エアランゲンはドイツの南東に位置する人口約10万人の地方都市。この町で1984年から2年に1度開かれているのが、「エアランゲン国際コミック・サロン」(Internationale Comic-Salon Erlangen)だ。
ドイツ国内で開かれるマンガ・フェスティバルとしては最も重要なものとされ、前回(2012年、第15回)は約2万5000人を集めた。また、このフェスティバルで授与される「マックスとモーリッツ賞」も有名で、日本からはこれまで中沢啓治氏や谷口ジロー氏が受賞している。
この「エアランゲン国際コミック・サロン」の第16回目が、2014年6月19日から22日にかけて開催される。今年は第一次世界大戦勃発から100年目の節目にあたり、エアランゲンでもこれを記念して様々な企画が予定されている。30以上におよぶ展示プログラムのひとつとして、第一次世界大戦を描くフランス人作家として有名なジャック・タルディ氏に焦点を当てた「死者の風景」や、パレスチナ自治区を取材したドキュメンタリー・マンガ『パレスチナ』(2007年、いそっぷ社)で有名なアメリカ人作家ジョー・サッコー氏による、第一次世界大戦をテーマにしたインスタレーションなどが企画されているようだ。
また、ドイツのコミック・スタディーズ学会(Gesellschaft für Comicforschung、略称ComFor、メディア芸術カレントコンンテンツ内関連記事)もこれにあわせ、第一次世界大戦とマンガについて3日間にわたるコンフェランスを開く予定だ(プログラム)。
今年は、ドイツ・マンガの祖のひとつとして挙げられることの多いヴィルヘルム・ブッシュ氏(1832-1908)の『マックスとモーリッツ』誕生から150年(メディア芸術カレントコンンテンツ内関連記事)、そして『ムーミン』の作者であるフィンランド人作家トーヴェ・ヤンソン氏(1914-2001)生誕100周年にもあたり、それぞれを記念した展示も開かれる。
参加作家の数も膨大で、前述のジャック・タルディ氏や、ジョー・サッコー氏もふくめ、世界各国から400人以上の名前がホームページ上でリストアップされている。
「エアランゲン国際コミック・サロン」は、参加者人数の規模からするとそれほど大きくはないものの、マンガの社会的地位が高いとは言いがたいドイツという国において、一地方都市で30年間も続いてきたフェスティバルであり、一度は訪れてみたい場所である。

第16回「エアランゲン国際コミック・サロン」
http://www.comic-salon.de/index.asp?FsID=0&spr=1