「[第21回]文化庁メディア芸術祭 記者発表会」が3月16日(金)に行われ、会場には受賞作家や受賞作品のプロデューサーらが出席した。過去最多となる世界98の国と地域から寄せられた4,192作品の応募作品の中から、受賞作品(大賞、優秀賞、新人賞)と功労賞が発表された。

当日の受賞者、委員

確かな力量を持った作品が大賞に

アート部門
『Interstices / Opus I – Opus II』(Haythem ZAKARIA)は、砂漠や海の風景を捉えたそれぞれの映像にデジタル処理を行い、オリジナルの風景を超越する「メタ・ランドスケープ」を引き出す映像作品だ。受賞のコメント映像では、作家は現在、アトラス山脈をテーマに3作目を製作中だという。
中ザワヒデキ審査委員は「大賞は難解だが、作品の背後にあるコンセプトの強さに説得力があった」とコメントした。応募要項から「デジタル技術を用いて作られたアート作品」という文言がなくなって2年目だが、いまだメディアアートの応募作品が多く、中ザワ審査委員は「メディアアートに限らず、アートとして力のあるものをしっかり見ていきたい」と今後の応募作品への期待を語った。

アート部門大賞  『Interstices / Opus I – Opus II』(Haythem ZAKARIA)
© Haythem Zakaria

エンターテインメント部門
大鷲のトリコとコミュニケーションを取りながら巨大遺跡のさまざまな仕掛けを解き明かしていくアドベンチャーゲーム『人喰いの大鷲トリコ』(『人喰いの大鷲トリコ』開発チーム〈代表:上田文人〉)が受賞した。
工藤健志審査委員は、文化庁メディア芸術祭の賞の意味は「承認」と「新しい価値の発見」だとし、これまでのゲームの文法とはまったく異なるゲーム体験を提供する本作は、後者の意味合いでの受賞だと述べた。


エンターテインメント部門大賞 『人喰いの大鷲トリコ』(『人喰いの大鷲トリコ』開発チーム(代表:上田文人))
© 2016 Sony Interactive Entertainment Inc.

アニメーション部門

『この世界の片隅に』(片渕須直)、『夜明け告げるルーのうた』(湯浅政明)の2作品が受賞した。アニメーション部門で2作品が同時に大賞を受賞したのは、第5回(2001)以来の16回ぶりとなる。
『この世界の片隅に』の原作は、2009年の同芸術祭マンガ部門優秀賞受賞作品だが、このときすでに本作製作の話が決まっていた。プロデューサーの真木太郎によると、受賞作品発表会の控室で原作者のこうの史代から監督として片渕を紹介された際、片渕は自分が本作の監督をするのだという実感が湧いたそう。横田正夫審査委員は『この世界の片隅に』に対し、日常動作に美しさを見出している点で特筆すべき作品と述べた。
また、湯浅は2004年に『マインド・ゲーム』、2010年に『四畳半神話大系』でも大賞を受賞しており、3度の大賞受賞はメディア芸術祭初となる。

左:アニメーション部門大賞  『この世界の片隅に』(片渕須直)
© Fumiyo Kouno/Futabasha/Konosekai no katasumini Project
右:アニメーション部門大賞  『夜明け告げるルーのうた』(湯浅政明)
© 2017 Lu Film partners

マンガ部門
『ねぇ、ママ』(池辺葵)が受賞した。池辺は2009年のデビュー以来、それぞれの人生を生きる女性たちを描いてきた作家で、2014年に『どぶがわ』で第18回同芸術祭マンガ部門新人賞を受賞している。「池辺が描き続けてきた“ひとりであること”というテーマが深化された作品」と門倉紫麻審査委員はコメントした。


マンガ部門大賞  『ねぇ、ママ』(池辺葵)
© Aoi Ikebe(AKITASHOTEN)2017

功労賞
日本のプラモデル業界を草創期から牽引してきた実業家の田宮俊作と、多くのマンガ研究書を上梓し、マンガと児童文化の評論研究誌『ビランジ』を発行し続けているマンガ研究者・同志社大学教授・マンガ家の竹内オサムが選出された。

受賞作品の傾向

アート部門では、優秀賞の『アバターズ』(菅野創/やんツー)、新人賞の『I’m In The Computer Memory!』(会田寅次郎)、『The Dither is Naked』(YANO)のような、社会を取り巻くシステムを可視化・体感する作品が多く受賞した。
エンターテインメント部門は、森をコンテンツ化した『FORESTA LUMINA』(『FORESTA LUMINA』制作チーム)、高い技術力を誇る町工場の魅力を再発見できる『INDUSTRIAL JP』(INDUSTRIAL JP)など、先述の工藤審査委員の言う「新しい価値の発見」を成し遂げた作品が優秀賞に名を連ねた。
アニメーション部門では大賞の2作をはじめ、新たな上映形態を提示した優秀賞の『COCOLORS』(『COCOLORS』制作チーム〈代表:横嶋俊久〉)や平面的なグラフィックの特性を縦横無尽に活用した新人賞の『Yin』(Nicolas FONG)など、独自の表現を模索した意欲作が受賞し、多彩な技法の作品が集まった。
マンガ部門では、優秀賞の『銃座のウルナ』(伊図透)、新人賞の『バクちゃん』(増村十七)、『BEASTARS』(板垣巴留)など、異なる種族や国家間での対立や共生の難しさを説いた作品が多く、世相を反映した結果となった。
また、アニメーション部門とマンガ部門では、同じ作家の応募作品同士で賞を争う例が目立った。アニメーション部門の湯浅は『夜明け告げるルーのうた』と『夜は短し歩けよ乙女』、マンガ部門の池辺は『ねぇ、ママ』と『雑草たちよ 大志を抱け』が、それぞれ大賞・審査委員会推薦作品となっている。
受賞作品展は、2018年6月に国立新美術館(東京・六本木)を中心に開催される。


(information)
第21回文化庁メディア芸術祭 記者発表会
2018年3月16日(金)
会場:国立新美術館 3階講堂

第21回文化庁メディア芸術祭受賞作品展
2018年6月13日(水)~6月24日(日)
会場:国立新美術館ほか
入場料:無料
主催:第21回文化庁メディア芸術祭実行委員会
http://festival.j-mediaarts.jp