グリーと千葉大学教育学部藤川研究室は「ゲーム×学び」をテーマにしたスマートフォン向けの学習ゲームを用いて、千葉大学教育学部附属小学校の児童向け模擬授業を開催した。2月8日の授業では家庭科の教育内容をテーマにした2作品が使用され、5年生34名がゲームを開発した大学生やグリーのエンジニアからの指導を受けつつ、ゲームに挑戦した。

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公開授業は2つの教育ゲームを使用し、約90分間行われた。

本授業は藤川大祐氏(千葉大学教育学部教授)が担当する「メディアリテラシー教育演習」の一環で実施されているもの。「教育の情報化」を担う教員養成を目的に、千葉大学教育学部とグリーで開講しているもので、大学生と同社のエンジニアが協力して開発した教育ゲームが使用されている。

教育をはじめ、社会問題の解決にゲームを応用する試みは「シリアスゲーム」「アプライド(応用)ゲーム」などと呼ばれ、日本でも徐々に広がりを見せている。もっとも日本ではICT教育全般に対して教員側に抵抗感があることも否定できない。こうした中、本講座では学生自身がシリアスゲーム開発を行い、教材として授業を行わせる点に特徴がある。

ゲームは2016年10月にアイディアソンで企画され、12月に行われた2日間のハッカソンを経て開発されたもので、本授業は教育ゲームの効果を測定する実証実験も兼ねている。メディアリテラシー教育演習は2013年より毎年開講され、今年で4回目を迎える。本年度は社会科と家庭科で2タイトルずつ、合計4タイトルが開発された。

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タブレットは二人一組で支給され、ゲームに取り組んだ。

授業では児童が2人1組でタブレットを使い、大学生が先生役となって授業を推進。ハッカソン優秀賞作品で、衣服の知識とコーディネートを楽しむ『SHOWTIME』と、宇宙人の留学生に向けて住まい探しをサポートする『地球留学相談所』の2タイトルを体験した。ゲームが始まるとすぐに歓声が上がり、すぐに夢中になってプレイしていた。

◆SHOWTIME

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『SHOWTIME』でははじめに男女のキャラクターを選択し、衣服に関するクイズに挑戦する。正答率が高いとたくさん衣服が選べ、自由にコーディネートできる。コーディネートの結果はインターネット上で共有され、クラス全体で人気投票ができる。最後に「さまざまなセンスやコーディネートを認め合う気持ちを持って欲しい」とまとめられた。

◆地球留学相談所

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『地球留学相談所』ではプレイヤーは宇宙人留学生の相談役として物件探しをサポートしていく。宇宙人のさまざまな要望に応えて最適な物件を推薦するもので、メッセージの中に含まれる細かい気持ちまでくみ取ると高評価が得られる。教員役の大学生からは「相手の気持ちによりそって情報を取捨選択することが大事」だと説明された。

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『地球留学相談所』では全員がA判定を獲得した。

本講座は2年生以上を対象としており、半年間の授業で2単位が得られる。もっとも学生の中には翌年以降も履修する者がいるという。『SHOWTIME』のチームリーダーをつとめた古林智美さん(教育学部4年)も3年連続で履修しており「教育ゲームを作って子ども達に授業をすることが楽しく、夢中になってしまった」と語った。

なお開発されたアプリのうち、『SHOWTIME』はネット上で無償公開される。藤川氏は「これまで4年間講座を開講してきて、次第にゲームの水準が向上していった。今年は一定水準の教育ゲームができたと思う。今後は完成した教育ゲームを使って、授業の質をより向上させていきたい」と抱負を語った。