House of Electronic Arts Basel(バーゼル、スイス)では、2012年3月9日から5月20日まで展覧会「Collect the WWWorld: The Artist as Archivist in the Internet Age」を開催する。

本展覧会は、Link Center for the Arts of the Information Age(ミラノ、イタリア)が2011年にSpazio Contemporanea(ブレシア、イタリア)で開催した展覧会をアップデートしたものだ。

展覧会コンセプトでは、この10年間で廉価なツールの普及によってアマチュア層によるイメージ生成が飛躍的に増大し、インターネットはそのような創作活動における格好の流通プラットフォームになっていることを指摘する。このような背景のなか、1960年代のコンセプチャル・アートやアプロプリエーション・アートなどに見られる広告や大衆文化のビジュアル素材の収集や再利用などによる表現の発展形ともいえる、インターネット上のイメージを取り入れた表現を紹介する。

2011年にイタリアで開催された同展覧会のカタログ(*PDF版は無料でダウンロードできる)に寄せられた論考「Endless Archive」でジョアン・マクニール(Joanne McNeil)氏は、価値を定められないオンライン上のデジタル・イメージについて、「オーファン・イメージの断片が無限にアーカイブされ、アーティストによって意味性が吹き込まれることを待っている」と述べている。また、Google、You Tube、Getty Imagesなどを作品に取り入れたケビン・ベーベルスドルフ(Kevin Bewersdorf)氏やアレクサンドラ・ドマノヴィッチ(Aleksandra Domenović)氏らの作品に対して、「(イメージの)断片を定着させるという意味で目的ある(イメージの)保存の行為であり、キュレーションといえる」と批評する。毎分48時間分の映像がアップロードされるというYou Tubeの動画を用いてUGC(User Generated Content、ユーザー制作コンテンツの意)を生成することができるソフトウェアである、アーティスト集団Jodiが作った《Folksomy》については、「無数のアーカイブを再利用する」機能を指摘し、ユーザーが膨大なアーカイブに踏み込んでいけるインターフェイス的な役割について言及する。さらに、コリー・アーケンジェル(Cory Arcangel)氏の作品《Since U Been Gone》を例に挙げて、「オンライン界では、ハイカルチャー(上位文化)とローカルチャー(大衆文化)が区別されることがない」と述べ、伝統的な所有権の帰属(ownership)はインターネットでは排除され、唯一、共有可能性においてそれが担保されると強調する。

本展覧会で紹介される作品とそれをめぐる議論は、現在のインターネット界で展開されている事象について理解を促すだけではなく、ネット・アーティストにキュレータやアーキビスト的な役割を見いだし、従来の権力的な歴史化やアーカイブのあり方に対するアンチテーゼをも投げかけている。

House of Electronic Arts Basel「Collect the WWWorld: The Artist as Archivist in the Internet Age」展

http://www.haus-ek.org/en/content/collect-wwworld-artist-archivist-internet-age?loc=EX

Collect the WWWorldウェブサイト

http://collectheworld.tumblr.com/

Link Center for the Arts of the Information Ageウェブサイト

http://www.linkartcenter.eu/?lang=en