魔法のような体験を通して技術を伝える展覧会「マジカリアル~VR・ARが作り出す不思議体験~」がSKIPシティ 彩の国ビジュアルプラザ 映像ミュージアムで開催され、VR(仮想現実)とAR(拡張現実)の先駆的な取り組みが、幅広い世代に向けてわかりやすく紹介された。

展示風景

子供だけではなく大人も楽しめる

広大な敷地のなかに市立科学館や彩の国ビジュアルプラザ、NHKアーカイブスなど数棟の文化施設が建ち並ぶ埼玉県川口市の「SKIPシティ」。「マジカリアル~VR・ARが作り出す不思議体験~」はそのうちの一つ、彩の国ビジュアルプラザ内にある映像ミュージアムで開催された。本展は楽しく遊びながらVR(仮想現実)とAR(拡張現実)が体験できる企画展だ。

彩の国ビジュアルプラザ外観
映像ミュージアムの入口

企業、大学、アーティストなど多様な制作者による10の展示はすべて体験できる(註1)ほか、VRやARの歴史や技術がパネルで解説されている。子供から大人まで幅広い世代が楽しめるコンテンツがそろった。近年VRやARを使ったアミューズメント施設も増えているが、それらとの違いは、遊びながらも何らかの学びや効果が得られたり、先駆的な技術や表現を紹介していたりするところにあるだろう。

VRとARのさまざまな体験

先駆的な取り組みという点では、大学の研究室による展示がある。身体拡張を擬似体験できる《Metamorphosis Hand – えくす手 -》や、ヘッドマウントディスプレイと腰に着けたカメラや手に着けたセンサーで、子供の身体感覚を体験できる《CHILDHOOD》。両者とも体験自体はシンプルだが、身体の感覚が揺るがされる。


上:東京大学大学院情報理工学系研究科 廣瀬・谷川・鳴海研究室 小川奈美《Metamorphosis Hand – えくす手 -》
下:筑波大学 西田 惇・髙鳥 光・佐藤綱祐《CHILDHOOD》

近年開発された新しい技術を紹介していたのは、裸眼で見ているのに絵画のなかの人物が動き、風景が浮かび上がる《変幻灯》《立体灯》。そして特殊なマントを着ると透明人間になれる《光学迷彩》だ。

遊びながら運動になるAR技術によるゲーム《HADO SHOOT!(ハドーシュート)》にも注目したい。ヘッドマウントディスプレイを装着し、利き腕にアームセンサーをはめ、対戦画面に向かってパンチをすると「HADOショット」が放たれるゲームである。宝箱に隠されたアイテムを使いながら続々と現れるモンスターを倒し点数を競う。制限時間は数分だが、夢中になって腕を動かしているうちに運動になる。開発した株式会社meleapによると「HADO」とは「体を動かして技を発動させ、フィールドを自由に動き回り、味方と連携して楽しむ『テクノスポーツ』」とあるが(註2)、まさにスポーツをしたあとの爽快感が得られる。

埼玉をバーチャルリアリティ映像開発の拠点に

さらにAR技術による絵本《THE LITTLE MERMAID》では、タブレットをかざすと本に描かれたキャラクターや背景が動き出し、絵1枚1枚がミニゲームにもなっている。全編英語だが、本をめくりながら物語を読む楽しさ、そしてゲームを介してストーリーに参加できる楽しさ、その両方を兼ねた本だ。

BOOKS & MAGIC《THE LITTLE MERMAID》2016年

ストーリーそのものに没入できる作品が《360°VR絵本『博士と万有引力のりんご』》と《恐竜戯画》の2作。ともにヘッドマウントディスプレイを装着し360度のVR映像を体験できる。前者では絵本の世界に入り込むことができ、後者は太古の地球で恐竜たちを間近で見られる。

こうした企業や大学のチームによる展示のほか、アーティスト個人としての作品も展示されていた。赤松正行による《ウロボロスのトーチ》は8枚の連作絵画にスマホをかざすと見えなかった絵が現れたり、音が聞こえたりする作品。坪倉輝明の《不可視美術館》は懐中電灯を当てると、そこにないはずの絵や彫刻が、光と影となって現れる。


上:赤松正行《ウロボロスのトーチ》2012年
下:坪倉輝明《不可視美術館》

会場にあった「VR・ARの変遷」というパネルを読むと、ヘッドマウントディスプレイは人工知能の父と呼ばれるマービン・ミンスキーにより1958年に提案されていた。それから約60年経ち、VRやARの技術は社会に浸透し身近なものになりつつある。だが、まだ日常的な映像技術とはいえないだろう。技術を広く伝えるという意味で、この企画は幅広い世代に親しみやすく理解しやすい展覧会だった。すべての作品に置かれた解説パネルでは漢字にルビが振られ、作品や技術の解説と応用の可能性が丁寧に紹介されていたことも特筆したい。また本企画展は埼玉県の主催事業だが、同県は「バーチャルリアリティ映像開発事業」として、VR・AR映像の製作者の育成に今後力を入れていくという。今後の埼玉の動きにも注目していきたい。


(註)
*1:10の展示のうち、2つをのぞいて全年齢対象
http://www.skipcity.jp/assets/file/mr/magicareal_notice3.pdf

*2:以下URL参照
http://meleap.com


(information)
マジカリアル~VR・ARが作り出す不思議体験~
会期:2017年9月16日(土)〜 2018年3月11日(日)
休館日:月曜日(祝日の場合は翌平日)、年末年始(12/29-1/3)
料金:大人 510円 / 小人 250円(常設展示、企画展示共通)
会場:SKIPシティ 彩の国ビジュアルプラザ 映像ミュージアム(埼玉県川口市上青木3-12-63)
http://www.skipcity.jp/vm/mr/