かつて"貸本マンガ"を生み、そこからさらに"劇画"を生んだ大阪には、それらに象徴されるような"泥臭い生々しさ"を絵の持ち味とするマンガ家たちの系譜がある。彼ら、大阪テイストのマンガ家の中から頭角を現したさいとう・たかをら、昭和30年代の劇画家たちに続いて、1975年にはどおくまんが「嗚呼!!花の応援団」をヒットさせて一世を風靡。泥臭さを笑いへと転化させて、お笑いや食い倒れ、庶民的といった大阪のテンプレートなイメージをさらに印象付けることになった。そしてその系譜をさらに継いで、1990年から「ナニワ金融道」を連載して時代の寵児となったマンガ家が青木雄二である。

 2月9日から21日まで東京・中野の「pixiv Zingaro」(http://pixiv-zingaro.jp/)で開催される「ナニワ金融道 原画展」は、そんな青木雄二の代表作の初の原画展であり、「週刊モーニング」連載当時の原画やカラーイラスト、約100点が、オタクの聖地と言われる中野ブロードウェイに展示される。

 1945年に京都に生まれた青木雄二は高校時代を岡山で過ごし、その後様々な職業を転々とした後、デザイン会社設立を経て45歳でマンガ家デビューを飾ったという異色の経歴の持ち主である。しかしそのキャリアこそがものを言って、体験に裏打ちされたリアルな物語と泥臭い描線によって綿密に書き込まれた人物と背景とが、作品に異様な迫力を与えることになる。「ナニワ金融道」では主人公の消費者金融の新人営業マンが、違法すれすれの過酷な金融業の世界を生き抜く様を描いて話題となったが、それが単なる非情な人間ドラマとならなかったのは、泥臭く無骨な描線が迫力と同時に生み出す"温かさ"ゆえであり、それによって登場人物から発せられるぬくもりゆえであった。そのことを理屈でなく、原画を通して実感できるまたとない機会として、1996年の連載終了から20年を経ての今回の原画展はまさしく待望の企画といえるだろう。青木の描く大阪の街は労働者の悲哀が染み込んだ情景として、表現主義の画家、ゲオルグ・グロッスの作品に通じるものがあり、原画と直接向き合うことによってそのような青木雄二という作家の、未だ知られざる一面を発見できるかもしれない。

 代表作となったこの「ナニワ金融道」に青木は連載中全精力を注ぎこみ、終了後にマンガ家引退を宣言するも、病を得て2003年、58歳で早すぎる死を迎えた。その間に「ナニワ金融道」に影響された金融絡みの職業コミックがいくつも誕生したことは指摘するまでもないが、本家の「ナニワ金融道」も青木雄二プロダクションのスタッフたちによって続編やスピンオフ作品が描き継がれ、2016年末からは最新作「ザ・ナニワ金融道」の連載も隔月刊誌で始まっている。今回の原画展は、それとタイミングを合わせての公開ということでもあるのだろう。

 原画をじっくり眺めながら、今後、"泥臭い生々しさ"を絵の持ち味とする大阪のどんなマンガ家が生まれてくるのか。系譜に連なる大型新人の登場に思いを馳せてみてもいいかもしれない。