第16回文化庁メディア芸術祭の「マンガ部門」受賞作が発表された。「マンガ部門」の対象は、「単行本で発行されたマンガ、雑誌等に掲載されたマンガ(連載中の作品を含む)、ウェブで公開されたコンピュータや携帯情報端末等で閲覧可能なマンガ、同人誌等を含む自主制作のマンガ等」とされている。この賞の特徴として、紙媒体で発表されたかどうかを問わない点、同人誌などの自主制作作品を含む点、そしてエントリーに自薦が必要という点が挙げられるだろう。応募に関しては国外からも受け付けている。
応募総数3,503作品のうち、マンガ部門に応募があったのは458作品で、全4分野中もっとも少なかった。その内訳は▽単行本で発行されたマンガ:223作品▽雑誌等に掲載されたマンガ:97作品▽ウェブで公開されたコンピュータや携帯情報端末等で閲覧可能なマンガ:67作品▽同人誌等を含む自主制作のマンガ:57作品▽その他:14作品、となっている。
今回の受賞作は以下のとおり。
大賞:『闇の国々』(ブノワ・ペータース/フランソワ・スクイテン、訳:古永 真一/原 正人、フランス/ベルギー/日本)
優秀賞:『岳 みんなの山』(石塚真一、日本)
『ましろのおと』(羅川真里茂、日本)
『ムチャチョ−−ある少年の革命』(エマニュエル・ルパージュ、訳:大西愛子、フランス)
『GUNSLINGER GIRL』(相田裕、日本)
新人賞:『凍りの掌 シベリア抑留記』(おざわゆき、日本)
『千年万年りんごの子』(田中相、日本)
『ぼくらのフンカ祭』(真造圭伍、日本)
この他に審査委員会推薦作品として、約30タイトルの作品リストが公表されている。また、審査委員会の推薦により与えられる功労賞に、編集者の小長井信昌氏が選ばれた。日本マンガにおける編集者たちの重要性はしばしば指摘されてきたが、彼らの名が表に出ることはそれほど多くない。その意味でも小長井氏の受賞は喜ばしい。小長井氏には『わたしの少女マンガ史―別マから花ゆめ、LaLaへ』という著作もある。
メディア芸術祭では、これまでも山本順也氏(2004年)、栗原良幸氏(2010年)といった編集者が功労賞を授与されている。
今回は、11月に来日したベルギー=フランスのブノワ・ペータース氏とフランソワ・スクイテン氏による『闇の国々』が大賞を受賞した。メディア芸術祭で海外マンガが大賞に選ばれるのは、1997年の創設以来初めてのこと。
近年、日本のマンガが海外へ進出した結果として、再び海外のマンガが視野に入るようになってきた。今回の受賞はその象徴とも言えるだろう。この久方ぶりの邂逅が今後どのような影響を日本のマンガに及ぼすのか、あるいは及ぼさないのか、これからが興味深い。
第16回文化庁メディア芸術祭「マンガ部門」受賞作品
http://j-mediaarts.jp/awards/gland_prize?locale=ja§ion_id=4
審査委員会推薦作品リスト(PDF)
http://j-mediaarts.jp/dl/awards/jury/ja/4.pdf