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報告者 立命館大学 衣笠総合研究機構 松永伸司氏

研究マッピングゲーム領域実施メンバー

細井浩一氏、井上明人氏、福田一史氏、松永伸司氏の4名(いずれも立命館大学ゲーム研究センターのメンバーにより構成)

プロジェクト概要―目標と施策の対象

今年度の活動では、初学者向けに、ゲーム研究の歴史と現状を概観的にまとめて公開するというということが、大きな目標として設定されている。そのため本施策の主たる対象者は、ゲーム研究の初学者の学生や研究者らという想定であり、基本的にはゲーム開発者などといった産業関係者は念頭に置いているわけではないという。

昨年度の成果

ゲーム研究の主要文献のリストを作成済であり、また公開もなされている。同リストは、国内・国外からそれぞれ100件ほどの文献をピックアップしたものである。これを日本デジタルゲーム学会2015年度年次大会においてポスター発表を実施したほか、オンライン公開も実施されていると紹介した。

昨年度の課題および今年度の活動

松永氏は、リストの公開は、ゲーム研究を整理する上で一定の役割を果たしたが、それらの関係性や文脈などは記述しえない点に限界があると論じた。リストの問題点を補うために、今年度の具体的な活動としては、『ゲーム研究の手引き』という冊子を作成し、それらの配布をするということになったと、説明を行った。すなわち、文献間の関係性・位置づけやそれらに対しての評価といった、リストで表現しえないものを文章で記述するというアプローチである。現時点では、本手引きの原稿は校了済であり、印刷前の段階である。300部ほど印刷する予定で、日本デジタルゲーム学会2016年度年次大会で配布するほか、ゲーム研究を行っている各研究機関の研究室向けに送付予定となっている。内容としては、松永氏による「ゲーム研究の全体像」と、ゲーム分野各分野の研究者らによる「ゲーム研究の諸相」とするコラムで構成されている。

昨年度活動におけるもう一つの問題として、ゲーム研究の文献の範囲がどこまでかということがあったとした。例えばゲームデザインやゲーム業界本、またゲームクリエイターが書いた本などが含まれていないという批判である。実際、昨年度のポスター発表時にも本件に関する質問が多かったという。これについては、ゲームに関わる諸領域を整理する章を設けて、「ゲーム研究」の範囲を明確化することができた、と整理がなされた。

さらに、昨年の追加となる課題として国内と国外の文献リストで分野の傾向が違うという問題があった。すなわち、国外研究は人文社会系が多く、国内研究は産業論や情報工学よりの文献の比率が高かったというものである。本件については、手引きにおいて国外と国内のゲーム研究の歴史をそれぞれ概観した上で、なぜそのようなリストにおける偏りが生じるかを議論し、さらに、手引き後半のコラムで各分野の研究動向を論じることで、多様な観点から整理できたのではないかと、している。

今後の見通し

松永氏は、今後の見通しとして、冊子だけではアクセスが制限されるので、オンラインでの公開も行っていきたいと語った。さらに、例えば韓国のゲーム研究など地域ローカルの動向、AIや VRのゲーム研究など分野ローカルの動向など、これまで少なくとも日本のゲーム研究界隈ではあまり議論されてこなかった、もしくは接続が少なかったゲーム研究をもっと取り上げていきたいと、展望が語られた。