第16回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門から、短編作品の受賞作について取り上げる。

大賞を受賞したのは大友克洋監督の『火要鎮』で、短編作品が大賞を受賞するのは、第12回の加藤久仁生監督『つみきのいえ』以来4年ぶりのことである。『火要鎮』はサンライズの「ショートピースプロジェクト」で製作された作品で、同プロジェクトからは森田修平監督の『九十九』も審査委員会推薦作品に選ばれている。両作品は今年のアヌシー国際アニメーション映画祭の短編部門に入選し、米アカデミー賞の短編アニメーション部門ノミネートへの最終候補作の10本にも残っている。

優秀賞には和田淳監督『グレートラビット』が選ばれた。同作はフランスのサクレブルー・スタジオとカルトブランシュの共同製作で作られたフランス作品で、「不服従」をテーマとして若手作家が作品を作るオムニバス企画のうちの1本である。同作はプレミア上映となった今年のベルリン映画祭の短編部門で準グランプリに相当する銀熊賞を受賞後、ザグレブや広島といった主要なアニメーション映画祭でも受賞するなど、高い評価を受ける作品となっている。和田監督は東京藝術大学大学院の修了制作『わからないブタ』で第14回に同じく優秀賞を受賞しており、次代を担う日本の若手アニメーション作家としての地位を確かなものにしつつある。

新人賞は水尻自子監督『布団』と、エマ・ドゥ・スワーフ氏とマーク・ジェームス・ロエルズ氏の共同監督作品『オー、ウィリー』が受賞した。

『布団』は水尻監督の個人制作作品で、布団の中で夢うつつの状態にある主人公の女性の願望や感覚が、密度の高い身体感覚を表現するアニメーションによって展開される。同作は今年の広島国際アニメーション映画祭で、先鋭的な表現を行う若手作品に授与される木下蓮三賞を獲得しており、それに続く大きな賞の受賞となった(他の受賞作品との関わりでいえば、水尻氏が監督を務めたテレビシリーズ『レイナレイナ』において、優秀賞受賞の和田氏は助監督を担当している)。

『オー、ウィリー』は、先日のニュースでもお伝えしたとおり、「アニメーション・アーティスト・イン・レジデンス東京」で今年度招聘されるエマ・ドゥ・スワーフ氏がマーク・ジェームス・ロエルズ氏と共同で監督した人形アニメーション作品だ。ザグレブでのグランプリなど、国際映画祭ですでに50以上の賞を獲得しており、今年の世界的な話題作が日本でも評価を受けた形になる。

審査委員会推薦作品は、短編作品全20作品のうち11作品が学生作品で(国内外含む)、昨年同様に学生作品の強さが目立つ。なかでも東京藝術大学大学院のアニメーション専攻の作品が約半数を占め、同大学院出身の和田監督の受賞も含め、同校が、日本を代表するアニメーション教育機関として着実な成果を挙げつつあることがわかる。

メディア芸術祭のアニメーション部門は、海外からの応募を受け付けつつも、「国内賞」の性格が強かった。(これまで海外作品が大賞を受賞した例が、日本も共同製作国に入っている『老人と海』に限られていることからもそれは顕著である。)今回の『オー、ウィリー』の新人賞の受賞は、海外作品の評価という点において海外映画祭での評価とメディア芸術祭の受賞が交差した例として考えることができ、来年度以降、同賞において海外作品をめぐるパワーバランスがどのように変化していくのか、注目される。

第16回メディア芸術祭受賞作品(アニメーション部門)
http://j-mediaarts.jp/awards/gland_prize?locale=ja&section_id=3