2013年10月5日、東京・自由が丘に短編アニメーションを中心として取り扱うギャラリーとショップ、Au Praxinoscope(オー・プラクシノスコープ)がオープンした。

Au Praxinoscopeは大手の流通経路には乗りにくい短編アニメーションに関する各種のグッズを取り扱うと同時に、世界のアニメーション作家にフォーカスをあてた展示を行う。

販売に関しては、DVD、ブルーレイ、各種書籍、視覚玩具といったアニメーションに関連する様々な商品が扱われることとなるが、日本国内で流通しているものはもちろん、海外で出版・販売されたものの輸入商品の販売も行う。

映画館やテレビなどではなかなか中心的なコンテンツとして扱われにくい短編アニメーションは、現在は動画サイトなどでのプレゼンスが増しているものの、歴史的に見れば、映画祭などに露出の機会が限られてきたといえる。

2000年代に入り、DVDの制作・販売を比較的安価で行うことが可能になったことを背景に、DVDは、そのような短編アニメーションの世界での代表的な作品を、編者の批評的観点のもとにパッケージングさせ流通させる貴重な場として機能してきた。Au Praxinoscopeは、日本でこれまで発売されてきた短編アニメーション関連のDVD、ブルーレイに加え、イギリスのアニメーション研究家ジェイン・ピリング氏が主宰するBritish Animation Awardsや、プロデューサーのロン・ダイアモンド氏が経営するAcme Filmworks、もしくはカナダ国立映画制作庁など、短編アニメーションのDVDシーンのなかで中心的な役割を果たしてきた各種組織からのリリースを集めるという点で、そのような成果を一望することを可能にする場となるといえよう。

Au Praxinoscopeを主宰するのはアニメーション作家の山村浩二氏である。山村氏は、アニメーション作家としての制作活動と並行して、ブログ「知られざるアニメーション」や若手作家・評論家とともに立ち上げたグループ「Animations Creators & Critics」などをはじめとして、世界の短編アニメーションの重要な達成を紹介する活動に積極的に関わってきた。2008年の東京藝術大学大学院映像研究科のアニメーション専攻の教授への就任以降も、2009年度から公開講座「コンテンポラリーアニメーション入門」を立ち上げ、海外の重要な作家の招聘を行うなどしている。

Au Praxinoscopeで扱われるものの多くは、山村氏が長年の活動のなかで紹介してきたものの集積であるともいえる。2013年10月5日から2014年1月25日まで同店舗で行われる展示「プリート・パルン展」でフィーチャーされるエストニアのアニメーション作家プリート・パルン氏についても、現在の日本での人気の大きな要因となっているのは、山村氏の紹介活動であることは間違いない。

また、店舗の名前に採用されている「プラクシノスコープ」とは、アニメーションの前身ともいえる視覚玩具のことだが、同店舗が短編アニメーションのグッズと同時にフリップブック(パラパラ漫画)や驚き盤などを取り扱っているのも、山村氏のアニメーション観を強く感じさせるものとなっている。

Au Praxinoscopeは通販を行っておらず、実店舗で実物を手に取って見る機会を重要視している。現在のところ営業は毎週土曜日に限られているが、短編アニメーションの世界の歴史的な成果を一望できる貴重な場として訪れる価値のある場所である。

Au Praxinoscope(オー・プラクシノスコープ)公式ホームページ

http://www.praxinoscope.jp/