第3回:ゲームパッケージの登録データ件数比較
レポート:三原鉄也(ITコンサルタント)
※このコラムの概要や背景についてはこちらをご一読ください。
[MADBゲームパッケージについて]
MADBでは、日本国内で制作されたコンピュータゲームのうち、家庭用ゲーム機でプレイする家庭用ゲーム、パソコンとその周辺機器を使用してプレイするPCゲーム、主にゲームセンターに設置されている業務用ゲーム専用筐体でプレイするアーケードゲームの3種のゲームソフト・ゲームタイトルに関するデータを登録しています。このうち家庭用ゲームのゲームソフトについては、ロムカセットや光ディスクなどの記録媒体をパッケージングした物理パッケージとダウンロード販売等の物理メディアを伴わないオンラインパッケージの両方が登録されています。
MADBにはゲームソフトを示すデータとして、ゲームの発売や公開を表す「ゲームパッケージ」と、タイトルの同一性・創作活動としての作品とゲーム内容に基づいてゲームパッケージを集約・列挙する「ゲーム作品」「ゲームバリエーション」があります。これらは、連携機関から提供される目録データとゲーム雑誌やゲームカタログなどの二次情報に基づき生成されたデータが登録されています。
[ゲームパッケージの比較対象データと比較方法]
今回の調査では、ゲーム分野の登録データの中で件数が比較的充実していて、また比較対象となるデータが存在する家庭用ゲームを対象に比較を行いました。ゲームソフトの販売・頒布の形態のひとつごとにデータが作成される「ゲームパッケージ」の中で家庭用ゲームのゲームソフトに関するデータについて比較を行いました。比較の対象とする具体的なデータの条件は、ゲームソフトを動作させるハードウェアや環境を示す記述項目「ゲームプラットフォーム」が、下記の36種のうちいずれかになるものとしました。
ファミリーコンピュータ | TVボーイ | プレイステーション |
---|---|---|
スーパーファミコン | SG-1000 | プレイステーション2 |
バーチャルボーイ | SEGAマーク3 | プレイステーション3 |
NINTENDO 64 | メガドライブ | プレイステーション4 |
64DD | セガサターン | プレイステーション・ポータブル |
ニンテンドーゲームキューブ | ドリームキャスト | プレイステーション Vita |
Wii | ゲームギア | 3DO |
Wii U | PCエンジン | Xbox |
Nintendo Switch | PC-FX | Xbox 360 |
ゲームボーイ | ネオジオ | Xbox One |
ゲームボーイアドバンス | ネオジオCD | |
ニンテンドーDS | ネオジオポケット | |
ニンテンドー3DS | ワンダースワン |
比較対象にはメディアクリエイトが発行する「ゲーム産業白書」(※)を利用しました。ゲーム産業白書は1998年より年1回発行されている全国の協力小売店の取扱商品データを集計した統計資料で、MADBのゲームパッケージの物理パッケージのデータに相当する、ひとつの商品パッケージを単位として件数が計上されています。ただし「初回限定版」等の同時に発売される同一のゲームの複数のパッケージバージョンについて、MADBでは別個のデータとして登録されていますが、ゲーム産業白書では共通のデータとして登録されている、という違いがあり注意が必要です。
ゲーム産業白書には各年の全タイトル数が明確に掲載されていない年も多いですが、機種別・ジャンル別・月別といったテーマ別に全タイトル数が掲載されており、それらの総数を算出することで各年の全タイトル数を割り出すことができます。この状況を踏まえて、今回は1998年〜2001年は「機種別全タイトル数」、2002年〜2008年は「ジャンル別全タイトル数」、2009年以降は「月別発売タイトル数」の総和を各年のタイトル件数として用い、ゲームパッケージの物理パッケージの年別の件数と比較しました。
※正確な書名は時期により「テレビゲーム流通白書」(1998年〜2000年)、「テレビゲーム産業白書」(2001年〜2011年)、「ゲーム産業白書」(2012年〜)と変遷しています。
[比較結果と考察]
図1はMADB物理パッケージとゲーム産業白書の家庭用ゲーム機用ゲームソフトのデータ件数の年ごとの比較です。いずれの年でもMADBの物理パッケージの登録件数がゲーム産業白書の件数を上回っています。これはゲーム産業白書では同一のタイトルとして扱っているパッケージのバージョンを、MADBでは別個に扱っている影響だと考えられます。パッケージバージョンを考慮すれば、MADBの方がゲーム産業白書に比べてより網羅性が高いと言えます。全体的なデータ増減の傾向は、MADBとゲーム産業白書で共通しており、共にゲームの発売状況を捕捉できているデータだと推察できます。
[MADBゲームパッケージに含まれる物理パッケージとオンラインパッケージの件数]
さて、今回はオンラインパッケージの件数についての比較対象を設定することができませんでした。そこで参考として、MADBに登録されたデータ同士の比較にはなりますが、MADBゲームパッケージに含まれる物理パッケージとオンラインパッケージの年別件数を集計し、比較しました。
図2はMADBにおける家庭用ゲーム機用ゲームソフトの物理パッケージ・オンラインパッケージについてデータ件数の年ごとの推移を示したものです。2005年以降はオンラインパッケージの件数が増加し、2010年台前半からはオンラインパッケージが物理パッケージの件数を上回っています。近年は全体の半数をオンラインパッケージが占めていることから、ほとんどのゲームで物理パッケージとオンラインパッケージは共に提供される現状が読み取れます。
新しいゲーム機・プラットフォームが登場すると、その環境で動作する過去のゲームが販売されることが多いため、オンラインパッケージについては必ずしもその時期に制作されたゲームではない可能性があることに注意が必要です。いずれにせよ、このような状況に対応する網羅性の高いデータを整備するためには、物理パッケージだけでなくオンラインパッケージの登録も積極的に進めていく必要があることが分かります。
今回の比較では家庭用ゲーム機用ゲームソフトについて、MADBが比較的優れた網羅性を持っていることを示しました。一方で1997年からの比較に留まったことは、家庭用ゲーム機を代表するファミリーコンピュータ(ファミコン)の発売が1983年であることを考えると、少し物足りなかったかもしれません。それだけ過去のメディア芸術の把握が難しいということでもあります。
次回から数回に渡ってアニメ作品に関するデータの網羅性について比較していきます。第4回は「アニメテレビ番組」です。どうぞお楽しみに。