ジャパン アミューズメント エキスポ協議会、および一般社団法人 日本アミューズメントマシン協会(JAMMA)と一般社団法人 全日本アミューズメント施設営業者協会 連合会(AOU)が主催する、新作アーケードゲームおよび関連商品・サービスの展示イベント「ジャパン アミューズメント エキスポ2016」(略称:「JAEPO2016」)が、2月19〜20日の2日間にわたり千葉市の幕張メッセにて開催された。

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「JAEPO2016」会場全景

【ビデオやメダル、プライズゲームとシール機は減少傾向に。音楽ゲームが人気を集める】

 「JAEPO2016」に出展したのは大手ゲームメーカーをはじめ、プライズ(景品)や子ども用の遊具機、その他の店舗営業用の機器製造・販売を手掛ける合計37社。昨年よりも会場規模はやや縮小したが、バンダイナムコエンターテインメント、セガ・インタラクティブ、コナミなどの大手メーカーは例年どおり広々としたブースを構えていた。

 各社から出展された新作タイトルのジャンルを大まかに見ると、タッチパネルや特殊なデバイスで操作する音楽ゲームをはじめ、モーションセンサーやトレーディングカード、あるいはコックピットを模した大型の体感型筐体を使用したゲームが多く出展されていた。逆に、レバーとボタンだけで操作するタイプの昔ながらのビデオゲームをはじめ、メダルやプライズゲーム、シール機の出展台数は、アーケードゲーム市場がピークとなった2006年前後の時期に比べると減少傾向にある。

 特に新作ビデオゲームの減少は顕著で、今回のショーではバンダイナムコエンターテインメントの「鉄拳7 FATEDRETRIBUTION」「機動戦士ガンダム EXTREME VS. マキシブースト ON」の実質2タイトルのみしか出展されていなかった。また、コナミブースには「実況パワフルプロ野球BALL☆SPARK」が出展されていたが、こちらは現在人気を博しているスマートフォン用アプリからの移植にあたり、スマホ版で作成したチームのデータを読み込んだうえで、全国各地のプレイヤー同士で対戦できるのを特徴とする作品であった。

 今回のショーにおいて、特に来場者から人気だったのがコナミブースにて出展されていた「おといろは」と「ノスタルジア」、カプコンブースの「CYTUS Ω(サイタスオメガ)」の新作音楽ゲーム3タイトルだ。コナミの2作品は家庭用ゲームでは体験することのできない、鍵盤などを模した特殊なデバイスを使用して遊べるのが特徴で、また「サイタスオメガ」はスマートフォン用アプリゲームの移植であるが、5.1chによる立体感のあるサウンドを聞きながら楽しめる専用筐体を使用することにより、アーケード版ならではの楽しさを打ち出している。これらの音楽ゲームは、業界関係者や招待客のみが入場できるの初日のビジネスデイから、プレイできるまで約60分の順番待ちの行列ができるほど盛況だった。

 人気PC用ブラウザゲームのキャラクターを使用した、セガ・インタラクティブの「艦これアーケード」の展示コーナーにも多くの来場者が集まっていた。本作はあらかじめ混雑を回避すべく、公式サイトを通じて事前に応募があった人のみプレイできる方式で出展していたが、声優・タレントが出演するステージイベントを開催したこともあり、当日はプレイできない来場者からも少なからず関心を集めていた。

 試作品の設置とステージイベントのみの参考出展でありながら、カプコンの刀の柄の部分を模したデバイスを2個持って遊ぶアクションゲーム「進撃の巨人 TEAM BATTLE」と、非接触型モーションセンサーを使って魔法使いやエスパーのキャラクターを操作するバイキングの新作「マジシャンズデッド」もかなりの注目を集めていた。前者は現在人気のアニメを使用した作品であり、後者はセンサー部分に手をかざすなどして操作する新しい遊び方を取り入れたことが、来場者たちの興味を引く大きな要因となっていたようだ。

 ビデオゲーム系以外の出展タイトルでは、タイトーの「リアル脱出ゲームセンター ポータブル」が、ビジネスデイの日中の段階で約45分待ちとなっていた。本作は場内に隠された謎を推理したり解き明かしながら制限時間内に脱出できるかどうかを競うアトラクションで、ゲームセンターや各種イベント施設などでも容易に設置できるのが特徴である。またプライズ(景品)の展示コーナーには、「UFOキャッチャー」などのプライズゲーム用に使用する各種景品として、「ねこあつめ」「刀剣乱舞-ONLINE-」「あんさんぶるスターズ!」など、携帯・スマートフォン用ゲームで人気を集めたキャラクターをあしらったグッズ類が非常に目立っていたのも、今年の「JAEPO」のトレンドとなっていた。

 キッズ(低年齢層向け)用ゲームで独自のアイデアを盛り込んでいたのが、セガ・インタラクティブの「らくがきカードバトル 撃墜王」という作品だ。本作は飛行機などの絵がプリントされたカードか無地のカードを購入後、カードに描いたぬり絵や機体の絵を読み込ませると画面内に自分がデザインした機体が登場する。自分だけのオリジナル機体を動かして敵機を撃ったり、塗った色によって性能が変化するところが本作ならではの魅力となっている。

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各社の音楽ゲームコーナーは総じて人気。写真はカプコンブースの「サイタスオメガ」

【電子マネー決済システムを各社が相次いで出展】

 新作ゲームの発表とは別に、今年のショー会場で特に目についたのは、SuicaやPASMOなどの交通系電子マネーを使用してゲームが遊べる決済システムが数社から出展されていたことであった。その先駆けとなったのは業界大手のタイトーで、昨年10月に交通系電子マネーを利用できる決済システムを同社の直営店に順次導入することを発表し、現在も対象店舗を拡大している。同社ブースにはその電子マネー決済システムに加え、おそらく業界初となるであろう、電子マネーの課金によって可動するアームの本数が増えるプライズ(景品)ゲームも出展されていた。

 また、コナミは以前からPASELI(パセリ)と呼ばれる同社のゲーム・サービスに使用できる独自の電子マネーシステムを実用化しているが、今回のショーではPASELIに加え交通系電子マネーにも対応した、一般の商業施設で使えるマルチ電子決済システムを出展していた。ゲームのユーザーに対する利便性を高めるだけでなく、ゲームセンター以外の商業施設を新たなマーケットとして取り込む狙いもあるようだ。

 ほかにも、Suicaなどに対応した電子マネー決済システムは加賀電子のブースなどでも出展され、さらにコナミとセガはJAEPO2016の開催当日に合わせて共同電子マネーインフラの整備に合意し、今夏を目処に共同インフラの提供を目指すとも発表した。過去数十年間にわたり、ゲームセンターは硬貨をゲーム機に直接投入して遊ぶコインオペレーション方式で長らく運営を続けてきたが、2016年はその常識が打ち破られた年として、もしかしたら後世にまで語り継がれることになるのかもしれない。

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今年は交通系電子マネー決済システムの出展が相次いだ(※加賀電子ブースにて撮影)

【次回から「闘会議」との合同開催が決定。新たな時代の幕開けとなるか】

 開会式において、JAMMA(一般社団法人日本アミューズメントマシン協会)の里見治会長から、次回の「ジャパン アミューズメント エキスポ」はドワンゴ主催ゲームイベント、「闘会議」と合同開催するという重大な発表があったのも今年の大きなトピックだ。当日中には次回以降の具体的な開催案の説明はなかったが、里美氏と登壇した「闘会議」ゼネラルマネージャーの浜村弘一氏によると、続報は「ニコニコ動画」内の番組「闘会議TV」で発表する予定であると説明していた。

 「闘会議」は、日本最大級のユーザー参加型を標榜するゲームイベントで、ドワンゴによると今年1月に開催された「闘会議2016」の会場への来場者数は4万7588人で、ネット来場者数は687万8,290人を記録した。会場内には動画配信サイト「ニコニコ動画」で人気を集めるゲーム実況者たちが出演する「ゲーム実況ステージ」や「ゲーム大会ステージ」をはじめ、協賛各社による新旧さまざまなゲームの体験コーナーなどを設置しているのがその特徴である。

 主催者発表によると、「JAEPO2016」の入場者数は2日間合計で1万7053人で、昨年度の20,604を大幅に下回った。初日のビジネスデイこそ入場者数はほぼ同じ(※2016年は7359人、2015年は7485人)だったものの、2日目の一般公開日は2015年が1万3119人だったのに対して今回は9694人であった。一般のゲームファンの足がこれだけ遠のいている以上は、現行の運営方法を続けるだけでは次回以降もさらに来場者が減ってしまう恐れがあるだろう。

 そこでテコ入れを図るべく登場したのが、今がまさに旬のメディアである「ニコニコ動画」であり、ゲームイベントである「闘会議」というわけだ。なお「闘会議2016」の来場者数は、前回の「闘会議2015」の3万5786人から1万人以上も増加し、同じくネット来場者数も前回の574万6,338人から実に100万人以上もアップしている。正確なデータが公表されていないため客観的な比較はできないが、「闘会議」の会場は「JAEPO」に比べて若いユーザーや女性客がかなり多く見受けられるのも大きな特徴で、「JAEPO」とはまさに対照的だ。

 「アミューズメント産業界の実態報告書」によると、2006年をピークにアーケードゲームの市場規模は年々減少し続けている。市場規模は2013年の調査ではピーク時の約30パーセントも減少し、ゲームセンターの店舗数も10年前に比べて約9千軒も減ってしまった。ゲームセンターの減少に加え、今では携帯やスマートフォンで無料で遊べるゲームが普及したこともあり、ゲームセンターはゲーム好きの間でも身近な娯楽とは必ずしも言えない時代となっている。新作ゲームのリリースが減ったこともあり、当然ながら「JAEPO」の開催規模も徐々に縮小しており、主催者発表によれば出展社数は前回が42社だったのに対して今年は37社に減っている。市場回復のためには「JAEPO」来場者数の増加だけでなく、業界が総力を結集して新たな対策を実行することが、もはやまったなしの状況にあると言えるだろう。

 ゲーム実況やプレイ動画が日々投稿され、とりわけ若いゲームファンから大きな支持を得ている「ニコニコ動画」、およびゲームの祭典を標榜する「闘会議」との合同開催を決めた「JAEPO」。これを機に新たなアーケードゲームの消費文化が生まれるのか、そして電子マネー決済導入によるオペレーション改革などによって景気が好転するきっかけにもつながるのか。今後の続報に注目したい。

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開会式で次回「JAEPO」は「闘会議」との合同開催になると発表。今後の続報が待たれる

(※写真左から順に:「JAEPO2016」相木伸一郎実行委員長、里見治JAMMA会長、浜村弘一「闘会議」ゼネラルプロデューサー)

関連リンク

●ジャパンアミューズメントエキスポ2016

http://www.jaepo.jp/top.html