東京都の府中市美術館では、2011年12月10日から2012年2月26日まで、「石子順造的世界 美術発・マンガ経由・キッチュ行」展が開かれている。

石子順造は美術とマンガの両方の分野で活躍した批評家。しばしば引用されつつも、その分野横断的な活動のためか全体像をとらえるのが難しく、何度も「再発見」されてきた批評家でもあった。

この展覧会と期を同じくして『マンガ/キッチュ−石子順造サブカルチャー論集成』(小学館クリエイティブ、2011年)も出版され、ふたたび注目をあつめそうだ。

展示は、設定された3つのテーマ「美術・マンガ・キッチュ」を軸として、部屋ごとにそれぞれのテーマに関連した作品や資料があつめられ、石子の活動が概観できるようになっている。

「美術」の部屋では、石子が企画に関わった「トリックス・アンド・ヴィジョン展」(1968年)が一部再現されたり、「マンガ」の部屋では、つげ義春の名作「ねじ式」の原画が展示されたりと見所も多いが、なによりもカタログの充実は注目にあたいするだろう。

この本も「美術・マンガ・キッチュ」というテーマごとに章が立てられており、「美術」の章には松井茂氏、「マンガ」の章には瓜生吉則氏、「キッチュ」の章には井上章一氏がそれぞれ文章を寄せている。また、石子と一緒に1960年代後半からマンガ批評同人誌「漫画主義」を発行していた3人の同人、山根貞男氏、高野慎三氏、長津忠氏の座談会も収録されている。巻末には、石子順造入門として、単行本として出版された著作を年代順に並べて解説した「著作案内」や、石子に頻出の用語をあつめて解説した「石子順造小辞典」などが収められており、展示の記録であると同時に、研究書としても充実した内容となっている。美術館用に刷った部数が完売すれば一般にも販売する予定とのことだが、展示を訪れたさいに入手しておきたい。

関連トークイベントも4回予定されており(リンク先参照)、豪華なゲストとキュレーターの成相肇氏の話を聞くまたとない機会となるだろう。