ブリティッシュコロンビア大学(カナダ・バンクーバー市)の日本研究センターが主催する学術会議「プレス・スタート:日本ゲームの文化・産業・イノベーション」が2015年2月27日・28日に開催され、約100名の研究者・学生・ゲーム開発者・政府関係者らが参加した。基調講演では早稲田大学IT戦略研究所所長でビジネススクールのディレクターもつとめる根来龍之氏が「ゲームの業態変化と未来の選択:レイヤー戦略の未来像」と題して講演し、日本のゲーム産業における専用機(家庭用ゲーム機)から汎用機(スマートフォン)への変化と展望について語った。

ブリティッシュコロンビア州は世界に先駆けてデジタルメディア産業に対して税制控除を適用するなど、積極的な企業誘致と産業育成で知られている。地理的にハリウッドにも近く、映画産業との結び付きも強い。そのためCGの国際学会であるシーグラフをバンクーバーで開催した実績もある。その一方でゲームに関する学術会議が開催されたことはなく、ゲーム研究においてもアルバータ大学(アルバータ州)などに後れを取っているのが現状だ。こうした中、文学や映画からマンガ・アニメなどのポップカルチャーまで幅広い分野で日本文化の研究を進める同センターで、はじめてゲームの学術会議が開催されることになった。

ディレクターをつとめたクリスティーナ・ラフィン教授は開催の動機について「自分自身は日本の古典文学が専門でテレビゲームは専門外だが、ゲームは日本文化を研究する上で格好のサンプル。自分自身もゲームが持つ学生を虜にする力について強い関心があった」と語った。もっとも同大学ではゲーム研究に関する学科や学部が存在せず、研究者であるラフィン氏自身も産業界との接点がほとんどなかった。そのため知人でもある総領事の岡田誠司氏に支援を頼み、そこからブリティッシュコロンビア州政府事務所や、業界団体のDigiBCなどにコネクションを広げていったという。

会議は1日目が学術分野からの口頭発表、2日目が産業界によるパネルディスカッションで構成された。口頭発表では同大学の研究者に加えてアルバータ大学や、『なぜ人はゲームにハマるのか――開発現場から得た「ゲーム性」の本質』の著者である立命館大学の渡辺修司准教授も参加し、法律・ビジネス・ジェンダー論・ポップカルチャー・教育への応用など、様々な分野で議論が行われた。パネルディスカッションではバンクーバーに開発拠点を持つ日系企業4社(セガネットワークス、バンダイナムコスタジオ、ディー・エヌ・エー、カプコン)が登壇し、進出の動機や日系企業との協業の秘訣などが話し合われた。

もっとも初回開催ということもあり、様々な議論が総花的に行われた一方で、テーマが絞りきれていない点も感じられた。また予稿集などが存在しない点も残念だった。その一方で口頭発表のクオリティは総じて高く、ゲームと遊技機(パチンコ)の関係性など、日本ではなかなか見られないラジカルな議論が見られたのも新鮮だった。また、こうした学術会議をベースに産官学のコミュニティが充実することで、企業進出の間接的な受け皿が進む効果も期待できる。ラフィン氏も「本年度の反省を元に、できれば来年度も開催したい」と語っていた。そのためには大学全体としての支援も求められるだろう。今後の取り組みを期待したい。

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プレス・スタート:日本ゲームの文化・産業・イノベーション
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