学校法人 京都精華大学

概要

メディア芸術分野の文化資源として重要な位置を占めるマンガに関する史資料の収集、整理・保存、利活用を実践し、その成果を検証することで、作業手法の進化や開発を図る。同時に、対象であるマンガ文化史資料に関する、価値付けの検討を行う。これにより、今後整備されるべきその他のポピュラーカルチャーのアーカイブ構築や、その史資料の価値付けの際に参考となる指標の提供を試みる。本事業では、マンガ文化史資料のうち、マンガの〈原画〉を取り扱い、マンガ原画のアーカイブ――「収集」「保存・整理」「利活用」――のモデル構築のため、調査や実践を行う。
機関連携先(代表者)は以下の6機関(カッコ内は代表者)である。
1)京都国際マンガミュージアム(伊藤遊)
2)明治大学 米沢嘉博記念図書館(ヤマダトモコ)
3)横手市増田まんが美術館(大石卓)
4)北九州市漫画ミュージアム(表智之)
5)東洋美術学校
6)新潟市/新潟市マンガ・アニメ情報館

中間報告

報告者:京都精華大学 国際マンガ研究センター 研究員 伊藤遊

現段階では、マンガ原画の「保存・整理」について考えるため、ヤマダトモコ代表のもと「保存修復研究部会」を立ち上げ、各連携機関所蔵の原画の状態調査を実施している。また、マンガ原画の「保存・整理」および「利活用」について考えるため、倉持佳代子代表の「マンガ家インタビュー部会」では、マンガ原画の保存状況や活用のあり方について、マンガ家および出版社関係者にインタビューを実施した。
業界全体で取り組むべき問題点として、マンガ原画の保存作業や調査に関わっている人材に対し、将来的なメディア芸術事業の現場で活躍してもらうための「制度」整備の必要性を指摘した。
また、データベース登録の対象となるものの基準、用語表記のゆれ、扱いがデリケートな原画類の保管方法などについては、各連携機関と連携・協議を重ねながら模索する予定である。

伊藤游

最終報告

報告者:京都精華大学 国際マンガ研究センター 研究員 伊藤遊

各連携施設単位では、京都国際マンガミュージアムにて杉浦幸雄原画207点、ささやななえ原画485点、谷ゆきこ原画70点、横手市増田まんが美術館にて矢口高雄原画148点、能條純一原画476点、小島剛夕原画456点、明治大学 米沢嘉博記念図書館にて三原順原画446点や子どもの頃の絵や文集なども含む資料類75点の整理や調査を行なった。こうしたアーカイブの事業の継続によって、スタッフの漫画マンガ原画を扱うスキルは確実に蓄積されたが、それが発揮されるべき場の「制度」が整備されていない。今後は、スキルを磨く場を提供しつつ、「ポスト」の確立や「資格」の付与といった制度の構築が必要だろう。
保存修復研究部会では、新潟市/新潟市マンガ・アニメ情報館、横手市増田まんが美術館、北九州市漫画ミュージアム、京都国際マンガミュージアムの各関係者及びマンガ家・竹宮惠子へのインタビュー調査を実施した。
また、これまではマンガ史資料のアーカイブに対して、人文・社会科学的な資料としてのアプローチを試みていた。しかし、今回は東洋美術学校の協力のもと、保存科学の観点、特にモノ=物質としてのアプローチから、マンガ原画の〈整理・保存〉の問題点や対策等について知見を共有した。今後もこういった別の視点を持つ、幅広い分野の研究者との共同研究が必要となるだろう。
マンガ家インタビュー研究部会では、マンガ家・ささやななえこ、マンガ編集者・佐川俊彦、マンガ家・竹宮惠子、大手マンガ出版社A社アーカイブ担当部署関係者に対するインタビュー調査を実施。特に原画の将来的な利活用に関する知見を得た。
モデル開発研究部会では、各連携施設及び各研究部会における知見を踏まえ、マンガ原画のアーカイブに関するモデル化を試みた。モデル図は、一般参加型のシンポジウムにおいて提案・検討された。それにより、マンガ原画の所蔵・収集を目指す個人や施設等が取り組むべき課題や相談先などを具体的にイメージできるようになった。モデル図を参照し、原画アーカイブを実践する個人や施設等との幅広いネットワークを構築することで、〈収集〉〈整理・保存〉の方法論の深化、〈利活用〉パターンの多様化の模索が可能となるだろう。
その他の成果として、定期的な全体会議や研究会等を通じ、施設間の連携体制がより強化された。その結果、ある施設の所蔵する原画の初出調査を、書籍資料が充実している別の施設が行なう、といった共同作業も発生した。

実施報告書(PDF 約15.2MB)

※敬称略