優れた作品を顕彰し、鑑賞機会を提供するメディア芸術の総合フェスティバル「文化庁メディア芸術祭」の平成25年(2013年)度受賞作品が発表された。アニメーション部門では、国内製作のTVアニメ・映画から『有頂天家族』など3作品が優秀賞に選ばれた。また審査委員会推薦となった32作品のうち、12作品がTVアニメ・映画・OVAから選ばれている。

優秀賞に選ばれた3作品は『有頂天家族』(吉原正行監督)、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』(庵野秀明総監督)、『サカサマのパテマ』(吉浦康裕監督)。

『有頂天家族』は原作の同名小説を、丁寧な演出・作画・美術で映像化した。文芸作品という、アニメの表現からは比較的遠い世界にある原作を、アニメならではの魅力も兼ね備えた映像へと昇華し、原作ファンだけでなくアニメファンにもうれしい作品に仕上げた点に注目したい。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』は、今最も注目を集めている劇場4部作の第3部。起承転結の「転」に相当すると思われる大胆なストーリー展開と、見たこともないような圧倒的なビジュアルが渾然となったスペクタクルをスクリーンいっぱいに展開した。興行収入50億円を超える大ヒットを記録したことも特筆すべきポイントだ。

『サカサマのパテマ』は、『イヴの時間』でブレイクした吉浦監督が挑んだ初長編。別の世界で生きてきた少年と少女の出会いが、世界に価値観の転換をもたらすというシンプルなストーリーを正面から描いている。そのまっすぐな姿勢は、東映動画(現・東映アニメーション)の過去の長編から『天空の城ラピュタ』(宮崎駿監督)などのジブリ作品に至る系譜に位置づけられる作品と言える。

審査委員会推薦作品には、劇場版らしい華麗で密度のある映像が強い印象を残した『「青の祓魔師」劇場版』(高橋敦史監督) 、複雑な現代社会と斬り結ぶ内容を取り扱った『エウレカセブンAO』(京田知己監督)、同時上映されたベテランと若手の中編2作『寫眞館』(なかむらたかし監督)、『陽なたのアオシグレ』(石田祐康監督)など、こちらも注目作が並んでいる。

第17回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門

http://j-mediaarts.jp/awards/gland_prize?locale=ja&section_id=3