日本科学未来館の常設展メディアラボの新たな展示「現実拡張工房」が2013年7月3日にオープンした。メディアラボは、最先端の科学技術を軸とした新たな表現分野の開拓を目指す展示である。第12期となる今回は、東京大学の苗村健教授が担当した。光学技術や画像処理、拡張現実感などを専門とする苗村教授の研究室では、科学技術振興機構(JST)のCREST(*1)「共生社会に向けた人間調和型情報技術の構築」領域において、デジタル世界と実世界の融合を実現するためのさまざまな新しいメディア技術を研究している。
今回展示されているのは、モニタと実像鏡AI(エアリアルイメージング)プレート(*2)を用いることで、あたかもキャラクターがブロックの上に浮かんでいるかのように見えるインタラクティブなディスプレイ「でるキャラ」、紫外線に反応して色が変化するフォトクロミックインクという特殊な材料を用いて、白い床を歩くと、さまざまな足跡が現れてはゆっくりと消えていく「Photochromic Carpet(フォトクロミック カーペット)」、遠赤外線領域に感度を持ち温度情報を撮影できるサーマルビジョンカメラと通常のカラーカメラの画像を、ハーフミラーを用いて重ね合わせて人物領域にさまざまな加工をリアルタイムで施せる「Thermo-key(サーモキー)」など6点。苗村研究室が以前から取り組む代表的な研究から、新作の装置まで多様な取り組みが「工房」に並んでいる。
この展示で紹介される新しいメディアはどれも、ヒトに特殊な装置の装着や特別な知識を必要としないという軽やかさを持っている。さらに、「つい○○したくなる」「集中して○○できる」といったようにヒトの能動的な行動を誘発してくれるような仕掛けが施されている。
先端技術でありながら、常に人間に寄り添って設計されたメディア群が、新しさと温かさを持った「未来」を示してくれる。会期は2014年1月13日まで。
*1 CREST(Core Research for Evolutionary Sciense and Technology):日本の社会的・経済的ニーズの実現に向けた戦略目標に対して設定され、インパクトの大きなイノベーションシーズを創出するためのチーム型研究。
*2 AIプレート:空中に虚像を結像させる特殊なパネル。
メディアラボ第12期展示「現実拡張工房」