札幌市では、産学官で構成する「創造都市さっぽろ市民会議」が中心となり、メディアアートを活用した新たな都市文化・経済の循環と、ソーシャルメディアを活用した市民の創造活動について検討が進められている。これまでに、クリエイティブ・コモンズの国際会議iSummitの誘致(2008年)をはじめ、アーティストやクリエーターの拠点づくりを通じた都市基盤の再編に取り組んできた。その過程で、クリエイティブ産業の振興やCGM(Consumer Generated Media、消費者生成メディアの意)の活性化が進み、札幌発のサブカルチャーも現れてきている。それは、2011年3月に完成した札幌駅前地下歩行空間におけるCGMサイネージなどに反映されている。また、2014年の本開催をめざす札幌ビエンナーレのプレ企画として、「表現するファノン—サブカルチャーの表象たち」が開催中だ。

こうした動向を踏まえ、ソーシャルメディア時代の市民の創造的活動と都市の未来に焦点を当てた国際シンポジウム「メディアアートと創造都市」が、2011年11月22日に開催される。登壇者は伊藤穣一氏(マサチューセッツ工科大学メディアラボ所長)、アンドレアス・ブレックマン氏(ロイファナ大学リューネブルク「ロイファナ・アートプログラム」ディレクター、ドイツ)、伊藤博之氏(クリプトン・フューチャー・メディア(株)代表取締役)、水口哲也氏(ゲームクリエイター、プロデューサー)の4名。メディア美学者である武邑光裕氏(札幌市立大学教授、創造都市さっぽろ市民会議座長)が進行を務める。

武邑氏によれば、本シンポジウム開催の趣旨は、つぎの通りだ。

「日本における『メディア芸術』と西欧における『メディアアート』のコンテクストの相違は、現代アートにエンターテインメント産業コンテントが包含され得るか、という基本的な議論を浮上させています。一方、西欧芸術の嫡子としてのメディアアートは、デジタル技術によって諸芸術間を融合し、その境界なき離散性によって表現領域は拡張しています。そこでは、現代アートとクリエイティブ産業との連携可能性なども議論されていくべきでしょう。

日本の『メディア芸術』と西欧の『メディアアート』の差異の中に、次代のデジタル文化に内在する生産・消費の分離主義を超える活動や、ヨーゼフ・ボイスが述べた『誰もが芸術家』というメッセージを解く鍵があるのかもしれません」。

メディアアートは、次代のデジタル文化、経済、都市に、何をもたらし得るのか? シンポジウムでの議論に期待が寄せられる。