一般社団法人画像電子学会が主催する第4回画像エンタテインメントセミナー「非ゲーム分野でのゲームエンジンの活用」が、2015年10月10日にディー・エヌ・エー(東京都渋谷区)で開催された。

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学会員を中心に30人程度が参加

セミナーは同学会の深見拓史氏による開会挨拶を経て、ゲームエンジンの「Unity」を中心に産学の様々な講演発表が行われた。発表を通して、Unityのコンテンツ制作プラットフォームとしての広がりが浮き彫りになった。

【産学さまざまな立ち場で発表】

発表はユニティ・テクノロジーズ・ジャパンの伊藤周氏によるユニティの概要と紹介から始まった。その後、カヤック天野清之氏が広告・マルチメディア分野への展開。ゼンリン永江裕之氏が地図・位置情報分野への展開。NPO法人オキュフェスの高橋建滋氏からVRの未来予測。最後に神奈川工科大学の白井暁彦氏から学術界への展開事例が、それぞれ語られた。

伊藤氏はUnityがゲームだけでなく、医療・教育・広告などさまざまな広がりを見せている点を多彩な事例で紹介。同社としても毎年「ユニティソリューションカンファレンス」として、非ゲーム分野での開発者会議を主催していると紹介した。また近い将来、ゲームと非ゲームの開発者や業務ニーズをつなぐウェブサービスの構築を検討していると語った。

天野氏はVRデバイスのOculus Riftで高校時代の一コマを仮想体験できる「明治エッセルスーパーカップ20周年プロモーション」や、アニメ「バケモノの子」公開にあわせて実施された「バケモノの子」展向けに、Unity上で制作されたメディアアートやインスタレーションの実例を紹介。ユニティを使用することで、プリプロダクションの期間が短縮できる点を評価した。

【プロトタイプ開発などに高い効果】

永江氏は2014年9月からユニティアセットストア上で無償公開中の3D都市データについて紹介が行われた。本データはカーナビ向け地図データとして作成されたものをベースに、Unity上で活用しやすいように加工したもので、秋葉原・なんば・福岡・札幌をモデルとしたデータを無償公開。現在までに7万ダウンロードの実績があり、約75%が海外からのアクセスだという。

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高橋氏によるVRのデモも行われた

高橋氏は映画の歴史を紐解きつつ、VRコンテンツの未来について予測。「見世物小屋の演目」としてスタートした映画が、物語性を取り込むことで産業化したように、VRも家庭に普及する上で物語性の付与が不可欠だとした。またゲームエンジンを使用することで、VRコンテンツが比較的低コストで作成できる点を評価し、産業化に向けて研究開発やビジネスの機会を探していきたいとした。

白井氏は世界初の商業ゲームエンジンとされるクライテリオンの営業・サポートを皮切りに、15年以上にわたって続いてきたゲームエンジンによる非ゲーム分野への活用事例を紹介。同学会で論文採択された「テレビのチャンネル争いを解消する ExPixel と Unity プラグイン」 についても取り上げた。白井氏はプロトタイプ開発が手軽にできるとして、Unityはバーチャルリアリティ研究においても重要なツールだと評価した。