国立大学法人東京芸術大学 東京藝術大学

概要

戦後のメディアアートの大きなエポックと考えられる1970年大阪万国博覧会の実態調査を行うとともに関連する資料の目録化を行いメディア芸術データベースに登録することを目的としている。主にメディア芸術の創造性と先進性という観点からの資料集成を実現するために、企業と個人に焦点を当て、約半世紀前に行われた来場者6,400万人を超える大イベントの概要と資料の調査を進め、所在調査とそのメタデータ化(目録化)を行う。
10〜12月にかけて、「所蔵目録データ入力」を行うために対象の所在調査とその管理者に協力依頼、ヒアリングを実施。資料の状態と管理状況を調査する。1〜2月には、既存目録のデータチェック及び整形を行いデータベースのための目録データを入力する。データベースのサンプル入力を試みその検討をする。

中間報告

報告者:国立大学法人東京芸術大学 東京藝術大学 教育研究助手 和田信太郎

調査対象がおよそ50年前に開催された事業であるため、資料の所蔵管理者がその内容について把握していないことが少なくない。また資料の一部では劣化(紙の酸化など)が始まり、資料の把握とデジタルデータ化が早急に望まれる。当時、大阪万博に関わった参加企業や個人、その関係者へのヒアリングは資料を理解する証言が多く調査の進展には欠かせない。
調査を進めることで、万博の中でもお祭り広場のデバイスに関わるコンピュータ制御機構、その前章となるインターメディア関連展示(展覧会)は、日本におけるメディアアートの草分けとして位置づけられる知見が得られた。パビリオン関連の調査に先立ってインターメディア関連展示資料の調査・研究を行うことで、より重要な資料の所在調査とデータベース化につなげたい。

和田信太郎

最終報告

報告者:国立大学法人東京芸術大学 東京藝術大学 教育研究助手 和田信太郎

本事業では「資料の現況調査」と「資料集成の方法論の確立」のふたつを目指し、調査はミクロ調査【インターメディアに関する資料調査】、マクロ調査【インターメディア関連資料の調査】に分けて実施した。

1. ミクロ調査【インターメディアに関する資料調査】
お祭り広場の演出機構 、それに伴う諸装置(デバイス) の設計リーダーとして万博の計画段階から関わっていた建築家・磯崎新に焦点を当て、マイクロエスノグラフィーの手法を用いて、磯崎の所蔵する資料調査と対面調査を行い、関連資料のメタデータのサンプル作成と評価を行った。当時、新しい考え方として広まっていた「エンバイラメント(環境)」という言葉を発展させ、磯崎はテクノロジーやコンピュータを導入した「サイバネティクス・エンバイラメント」という独自の概念を発明し、「インビジブル・モニュメントとしてのお祭り広場」として、テクノロジーを造形表現に取り込んでいった。また、今回の調査では、磯崎が万博に至るまでの計画段階において予行練習になった「岡本太郎」展(1964)「色彩と空間」展(1966)「空間から環境へ 絵画+彫刻+写真+デザイン+建築+音楽の総合」展(1966)の3つの展覧会についても調査した。
以上の調査を経て、よりデータベースでの実用性や汎用性を高めるために目録項目(メタデータ)の検討をした。「著作権」という項目に関しては、ひとつのプロジェクト内で複数人が関わっていることが多く、メタデータの項目としての必要性を感じている。「保存」は、保存状態や閲覧可能かどうか、再生できるかどうかを示す項目とした。半世紀前の資料のため、資料の変形や劣化が起こり、閲覧が困難なもの、扱い方の難しいものも多く見つかった。今後は、ワークフローの検討や方法論の確立、ドキュメンタリストといった専門家が不可欠である。

2. マクロ調査【インターメディア関連資料の調査】
ミクロ調査の補完として、「大阪府日本万国博覧会記念公園事務所」「武蔵野美術大学 芦原義信建築資料」「株式会社渡辺プロダクション(渡辺美佐)」「小松左京ライブラリ」を対象に調査した。こうした、すでに公式な整理をしている資料を活用することで、本事業全体の調査の信頼性の確度をあげることを目的としている。そして、今後の目録作成に向けて、有効性が高いデータベースの検討やその可能性も含めて、これらを統合した目録データをもとにデータベースのプロトタイプを作成し、資料の再評価を行った。

大阪万博の調査では企業、団体、個人が所蔵する資料に頼らざるをえないが、そうした方々の協力のもと調査が実現した。一方で、資料の散逸も確認され、資料の所在や現況調査の必要性を強く感じた。課題としてはメディアアート分野はマーケットが乏しく、それゆえにカタログレゾネ(作品の詳細情報を記した総目録。アートマーケットで競売用のカタログとして作られはじめた)がないだけに作品の把握を困難にしている。どれが作品で誰が作者なのか、その判断が難しく、その基盤としても資料調査は必要であり、メディアアート関係者は広く認識し、専門的な人材育成が求められていることが挙げられた。

実施報告書(PDF 約12.0MB)

※敬称略