早稲田大学理工学術院電気・情報生命工学科の岩崎秀雄教授がディレクターを務めるmetaPhorestが、早稲田大学西早稲田キャンパス63号館で「生命美学」展を2012年10月18日から27日まで開催した。metaPhorestは、「生命」をめぐる美学と芸術(バイオ・アート/バイオメディア・アート/バイオロジカルアート/生命美学)の実験/研究/制作を行うためのプラットフォームとして、2007年に早稲田大学先端生命医科学研究施設の基礎生命科学の研究室内に設置された。「生命とは何か?」という問いを追求するアーティストに、生命科学の実験現場で滞在制作の場を提供する「早稲田大学理工学術院アーティスト・イン・レジデンス」を実施してきた。

同展覧会では、5年目を迎えるこのレジデンス・プログラムの研究成果の一部が8組のアーティスト(岩崎秀雄氏井上恵美子氏ホアン・カストロ氏中村恭子氏堀江敏行氏BLC(福原志保氏+ゲオルク・トレメル氏)石橋友也氏石川智章氏)によって発表された。同展パンフレット(*PDFでダウンロード可)で、岩崎教授は「(生命科学に関心を持つアーティストは)いわば現代の生命科学を取り巻く状況のアンテナであるだけでなく、より深い次元で『現代の生命観』の構築と分析に関わりつつある」と述べ、アーティスティック・リサーチャーともいえるアーティストの創造性が生命科学の研究へ寄与しうることを指摘する。

それぞれ異なるバックグラウンドを持つアーティストによる、絵画/インスタレーション/インタラクティブ・アートなど多様な表現と実験装置が同列に展示された同展覧会は、訪れた人々の好奇心を刺激すると同時に困惑も与えたかもしれない。なぜなら、アーティスティック・リサーチのプロセスあるいは成果としての作品を理解するためには、ある程度の専門的な知識が求められるからだ。表現形態にもよるが、会場のあちこちで来場者がアーティストと対話をしながら目の前の作品で何が起きているのか/起きたのか、理解を深めようとする姿が見られた。まるで、実験室をそのまま移設したかのような展示空間は活発なディスカッションの場としても機能していたように思う。私たちに身近なテーマを扱う生命科学が、アートを通してより広く関心が寄せられていくことを期待したい。

 

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