1987年に開館した町田市立国際版画美術館は、版画がその端緒をひらいた「複製制作を前提とするアート」に着目し、1990年からメディアアート作品の展示に取り組んできた。2003年より毎年秋に開かれる「デジタル・インターコネクション」シリーズは、講演会、座談会、ワークショップと学生作品展で構成されている。2011年の『「初音ミク」現象に見るソーシャル・メディアの未来』、2012年の『インディーズ・ゲームの世界にようこそ!』、2013年の『メディア・アートと社会--東日本大震災からの変容』に引き続き、『「デジタル・ダダ」あるいは「ノイズ・オブジェクト」−−3Dプリンターによるアート作品制作の試み−−』が今年のテーマとなった。2014年10月25日と26日の二日間、多摩美術大学の久保田晃弘教授による基調講演「デジタル・オブジェクトにおける意味とノイズ」、谷口暁彦氏、渡邉朋也氏、時里充氏によるデモンストレーション「iPadを使った3Dアートの理念と制作方法」、そして一般来場者を対象とするiPadと3Dスキャナを用いた3Dアートの制作体験と講評会が行われた。
会場では、3Dスキャナが現実の物を情報化するプロセスと3Dプリンターが情報を物に変換させるプロセス、その間にある情報空間での操作が実演され、その全てのプロセスで発揮される様々なクリエイティビティが、インターネット上で世界と共有されていく現状までが紹介された。100円ショップから購入された身近な事物という素材の選択は、社会に普及しつつあるこのテクノロジーの方向性を端的に象徴しているが、その事実よりはむしろ、テクノロジーがまだ不完全であるがゆえに生まれる想像力と、テクノロジーとして完成された後には不可能になってしまう実験性が強調されていた。
今回講師を務めた、思い出横丁情報科学芸術アカデミーの谷口氏と渡邉氏は、まだ在学中だった2000年代の「デジタル・インターコネクション」にも参加したことがある。11月15日から24日の10時から17時まで開催される「デジタル・インターコネクション2014」の第2部「学生メディア・アート展2014」で、また次の世代が登場することを期待したい。今年の出品者は、桜美林大学、関東学院大学、九州大学、湘南工科大学、尚美学園大学、首都大学東京、東京工芸大学、東北芸術工科大学、武蔵野美術大学、和光大学の学生たち。11月23日の13時30分から17時までは、出品作家による作品プレゼンテーションも行われる予定だ。入場料は無料。
町田市立国際版画美術館「デジタル・インターコネクション2014」
http://hanga-museum.jp/event/schedule/2014-278
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http://mediag.bunka.go.jp/article/netartsorg-222/