『A Brief History of Curating New Media Art Conversations with Curators』(未邦訳, Sarah Cook, Beryl Graham, Verina Gfader, Alex Lapp編, The Green Box, 2010)は、メディアアートの展覧会を手がけてきたキュレータらへのインタビュー集である。 本書は、オンラインでインタビューや研究成果を発表してきたキュレータのためのウェブサイトCuratorial Resource for Upstart Media Bliss(CRUMB)の10周年を記念して、同じ編者らによる 『A Brief History of Working with New Media Art: Conversations with artists』
(The Green Box Kunstedition, 2010)と同時に刊行された。
収録されているインタビュー対象者は、カナダ、米国、英国、スペイン、ドイツなどの美術館やギャラリー、オルタナティブスペースのキュレータである。主なキュレータは、ピーター・ヴァイベル氏(ZKM、ドイツ)、バーバラ・ロンドン氏(MoMA、アメリカ)、クリスチャン・ポール氏(ホイットニー美術館、アメリカ)、ルドルフ・フリーリング氏(SF MoMA、アメリカ)らだ。現代美術もカバーする新しい美術領域(本書によれば「ニューメディアアート以降のアート」と呼ぶ)の重要なキュレータとの対話を通して、アーティストとは異なる視点でメディアアートに向き合ってきた人々のオーラルヒストリーとして読むこともできる。
本書では、イントロダクションの中で7名のキュレータに「過去の10年間でニューメディアアートのキュレーティングの実践がどのように変化してきたか?」という問いを投げかけている。その背景には、キュレータのあり方や取組み方の変化についても問題を提起していることがうかがえる。このようなキュレーティング再考については、本書の編集をおこなった、サラ・クック氏とベリル・グラハム氏による著書『Rethinking Curating Art after New Media 』(未邦訳, MIT press, 2010)に詳しく論じられている。
本書やCRUMBの活動は、多様なメディアアートを多角的に理解し批評するうえで重要なリソースである。CRUMBウェブサイトの最新のコンテンツでは、メディアアートのキュレータとして国際的に活躍する四方幸子氏のインタビューを読むことができる。
また、近年、コンセプチュアルアートなどの展覧会研究が注目されるなか、美術館のコレクションとして残しにくいメディアアートやイベント性の高い展覧会を記録していく実践としても有効だと考えられる。
『A Brief History of Curating New Media Art Conversations with Curators』出版社サイト
http://www.thegreenbox.net/en/books/brief-history-curating-new-media-art