その上で今後eスポーツをはじめ、新たなプラットフォームが誕生してくる可能性があるとまとめた。

左から久夛良木健氏・上村雅之氏氏・浜村弘一氏

(information)
RBS×RCGS特別セミナー 「温故知新―ファミコンとプレイステーションにみる”プラットフォーム”ビジネスの神髄」
日時:2017年10月14日(土)13:30 ~ 16:40
会場:立命館大学朱雀キャンパス1階多目的室
主催:立命館大学専門職大学院経営管理研究科(RBS)
立命館大学ゲーム研究センター(RCGS)
http://www.rcgs.jp/2017/09/rbsrcgs.html