ユーザーインターフェース技術に関する世界最高峰の国際会議の一つ、The ACM Symposium on User Interface Software and Technology (UIST) 2013が、2013年10月8日から11日にかけてスコットランドのセントアンドリュースで行われた。
会議は口頭登壇発表(Paperセッション)と実機を展示するデモ発表(Demo/Posterセッション)の形式で構成されるが、今回は発表された研究の中でBest Paperなどのアワードに選ばれたものを中心に紹介したい。
まず、Hasso Plattner InstituteのChristian Holz氏らの開発した「Fiberio」は指紋認証が可能なテーブルトップディスプレイ。このシステムは、光ファイバーのアレイが埋め込まれたスクリーンと高解像度なカメラを用いることで、通常のタッチディスプレイのように指で触れた位置が分かるのみならず、指紋を画像処理で認識することで「誰が」触れたのかを入力できる。共有のタッチディスプレイ上での個人情報の管理や、ユーザーの認証に役立つ提案である。同じくBest Paperに選ばれた筑波大学の大野誠氏らの「Touch & Active」は、振動子とマイクのモジュールを物体に取り付けて物体を把持する手指の姿勢や把持する力を認識するセンサ技術。たとえばレゴのようなブロックにモジュールを取り付けることで、ブロック表面をテンキーのようなボタンに見立ててデジタル楽器のインターフェースにしたり、ブロックの組み合わせに応じてフィードバックを返すなど多様なインタラクションが可能になる。身近な素材や身体をインターフェースにして直感的なインタラクションを可能にする取り組みは、今後の一つの流れと見ることもできそうだ。
デモの部門で人気を博し、Best Demoを受賞したのがDisney ResearchのM. Emre Karagozler氏らによる「Paper Generators」。これは、既に動画サイト等でも公開され、インターネット上でも話題になっているが、紙やプラスティックの表面を指でタップするだけで電流を発生させ、LEDを光らせたりセンサやアクチュエータを駆動するという研究である。発電自体をユーザのインタラクションの過程に組み込むという発想が、新しい応用を生んだ。
この他、Human Computer Interaction研究分野を長く牽引してきた東京大学/SONY CSLの暦本純一氏らの研究がLasting Impact Awardを受賞するなど、日本勢の活躍も目立った会議であった。近い将来、これらの先駆的・萌芽的技術はコンテンツ分野にも広まり、全く新しい表現や体験へとつながることだろう。今後の展開に期待したい。
ACM UIST2013