2014年6月3日から8日まで、クロアチア・ザグレブで第24回ザグレブ国際アニメーション映画祭(通称アニマフェスト)が開催された。1972年設立のアニマフェストは現存のものではアヌシーに次いで二番目に古い歴史を持つアニメーション専門映画祭で、2005年以降毎年の開催になってから(2004年以前は2年に一度の開催)、短編部門と長編部門を交互に行っており、今年は短編部門だった。
アーティスティック・ディレクターのダニエル・スルジック氏が映画祭公式ホームページのステートメントに記している通り、アニマフェストは「作家による作家のためのフェスティバル」であり、芸術的表現としてのアニメーションの側面にフォーカスを当て、ここ2年間で映画祭シーンを賑わせた作品が一堂に会する、集大成的なフェスティバルとして評価が高い。
今年のアニマフェストで注目すべきは、アニマフェスト・スキャナー(Animafest Scanner)というカンファレンスを新設したことである。これまで、アニメーション映画祭におけるカンファレンスは、ビジネス的な側面に特化したものがほとんどだったが、アニマフェスト・スキャナーは、アニメーションについての歴史的・理論的な研究発表に焦点を当てるものとなっている。発表者は事前の応募制で、審査を経て決定されるものだったが、ジャンアルベルト・ベンダッツィ氏、ポール・ウェルズ氏といったアニメーション研究の分野で著名な研究者が名を連ねた。
映画祭の花形となるコンペティション部門のグランプリは韓国のヂョン・ユミ監督による『LOVE GAMES』(2013年)。白黒の簡素かつデリケートなドローイングを用いたこの作品は、大人の男女間の関係を、かくれんぼをはじめとした子供の遊びの設定で描くもので、ヴァルナ、オランダといった主要なアニメーション映画祭でもグランプリを受賞している。
第二位にあたるゴールデン・ザグレブ賞はドイツのヨッヘン・クーン監督の『Sunday 3』が受賞。クーン監督の「Sunday」シリーズは、油絵を用いたファイン・アート寄りの画風で男の夢想的な日常を描くもので、シリーズ3作目となる本作は、インターネットの出会い系サイトを通じて知り合った女性がメルケル首相だったというコミカルなシチュエーションを語るものだった。
なお、5人の審査員がそれぞれ授与することのできる特別賞のうちのひとつには、水尻自子監督の『布団』(2012年)が選ばれた。この作品も昨今の映画祭シーンを賑わせたものである。
学生部門のグランプリにあたるデュシャン・ヴコチッチ賞には冠木佐和子監督の『肛門的重苦 Ketsujiru Juke』(2013年)が輝いた。彼氏との別れを奇妙なサウンドトラックにのせてリズミカルかつ生々しく語るこの作品は多摩美術大学の卒業制作で、アヌシー、オタワ、ファントーシュをはじめとする数多くの映画祭でノミネートを果たしていたが、今回、大きな栄誉に輝くこととなった。また、スペシャル・メンションのひとつとして、韓国出身のキム・ハケン監督による東京藝術大学大学院の修了制作『MAZE KING』(2013)が選ばれた。
委託作品の最優秀作品に選ばれた『Katachi』(カタジナ・キイェク、プルズミロー・アダムスキー監督、2013年)は、日本のミュージシャンであるトクマルシューゴ氏のミュージックビデオである。
アニマフェストの短編部門では2010年以来日本作品の受賞が続いていたが、今回もまた、日本作品が確かな存在感を示すこととなった。
受賞作品のリストは以下の通り。

【短編部門】
グランプリ 『Love Games』(ヂョン・ユミ監督、韓国、2013年)
ゴールデン・ザグレブ賞 『Sunday 3』(ヨッヘン・クーン監督、ドイツ、2013年)
特別賞(ジョアン・アッシュワース氏による) 『Baths』(トメック・デュキー監督、ポーランド、2013年)
特別賞(マリー=エレーヌ・ジロー氏による) 『Hipopotamy』(ピョートル・ドゥマウア監督、ポーランド、2014年)
特別賞(レイ・レイ氏による) 『Astigmatismo』(ニコライ・トロシンスキー監督、スペイン、2013年)
特別賞(エド・ルクマン氏による) 『Choir Tour』(エドモンス・ヤンソンス監督、ラトビア、2012年)
特別賞(エマ・ドゥ・スワーフ氏による) 『布団』(水尻自子監督、日本、2012年)

【学生部門】
デュシャン・ヴコチッチ賞(最優秀作品) 『肛門的重苦 Ketsujiru Juke』(冠木佐和子監督、日本、2013年)
スペシャル・メンション 『Plug & Play』(ミヒャエル・フライ監督、スイス、2013年)
スペシャル・メンション 『MAZE KING』(キム・ハケン監督、日本、2013年)
スペシャル・メンション 『The Sharley Temple』(ダニエラ・シャーラー監督、イギリス、2013年)

最優秀委託作品 『Katachi』(カタジナ・キイェク、プルズミロー・アダムスキー監督、日本/ポーランド、2013年)

最優秀子供向け作品(子供審査員による) 『The Centpede and the Toad』(アンナ・ヘレメフスカヤ監督、フランス、2013年)
スペシャル・メンション 『My Strange Grandfather』(ディーナ・ヴェリコフスカヤ監督、ロシア、2012年)
スペシャル・メンション 『Rabbit and Deer』(ペーテル・ヴァーチ監督、ハンガリー、2013年)
スペシャル・メンション 『Virtuoso Virtual』(マヤ・オシュマン、トマス・シュテルマッハ監督、ドイツ、2013年)

観客賞 『Boles』(シュペラ・カデツ監督、スロベニア、2013年)

ザグレブ国際アニメーション映画祭公式ホームページ
http://animafest.hr/