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第1回:マンガ雑誌巻号の登録データ件数比較

レポート:三原鉄也(ITコンサルタント)

※このコラムの概要や背景についてはこちらをご一読ください。

[MADBマンガ雑誌単号について]

MADBでは、マンガ雑誌について、雑誌タイトルのデータである「マンガ雑誌」とそれらの個別の巻号である「マンガ雑誌単号」の2種類のデータを登録しています。図書館では、雑誌タイトルが一般的な書誌データの作成単位ですが、MADBではより粒度が細かい個別の巻号単位のデータであるマンガ雑誌巻号のデータにも識別子を与え、登録しています。マンガ雑誌については、マンガを中心に扱う図書館・博物館・美術館等からなるMADBの連携機関に所蔵されているものを登録の対象としています。マンガ雑誌巻号のデータは連携機関から提供された巻号単位のデータのほか、国立国会図書館(NDL)での実地調査の結果を踏まえて登録されたものです。

[マンガ雑誌の比較対象データと比較方法]

マンガ雑誌については①MADBに登録されているマンガ雑誌巻号と、②NDLの所蔵件数、そして③出版科学研究所が発行する「出版月報」「出版指標年報」に掲載されたマンガ雑誌(同資料では「コミック誌」と記載)の雑誌発行件数の3つと比較しました。
NDLは納本制度に基づきマンガ雑誌を含む日本の雑誌を収集しており、MADBにもそのデータが登録されています(〜2017年まで)。「出版月報」「出版指標年報」は書籍出版業界の流通統計として一般的に広く利用されているもので、「出版月報」は月次での統計を「出版指標年報」は年次での統計をそれぞれまとめたものです。
「出版月報」「出版指標年報」を含め巻号単位での発行件数のデータはありません。そこでこのコラムでは「出版月報」「出版指標年報」に掲載されたコミック誌の銘柄数(タイトル数)のデータを用いて巻号単位の出版点数を推計し、比較しました。
「出版月報」「出版指標年報」での週刊誌・月刊誌の銘柄数の算出方法が1991年までは年間の平均発行件数、1992年以降は当該年中に1号でも刊行があった銘柄を発行回数に関係なく1件と計上しています。そこで1991年までについては、週刊誌は銘柄数に週数52、月刊誌は月数12を乗じた数を1年間での発行件数とし、1992年以降についてはMADBに登録されている週刊誌、月刊誌の平均年間発行件数を年ごとに算出(※)し、その数を銘柄数に乗じて発行件数とした上で、週刊誌と月刊誌の推定発行件数の和を当該年の推定発行件数としました。

※ MADBのマンガ雑誌全号の中で、週刊誌については発行頻度が「週刊」となっているものに所属するマンガ雑誌単号の件数の平均、月刊誌については「週刊」及び「不定期」等の定期刊行物とはみなされないものを除いたものに所属する「マンガ雑誌単号」の件数の平均を算出しました。

[比較結果と考察]

図1〜3は1946〜1964年・1965〜1991年・1992〜2017年の3つの時期に分けた雑誌単号の書誌データ・目録掲載件数を比較したものです。

全体を通じた傾向としては、NDLに対してMADBの方が2割程度多くなっています。ここで計上したNDLの件数はMADBに登録されている雑誌巻号の中からNDLに所蔵があるものであり、NDLの件数に計上されているデータはMADBにも登録されているものです。したがって、件数の差はNDL以外の連携機関に由来するデータによるものです。MADBの登録対象となっているマンガ雑誌の個別の巻号については、NDLの所蔵では網羅されていない一方でNDL以外の連携機関によって補完されていることが分かります。

さらに年代を追って考察してみましょう。1945年以前については、MADBに相当数のデータ件数がありますが、これはストーリーマンガが中心である現代の一般的なマンガではなく、風刺画・戯画としてのマンガ(漫画)がほとんどだと考えられます。(図1)
1965年以降の出版指標年報の推定件数はMADB・NDLと共通の傾向を見せ、件数でも1990年代初頭まではMADBとほぼ同じです。これは推定の妥当性とMADBの網羅性の高さを共に示していると言えそうです。(図2)
1980年代末期から2000年代末期は、それまで拮抗していたMADBとの件数が大きく開いています。この時期はマンガ専門誌以外の特定の題材を扱う雑誌(麻雀雑誌やゴルフ雑誌など)においてもマンガが掲載されたり、マンガに特化した別冊が数多く発行されたりした時期と一致します。出版指標年報はマンガを専門に扱う雑誌をコミック誌として計上していると見られる一方で、MADBはこうした非マンガ専門誌も登録されていて、登録基準の違いがこの差に影響していると推察されます。(図3)

今回紹介したマンガ雑誌単号のデータからは、連携機関からのデータによって構築されているというMADBの特徴やその網羅性に加えて、時代によるマンガ雑誌の出版規模や出版傾向の移り変わりを窺い知ることができたのではないでしょうか。

第2回は、「マンガ単行本」データの網羅性について取り上げます。単行本についても雑誌と同じような時代による違いは浮かび上がるのでしょうか。どうぞお楽しみに。

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