データ構成・メタデータスキーマ解説
はじめに
この文章について
この文章はメディア芸術データベース(MADB)の提供するデータの形式や構造について、その概要を説明するものです。
MADBの提供するデータについての詳細は「MADBメタデータスキーマ仕様書」に記載されています。この文章では、その基本的な内容や理解の前提となるMADBのサービスについて解説しています。
MADBのデータ提供サービスについて
MADBが提供しているデータは、データ閲覧サービスとデータセットの2つの方法で利用することができます。データ閲覧サービスはウェブで公開されているMADBのデータの検索・閲覧サービスで、データの各項目の閲覧や一般的な検索が可能です。データセットはMADBが公開する全データをファイルとしてまとめたものです。
データ閲覧サービス・データセットで提供されるデータは同一の内容、仕様のもので、ウェブ上でデータを共有するための技術標準であるLinked Open Dataに対応した形式で記述され、誰でも自由に利用できます。
またMADBでは、利用者が自身で問い合わせを作成することでデータ閲覧サービスでは提供していないより複雑な検索を行うことができるSPARQLエンドポイントを提供しています。
MADBのデータ構成
1. データの基本分類
MADBのデータは、Linked Open Dataに対応した形式であるResource Description Framework (RDF)形式で記述されています。MADBでは、RDFの規則に従い提供する情報の記述対象をリソースと呼び、それらリソースひとつずつに識別子(URI)を付与しています。
MADBのデータモデルでは、作品を体現する資料を表す「アイテム」、アイテムの集合を表す「コレクション」、という分類でリソースを整理しています。RDFでは同種のリソースが共通して備える特徴に基づき抽象化した概念をクラスと呼びます。MADBでは、アイテムをItemクラス、同一分野のアイテムのみで構成されるコレクションをCollectionクラス、複数の分野のアイテムで構成されるコレクションをCurationクラスとして定義しています。
さらに、各分野の具体的なリソースの種類・分類がこれらのクラスの子分類に当たるクラス(サブクラス)として定義しています。
その他、MADBが連携するアーカイブ機関の所蔵を表すリソースのクラスやアイテムの内容を表すリソースが定義されています。
2.リソースのURI
ItemクラスやCollectionクラス、Curationクラスのリソースについては、ItemクラスのリソースにはM+連番、Collectionクラス、CurationクラスのリソースにはC+連番の規則に従ってMADB IDが付与されています。さらにこれらのリソースには https://mediaarts-db.artmuseums.go.jp/id/ + MADB ID の組み合わせで生成される一意なURIが与えられています。
加えて、これらのリソースについては、データ閲覧サービスで固有のウェブページ(詳細画面)が提供されており、与えられているURIにウェブブラウザ等でアクセスすると、該当するリソースの各種情報、データ項目を閲覧することができます。
ItemクラスやCollectionクラス、Curationクラスに含まれないその他のリソースにはS+連番の規則でMADB IDが付与されています。URIについては、所蔵などのMADBの外部に依拠するリソースについては https://mediaarts-db.artmuseums.go.jp/ref/ + MADB ID, アイテムクラスのリソースの内容を表すリソースについては https://mediaarts-db.artmuseums.go.jp/co/S+連番 の組み合わせで与えられています。
これらについては、MADBで必ずしもその永続性を担保することができない情報であるため、Itemクラス・Collectionクラス・Curationクラスとは異なるURIのパターンになっており、それらと区別することができます。また、これらについてはデータ閲覧サービスでの固有のウェブページは必ずしも提供されません。
3. 各分野のクラス定義
ここではマンガ・アニメーション・ゲーム・メディアアートの分野ごとのクラスと分野を横断するクラスの名称・定義について解説します。
ここで解説されている各クラスに属するデータはそれぞれ固有の情報源に基づいて作成されています。それらについてはこちらをご覧ください。
【マンガ分野】
クラス名 | 基本分類 (上位クラス) |
定義 |
---|---|---|
マンガ作品 | コレクション | 共通のマンガの著作と認識できるまとまり。 |
マンガ単行本シリーズ | コレクション | 同一タイトルで共通した連続する単行本のまとまり。 |
マンガ雑誌 | コレクション | マンガ作品を主に掲載している雑誌。 |
マンガ雑誌掲載履歴 | コレクション | 同一のマンガ作品の雑誌掲載についてのまとまり。 |
マンガ単行本 | アイテム | マンガ作品を掲載している単行本。 |
マンガ雑誌各号 | アイテム | マンガ作品を主に掲載している雑誌の各巻・号。 |
マンガその他 | アイテム | その他のマンガ作品が掲載された、単行本・雑誌各号以外の出版物。 |
マンガ関連資料 | アイテム | マンガ作品に関連する資料。 |
マンガ所蔵情報 | その他 | 各連携機関が保有する個別の資料の所蔵。 |
マンガ雑誌内容細目 | その他 | マンガ雑誌に掲載された個別の作品・記事。 |
【アニメーション分野】
クラス名 | 基本分類 (上位クラス) |
定義 |
---|---|---|
アニメ作品 | コレクション | アニメーションのメディアタイプを超えて同一と認識される一連のアニメ作品のまとまり。 |
アニメテレビレギュラーシリーズ | コレクション | あるアニメ作品が連続して放送されたテレビアニメーション番組シリーズ。 |
アニメテレビ単発(スペシャル)シリーズ | コレクション | スポットまたは不定期で放送されたが、1作品として見なせるテレビアニメーション単発番組の集合。 |
アニメビデオパッケージシリーズ | コレクション | ある同一のアニメ作品が続刊する場合のパッケージの集合。 |
アニメ映画シリーズ | コレクション | 連続して一作品を構成するとみなせるアニメ映画の集合。アニメ映画1単位のみで構成される場合もある。 |
テレビアニメ番組 | アイテム | テレビ番組として放映されたアニメ番組の放送。 |
アニメビデオパッケージ | アイテム | 販売用や付録などとして作られた、アニメ作品を記録する媒体。 |
アニメ映画 | アイテム | 映画館において、興行目的で、制作会社・配給会社を通して上映された映画の1幕分。 |
アニメその他 | アイテム | 上記のメディアタイプに当てはまらない作品の1公開分。イベント向けの作品・個人制作の作品など。 |
アニメテレビ番組(各話) | その他 | 話数の表示などで示される、テレビ番組で放送されたアニメ作品の個別の話・ストーリー。 |
【ゲーム分野】
クラス名 | 基本分類 (上位クラス) |
定義 |
---|---|---|
ゲーム作品 | コレクション | ゲームの個別の創作的内容。著作。 |
ゲームバリエーション | コレクション | 同一の経験を提供するビデオゲームの内容。同一のタイトルであっても、移植作品などで内容に違いがある場合は、それらは区別され各個記録される。パッケージにより具体化される。 |
ゲームパッケージ | アイテム | ビデオゲームの頒布単位。同じ内容であってもキャリアの形式が違う場合や、バージョン違いで物理的な形状やデザインが違う場合は、それらは区別され各個記録される。作品の内容に関しては、「作品」や「バリエーション」で記述される。 |
ゲーム個別資料 | その他 | ゲームの個別の手にすることができる若しくは目にすることができる物体。パッケージの例示体。 |
【メディアアート分野】
クラス名 | 基本分類 (上位クラス) |
定義 |
---|---|---|
メディアアート作品 | コレクション | メディアアートに関する展示・実演の象徴的な著作としてのまとまり。 |
メディアアート催事 | コレクション | メディアアートが提示された展覧会やイベント。 |
メディアアート展示・実演 | アイテム | メディアート作品を体現した事物。可視,不可視問わず一定期間において再現性が保たれた状態で鑑賞可能な作品の体現である「展示」と短時間で一過性が高く,同一時間を共有することで鑑賞が成立する作品の表現である「実演」を含む。 |
メディアアートその他 | アイテム | 展示・実演に含まれないメディアアート作品を体現するもの。 |
【分野横断】
クラス名 | 基本分類 (上位クラス) |
定義 |
---|---|---|
責任主体 | キュレーション | メディア芸術作品の創作やパッケージの頒布などに責任や権利を有する主体。作者など作品に関わる人物や出版社、制作会社などの団体。 |
催事 | キュレーション | メディア芸術作品が提示された展覧会やイベント。 |
4. 各クラスの記述項目について
MADBではデータの記述項目を各クラスのプロパティとして定義しています。
プロパティ定義についてはメタデータスキーマ仕様書をご参照ください。