日本デジタルゲーム学会(DiGRA JAPAN、会長:岩谷徹東京工芸大学教授)は、2016年度の年次大会を3月11日(土)〜12日の2日間にかけて、愛知県東海市の星城大学にて開催した。

 今回も例年どおりに大学の学部生から教員、現役のゲーム開発者に至るまで、各方面から幅広い参加者が集まり、ゲームデザイン、AI、文化、ゲーミフィケーションなどのさまざまなセッションが設けられて発表が行われた。今年度においては、昨年から業界内でのトレンドとなっているVRに関する研究発表および展示が多く行われ、VRに特化したセッションが設けられたのが大きな特徴であった。

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今回の年次大会は、2日間をとおしてVRを利用した研究発表が目立っていた。

 ゲーム自体の研究・開発だけでなく、そのノウハウを他分野に応用を試みた発表も数多く行われた。ゲーミフィケーションのセッションにおいて、「視線入力操作における段階的訓練のゲーミファイ」というテーマで発表した島根大学の発表がその一例である。同大学の発表グループは、重度障害者が視線入力による文字入力をマスターするため、「EyeMoT」という視線入力訓練ソフトを使用した、風船割りや塗り絵などのゲームを利用した訓練の結果などを発表した。その機材は会場内に展示され、参加者が自由に体験できるようにもなっていた。

 同セッションでは、島根大学とNPO法人PADM、株式会社オリィ研究所による「スマートフォンを活用したバリアフリーマップアプリ活性化のためのゲーミファイ」と題した発表も行われた。本発表においては、車いすの利用者が快適に外出できるルートを、スマホを利用して世界中のユーザー同士で共有できるアプリの研究事例が報告された。

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島根大学による「視線入力操作における段階的訓練のゲーミファイ」の発表。参加者が視線入力操作ゲームを体験できる実機も展示された。

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「スマートフォンを活用したバリアフリーマップアプリ活性化のためのゲーミファイ」の発表より

 2日目の基調講演では、メディア作家で情報科学芸術大学院大学の赤松正行教授が「クリティカル・サイクリング」というテーマで講演した。室内トレーニング用の自転車とゲームを融合し、VR技術も取り入れた「Zwift」と呼ばれるシステムなどを例に挙げ、サイクリングとゲーム、ゲーミフィケーションにおける研究や実用例を説明した。

 また、「ゲームと産業」と題したセッションにおいては、名古屋工学院専門学校の山田愼氏が、「中部ゲーム産学協議会の活動 産学協同の事例として」というテーマで、中部地方におけるゲーム産業についての発表を行った。DiGRA JAPANの有志によって誕生した、「中部ゲーム産学協議会(略称GAIRA:Game Academics & Industries Relationship Association)」という企業や大学、専門学校や行政も参加する組織があり、参加費無料の展示イベントや研究会を開催するなど、中部地方におけるゲーム産業界の活動状況を発表した。

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赤松氏の基調講演「クリティカル・サイクリング」

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山田氏による、GAIRAを通じた中部地方での活動事例の発表

関連リンク

日本デジタルゲーム学会
http://digrajapan.org/

2016年度年次大会
http://digrajapan.org/conf2016/