オーストリアのリンツでは、メディアアートに関する最大級のフェスィバル「アルス・エレクトロニカ・フェスティバル」が2013年9月5日から9日まで開催された。お隣のドイツでは同国内で有数の規模を誇る国際アート・フェスティバル「ルールトリエンナーレ(Ruhrtriennale: International Festival of the Arts)」が2013年8月23日から10月6日まで開催中だ。同トリエンナーレは、リンツ同様に工業地帯であったルール地方の都市、ボーフム、デュイスブルグ、ドルトムント、エッセンなど6都市15会場で約80組のアーティストによる作品が発表される。

ルールトリエンナーレは3年ごとに芸術監督が変わり、4回目の開催にあたる今回のトリエンナーレでは、作曲家のハイナー・ゲッベルス氏(Heiner Goebbels)が芸術監督をつとめる。トリエンナーレというよりは3〜4年を通してイベントが行われ、現在開催中のプログラムは今期の最も大規模なプログラムである。本プログラムは6部門(ミュージック・シアター/コンサート/シネ・コンサート/ダンス/美術・ビデオ・インスタレーション/シアター・パフォーマンス *ウェブサイトとカタログで部門名が若干異なる)に加えて、子供向けプログラムやフォーラムによって構成される。

各界の著名な作曲家、振付家、アーティストらによる国際的に評価が高い作品の数々が、ルール工業地帯の壮大な工場跡地をリノベーションしたユニークな空間で発表される。本プログラムのオープニングとクロージングはそれぞれ「ミュージック・シアター」部門の作品からハリー・パーチ氏(1901–1974、米国)作曲「A Ritual of Dream & Delusion」と、イーゴリ・ストラヴィンスキー氏(1882–1971、ロシア)作曲「春の祭典」である。コンサート部門では、ジョナサン・ハーヴェイ氏(1939–2012、英国)、ジョン・タヴナー氏(1944–、英国)、アルヴォ・ペルト氏(1935–、エストニア)らの音楽作品が発表される。音楽やシアター部門では古典的な作品が多く見られる一方で、他部門ではダグラス・ゴードン氏(1966–、英国)の新作「Silence, Exile, Deceit」や、ウィリアム・フォーサイス氏(1949–、米国)のインスタレーション「Nowhere and Everywhere」など、劇場や舞台を意識した観客を取り込むようなパフォーマティブなインスタレーションも見られる。また、音楽ユニットMassive Attackとアダム・カーティス氏(1955–、英国)のコラボレーションによる、客席を含め没中心的な空間でマルチ・スクリーンを使った「シネ・コンサート」も、ジャンルを特定できない。

このように、本トリエンナーレの特色は、音楽、オペラ、演劇、バレエ、ダンス、映画など成熟した表現形式を横断し、古典的な作品を再評価すると同時に新たなタイム・ベースド・アート(時間軸を意識したアート)の表現形態を模索する場を贅沢に創出している点にあると思う。ニュー・メディアを取り込みつつ、既存の表現形式やメディアの解体と再構築の試みに立ち会える本トリエンナーレに今後も注目していきたい。

ルールトリエンナーレ 2012–2014(Ruhrtriennale: International Festival of the Arts)

http://www.ruhrtriennale.de/en/