アニメーションを専門的に扱う国際学術誌「Animation: An Interdisciplinary Journal」の最新号(Vol.7, No.3)で、ジェームズ・キャメロン監督による2009年公開の映画『アバター』が特集されている。

『アバター』は実写とCGアニメーションのハイブリッド表現を用いた映像表現で世界的な話題となった。この作品の3D映像は、従来の「飛び出す」方向性ではなく奥行きの表現の重視による「体験」に比重を置くことで、これまでとは一線を画すものとして考えられ、この作品への注目をきっかけに3D上映のブームが起こるなど、社会現象化した映画でもある。

近年のアニメーション研究が重視するトピックのひとつとして、デジタル技術の導入によって、アニメーションと非アニメーション表現の境界線が曖昧になりつつある事態が頻繁に取り上げられる。実写映画における特殊効果などのCG映像の使用が、実写とアニメーションの両方の境界を押し広げ、両者を重なりあうものとすることにより、アニメーションに対して、これまで以上に広範囲にわたる研究者の注目を集める結果がもたらされているのである。

今回の「Animation: An Interdisciplinary Journal」での特集は、1990年代以降のアニメーション研究におけるこのような流れの一環にある。『アバター』騒動が一段落したなかで発行されるこの号は、『アバター』におけるユートピア表象、立体視映像の歴史における同作品の位置づけ、同作品が用いるモーションキャプチャーがもたらす映画の知覚体験の変容など、幅広い視点から同作品を考察した論文を揃えることによって、『アバター』のもたらしたインパクトについて改めて再考するものとなっている。

「Animation Interdisciplinary Journal」『アバター』特集号
http://anm.sagepub.com/content/7/3.toc