「マンガ評論家・ジャーナリスト協会」(Association des critiques et des journalistes de bande dessinée、略称ACBD)の年次報告書(2012年度)が発表された。
これはACBDのジル・ラティエ氏が2000年から毎年発表している統計資料で、フランスにおけるマンガ市場の推移を測るものとして、今や評論家・研究者にとって欠かせないものとなっている。
最もよく言及されるのは年間のマンガ発行点数である。2012年度は5,565点と前年比で4.28%増。統計を取りはじめた2000年度の1,563点から、順調に右肩上がりを続けている。ただし、この発行点数の増大は以前から弊害も指摘されており、書店の売り場面積の限界をすでに超えて過剰生産状態であると言われる。
5,565点の内訳は4,109点が新刊、1,069点が再版・復刻、311点がアートブック、76点がエッセー・研究書。新刊4,109点のうち、フランス=ベルギー派のマンガ(BD franco=belges)は1,731点、日本のマンガも含めたアジアのマンガが1,621点、アメリカのマンガ(comics américains)が366点、グラフィック・ノヴェルあるいは実験的作品(romans graphiques et livres expérimentaux)が391点となっている(同シリーズでも巻数が異なれば別にカウント)。
一見して外国マンガの占める割合が多いことが見てとれるが、実際に新刊を国別で分類すると、4,109点のうち2,234が翻訳マンガであり、国数は23カ国にのぼる。そのうち日本のマンガは1,465点と、新刊点数の約35%を占め、相変わらずその人気は突出して高い。
ただし、発行部数(刷数)のランキングを見ると、1位の『ティトゥフ』第13巻が100万部であるのに比べ、日本マンガ部門の1位である『ナルト』第55巻は22万5千部となっている。それに続いて同作の56巻と57巻がそれぞれ同じく22万5千部で2位、3位を占めているが、単価の違い、最終的な読者数を考慮すると単純に合計して比較することはできないだろう。フランス市場における日本マンガの売上げは、1月から5月にかけての統計で、売上高において前年比2.6%減、発売部数において前年比4.3%減という報告もなされている。
また、韓国マンガは106点、中国マンガは13点、日本マンガ・スタイルのヨーロッパ・マンガが37点となっている。その他の国として、アメリカ合衆国:448点、イタリア:85点、スペイン:35点、イギリス:25点、オランダ:18点、ドイツ:12点などが2012年度に発行されたそうだ。過剰生産はフランスのマンガ産業が抱える重大な問題ではあるが、それと同時に発表される作品の多様性を示しているとも言えるだろう。
2012年度に少なくとも1冊のマンガを出版した作家は1,951人で、報告書の推定によれば、現在マンガで生活できている作家の数は1,510人とされる。そのうちの188人(約10%)が女性、280人(約14%)が原作者とのこと。この他にも、同報告書には雑誌タイトル数やマンガ関連イベント数などについても触れられている。
ACBD年次報告書
http://www.acbd.fr/bilan/les-bilans-de-lacbd.html
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