2014年9月2日から4日まで、横浜パシフィコで開催された「コンピュータエンターテインメントデベロッパーズカンファレンス(CEDEC)2014」(主催:一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会[CESA]、共催:日経BP社)の参加者数が6564名と、過去最大となったことがわかった。昨年度の約5000名から2割増加した。

この背景には携帯電話のスマートフォンへの移行に伴い、モバイルゲームが従来のウェブアプリから、ネイティブアプリに移行してきたことが挙げられる。ウェブの開発技術の延長で作れるウェブアプリと異なり、本格的なゲームが楽しめるネイティブアプリでは、家庭用ゲームの開発技術が求められる。事務局では参加者属性を明らかにしていないが、相当数のモバイルゲーム開発者が参加したと考えられる。

ただし、セッションは家庭用ゲーム向けが中心で、モバイルゲーム向けもデータ解析やサーバエンジニアリングなどの分野が多く、一番ニーズが高いとされるゲームデザインのセッションは乏しかった。モバイルゲーム開発者からのセッション公募が少なかったことが主な原因だ。家庭用ゲームと異なり、モバイルゲームは基本プレイ無料のアイテム課金方式が主流で、ゲームデザインも異なるため、消化不良だった参加者も多いのではないだろうか。

CEDECは1999年から毎年開催されているが、規模が拡大しはじめたのはプレイステーション3とXbox 360が発売された2006年前後からだ。これは国産ゲームの世界シェア低下の時期と重なっている。欧米のゲーム開発技術との格差に対する危機感が、世界最大級のゲーム開発者会議とされるゲームディベロッパーズカンファレンス(GDC)に追いつけ、追い越せの機運を生み、CEDECを成長させたとも言えるだろう。その結果、閉鎖的と言われた日本でも徐々に情報の共有が始まり、業界の透明化が進んできた。

一方で幸か不幸かモバイルゲームの市場は今、世界中で日本が最大となっている。またエンジニアリングと異なり、ゲームデザインは属人性が高く、体系化されたメソッドも少ない。その中で『パズル&ドラゴンズ』『モンスターストライク』など、一部のネイティブアプリがメガヒットを記録しているのが現状だ。そのため、まだまだ業界内でモバイル向けゲームデザインの知見を共有しようという機運は乏しい。また各社にしてみれば市場が拡大する中で、あえて手の内を明かすメリットは少ないというのも本音だろう。

ただし市場が成長過程にある間に、業界内で知見共有を進めなければ、海外企業に押されてシェアを低下させた家庭用ゲームの轍を踏むことになる。大手企業による開発者会議も実施されているが、各社の業績によって継続が左右されるため、本来であれば業界団体などによる主催が望ましい。そのためには、まず社内で知見の共有を進め、徐々に会社をまたいだ勉強会、そして業界カンファレンスへと広げていくことが重要だ。一方でCEDEC側も運営委員にモバイルゲーム企業の人材を増やす、公募概要をより明確にする、などの姿勢が求められる。

今や日本のゲーム業界は、モバイルゲーム向けのコンテンツ市場が家庭用ゲームソフトの市場を凌駕しており、さらにその差が拡大する見込みだ。もちろん、すべての知見をCEDECに統合する必要はなく、モバイルゲーム独自の開発者会議を立ち上げてもいい。ただし家庭用ゲームでもモバイルゲームと同じく、基本プレイ無料のアイテム課金方式が増加している。両者の知見が融合する場としてのCEDECの役割は、さらに重要になっていくのではないだろうか。

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CEDEC2014
http://cedec.cesa.or.jp/2014/