第6回:アニメビデオパッケージの登録データ件数比較
レポート:三原鉄也(ITコンサルタント)
※このコラムの概要や背景についてはこちらをご一読ください。
[MADBアニメビデオパッケージについて]
MADBでは日本国内で制作されたアニメーションの中で、映像パッケージメディアにて一般販売されたもの(ビデオパッケージ)に関するデータを「アニメビデオパッケージ」として収集・登録しています。
アニメビデオパッケージについても、第4回・第5回に紹介したアニメーションに関するデータと同様に、国内のアニメーションに関する研究書や研究者によって作成・提供されたデータと、専門誌などの資料を調査して作成したデータを登録したものです。使用された資料については、メディア芸術データベース(ベータ版)の「データベース内の情報について」をご覧ください。
MADBが一般販売されたアニメーションのビデオパッケージ全般をアニメビデオパッケージとして登録する方針となったのは近年のことです。それ以前はいわゆるOVA(オリジナルビデオアニメーション)やOAD(オリジナルアニメーションディスク)などと呼ばれる、映像パッケージ専用の作品の登録が中心でした。そのため全体の登録数は2022年現在で9,191件にとどまっています。
[アニメビデオパッケージの比較対象データと比較方法]
ビデオパッケージの比較対象には、過去の事業にて調達された映像ソフト販売・レンタル事業を行うカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社が作成したデータ(以下、CCCデータ)を利用しました。
映像パッケージは、書籍と同様に納本制度の対象であり、国立国会図書館(NDL)による収集が行われていますが、収集状況は芳しくありません。その他にも国内に大規模なアーカイブ機関もほぼ見られないため、我が国に長期間を対象にした映像パッケージに関する網羅的なデータはほとんど見られません。その中にあって今回使用したCCCデータの件数は12万件超であり、アニメにフォーカスしたビデオパッケージのデータとしては類を見ないものです。特に家庭用ビデオテープに代表されるデジタル化以前のビデオパッケージのデータが多数含まれていることが特徴です。さらに、専ら一般販売を目的として製作されたビデオパッケージのみならず、レンタル専用のビデオパッケージも登録されていることも大きな特徴です。なお現在、MADBのアニメビデオパッケージのデータの更なる充実のために、CCCデータのMADBへの登録が検討されています(2022年現在)。12万件を超えるCCCのデータ件数はMADBのアニメーションに関するデータ全体の登録件数に匹敵するものであり、CCCデータを登録することでMADBのアニメーションに関するデータの網羅性はほぼ倍増すると言えます。
図1はビデオパッケージについてのMADB・CCCデータのデータ件数の年別の推移を示したものです。MADBはCCCデータと比して総件数で10倍以上の開きがあり、網羅性においては全く不十分であることが一目瞭然です。
2つのデータの傾向について見てみます。MADBデータは2010年代からデータが増加しています。これは第4回で紹介したアニメテレビ番組と同様に、文化庁によるメディア芸術の調査が開始されてリアルタイムでのデータ整備が進められた影響だと考えられます。CCCデータは2000年頃までは右肩上がりで件数は増加していますが、2005年頃をピークに件数は減少しています。この変化はアニメテレビ番組・アニメテレビ番組シリーズでも見られるもので、テレビアニメの制作数に連動してそれらの映像パッケージの製作数が減少したものと考えられます。しかし、アニメテレビ番組・アニメテレビ番組シリーズは2010年頃には下げ止まり再び増加傾向になりますが、CCCデータは2010年頃に一度下げ止まった後にさらに減少しています。これはインターネットによる映像配信サービスの浸透などの影響によるものではないかと推察されます。
全6回に及んだMADBの登録データ件数と主要データとの比較はこれにて終了となります。MADBの網羅性が比較データを上回っているものも、残念ながらそうではないものもありました。今回の比較による網羅性やデータ件数の推移の傾向が皆さんのデータの利用や研究のお役に立てれば嬉しく思います。
MADBはメディア芸術分野の基盤的なデータの整備を目指して、更なる網羅性の向上のための登録や調査等の取り組みを続けてまいります。皆さんによるデータ活用をお待ちしています。