日本図書館協会(Japan Library Association、略称:JLA)は、視聴覚資料の保存に関するセミナーを2012年7月20日に開催する。主催者によれば、本セミナーは「身近にありながらなかなか基本的な知識を得る機会の少ない視聴覚メディアについて学ぶシリーズ」で、「第1回は録音テープとビデオテープを取り上げ、その種類、歴史、記録と再生の仕組み、適切な取り扱いと保存の方法などを概説する」ものだ。事前申込不要で比較的短時間のセミナーなので、気軽に参加できそうだ。

視聴覚資料の保存に関連して、いくつかの研究事例を紹介したい。勉誠出版のウェブサイトでは「キーピング・アーカイブズ(Keeping Archives)」の翻訳を連載している。「キーピング・アーカイブズ」は、オーストラリア・アーキビスト協会(The Australian Society of Archivists Inc.)が1987年に刊行した、アーカイブズ業務の理論と実践的なマニュアルであり、教育用の教本でもある。2008年に増補改訂された第3版は4部18章からなり、「紙資料」を中心にしたアーカイブズの立ち上げから、評価選別、編成記述、マネージメント、検索など基本的な内容に加えて、デジタル化、インターネット、視聴覚資料などについてもカバーする。勉誠出版のウェブサイトで展開する連載では、視聴覚資料を扱う第16〜18章を翻訳している。また、本翻訳を行う「NPO法人映画保存協会」のウェブサイトでは、火災や水害などによってダメージを受けた家庭用ビデオテープの応急処置の手法や関連する文献の翻訳などを掲載している。さらに、メディアアートに関する組織が公開する研究事例として、Electronic Arts Intermix(EAI)のウェブサイトDocumentation and Conservation of the Media Arts Heritage(DOCAM)のウェブサイトなどがある。

視聴覚資料の保存問題は、家庭用や放送、公記録などの他、視聴覚メディアを使ったメディアアートにおいても共通する。今後、視聴覚資料の保存に関する基本的な知識や手法からそれぞれのニーズに合わせた考え方や詳細なアプローチを知るためのセミナーや勉強会が広く求められるだろう。

日本図書館協会資料保存委員会 「資料保存セミナー 視聴覚資料の保存 第1回 録音テープとビデオテープ」
http://www.jla.or.jp/jlaevent/tabid/93/Default.aspx

メディア芸術カレントコンテンツ内関連ページ
「ダニエル・ラングロワ財団がメディアアート関連資料を含むアーカイブをシネマテーク・ケベコワーズへ寄贈」
http://mediag.bunka.go.jp/article/post_9-42/

「ZKMメディアミュージアム 展覧会『デジタルアート 保存の課題』を開催」
http://mediag.bunka.go.jp/article/zkm-45/

「オーバーライン地方『デジタルアート保存プロジェクト』2010 年 - 2012 年
http://mediag.bunka.go.jp/article/2010_-_2012-46/