アニメーションを専門的に取り上げる査読付の国際学術誌「Animation: An Interdisciplinary Journal」(以下、「Interdisciplinary Journal」)が、最新号となる2012年3月号を発行した。今回の特集は「ロトショップとボブ・サビストンの仕事」(Rotoshop and the Work of Bob Sabiston)。アメリカのアニメーション作家ボブ・サビストン氏と、彼が開発したアニメーション制作ソフトウェアであるロトショップが取り上げられている。

ロトショップは、1917年にマックス・フライシャー(1883-1972)が発明した、実写映像のトレースでアニメーション映像を作ることを可能にする技術ロトスコープのデジタル版ソフトウェアである。ロトショップは、リチャード・リンクレイター監督の2本の長編アニメーション作品『ウェイキング・ライフ』(2001)と『スキャナー・ダークリー』(2006)でその存在を広く知られることとなった。サビストン氏はこれらの作品において、ロトショップを用いてアニメーションを担当している。サビストン氏は自身の作品においても、同ソフトウェアを用いた特異な作品をいくつも残しており、『スナック・アンド・ドリンク』(2000)や『ザ・イーブン・モア・ファン・トリップ』(2007)などが代表的な作品として挙げられる。

両作品は、自閉症児ライアンのビデオインタビューをトレースすることで制作されており、近年話題のアニメーション・ドキュメンタリーの文脈にも位置づけることができる。今回の「Interdisciplinary Journal」の特集は、ハリウッド勢のCGアニメーションとは異なる商業アニメーションの新しい流れの一翼を担うものとしても注目されるロトショップに、学術的な視点から、新たな光を当てるものとなるだろう。

「Animation ; An Interdisciplinary Journal」2012年3月号

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