ノルウェー国立現代美術館(National Museum of Norway, Museum of Contemporary Art、オスロ)は2013年2月14日から8月18日まで展覧会「パラドックス──ノルウェーのビデオ・アートの位置 1980–2010(PARADOX: Position in Norwegian Video Art 1980–2010)」を開催する。

同展覧会では、1970年代後半から現在までのビデオ・アートの形成推移をたどる。その中には、映画や写真などの手法が取り込まれたコンセプチャル・アートやポストモダン・アートにおける表現を引き継いだ、デジタル・アート領域も含まれている。同美術館によれば、ビデオ・アートは「周辺的な美術形式から主要な地位を築いた」とし、急進的な技術の変化の中で存続してきたビデオ・アートの特性やビデオというメディウムの深化と変化を探る。さらに、同美術館のコレクションを中心に展示し、ノルウェーの美術においてビデオ・アートが与えてきた影響についても考察する。

このような問題設定を踏まえて、同展覧会で発表される作品は8つのサブカテゴリーに分類される。

1. 概念形成の基盤──自己再帰性と時間(A conceptual foundation: self-reflexivity and time)
2. 素材──音とイメージ(The material dimension: Sound and image)
3. 形式──構図と時間(The formal dimension: Composition and time)
4. ヴァーチャル──拡張的なメディウム(The virtual: An expansive medium)
5. パフォーマンス──時間とコンテクスト(Performance: Time and context)
6. アイデンティファイ──立場と役割(Identify: Standing and role-play)
7. 映画への転換──ドキュメンタリーとフィクション(A shift toward film: Documentary and fiction)
8. 詩的物語──媒介するイメージ(Poetic narrative: The mediated image)

これらのサブカテゴリーのテーマは、過去のビデオ・アートの再評価だけではなく、ビデオ・アートを同時代的に変容し続ける表現形式として捉える上で示唆的である。日本ではノルウェーのビデオ・アートを鑑賞する機会は稀であるが、世界的に展開されてきたビデオを用いた表現においても有効なテーマ設定だと考えられる。現在、「ビデオ・アート」という領域の名称を含め、ビデオ・アート作品の再評価が同時多発的に進む中、ぜひ訪れたい展覧会の一つだ。

ノルウェー国立現代美術館「パラドックス──ノルウェーのビデオ・アートの位置 1980–2010」展

同展のブログ
http://norskvideokunst.blogspot.no/