概要

本事業は、マンガ原画の〈収集〉〈保存・整理〉〈活用〉を実践し、施設や個人等の属性や目的に応じたアーカイブモデルの開発、提案が主な目的である。過去3年間の事業で積み上げてきた、原画アーカイブの手法、人材育成プログラム、受入モデル等をふまえ、連携機関のネットワーク構築とそのためのハブとなる拠点形成を目指す。さらに、ますますマンガ原画の収蔵や活用の必要性が高まるなか、マンガ家自身から公共施設まで、さまざまな条件におけるアーカイブに関する相談などに対応するインターフェースとして、「マンガ原画アーカイブセンター(仮称)」を、平成31年度にリニューアルオープンする横手市増田まんが美術館内に設置することを目指している。
機関連携先は以下の通りである。
1)京都国際マンガミュージアム
2)明治大学 米沢嘉博記念図書館
3)北九州市漫画ミュージアム
4)一般財団法人パピエ(谷口ジロー版権管理団体)
5)横手市増田まんが美術館
6)東洋美術学校

中間報告会レポート

報告者:京都精華大学 国際マンガ研究センター 研究員 伊藤遊

原画の〈収集〉〈整理・保存〉作業を、各連携先にて進めている。一般財団法人パピエは今年度から加わった連携先となる。今後の展開として原画展の海外開催を企画しており、海外でも人気の高い谷口ジローの原画展開催を想定しつつ議論している。また前年度から引き続き、東洋美術学校にてマンガ原画の支持体・画材研究を化学的な観点から取り組んでいる。2月には、横手市増田まんが美術館にてシンポジウムを開催し、そこで「マンガ原画アーカイブセンター(仮称)」開設に向けての協議を行う予定だ。

伊藤遊

最終報告会レポート

報告者:京都精華大学 国際マンガ研究センター 研究員 伊藤遊

各連携施設における実証実験では、それぞれの施設が所蔵しているマンガ原画に対し、整理および保存に関する実証実験を実施した。京都国際マンガミュージアムでは、杉浦幸雄、六浦光雄、ささやななえ、谷ゆき子の原画について、保管状況の改善や撮影、初出調査、書誌リスト作成を行った。明治大学 米沢嘉博記念図書館では、鈴木光明の原画の保管状況改善と整理を進めた。また、同館が管理している分以外の三原順作品原画が発見されたため、それらの調査を実施した。北九州市漫画ミュージアムでは、関谷ひさし原画約513点のリスト作成、再整頓、デジタルスキャンについてマニュアルを作成した。さらに、切り貼りされた原画やカットイラスト、刷り出しなどの特殊な資料については、その来歴を推定し、歴史的に位置づける上で必要な知見を得た。
一方、京都国際マンガミュージアムにて精巧な複製原画を作成する「原画ダッシュ部会」、東洋美術学校の協力によりマンガ原稿の物性値を非破壊で予測して最適な保存方法や環境についての研究を行う「支持体・画材研究部会」、マンガ原画アーカイブモデルの精緻化を試みる「モデルチャート研究部会」を組織し、研究と実践を進めた。「支持体・画材研究部会」においては原稿用紙の劣化について調査研究を行ったが、今後は画材にスポットを当てる予定だ。
今後の大きな活動予定として、平成31年度にリニューアルオープンする横手市増田まんが美術館内に「マンガ原画アーカイブセンター(仮称)」を設置し、アーカイブに関する相談などに対応するインターフェースとして機能させる計画を進行中だ。2019年2月3日には横手市ふれあいセンターにて、「マンガ原画アーカイブセンター(仮)の創設に向けて」と題した事業報告会を兼ねたシンポジウムを開催。原画アーカイブセンターの機能として、以下の事項を設定した。
1)受信する 原画所有者からの相談を受け付ける
2)処方する 希望に合う解決策を選択する
3)育成する 原画アーカイブ作業ができる人材・施設
4)連携する 原画アーカイブに協力してもらえる施設の調査とネットワークづくり
5)発信する アーカイブ作業に関する知識・経験・人脈のモデル化
課題としては、「アーカイブセンター」を現実化するにあたって、組織・人員体制の構築や予算の確保、マンガ原画のアーカイブを実施可能な施設(美術館や図書館など)とのさらなるネットワークの構築が挙げられた。

実施報告書(PDF 約20MB)

※敬称略