フランスで、女性マンガ家を対象とした「アルテミシア賞」のノミネート作品リストが公表されている。対象作は以下のとおり。
・MAMBO de Claire Braud . L’Association
・IDA, CANDEUR ET ABOMINATION (t. 2) de Chloé Cruchaudet, Delcourt
・FABLES NAUTIQUES de Marine Blandin, Delcourt
・SOUS L’ENTONNOIR de Sybilline et Natacha Sicaud, Delcourt
・CANOPÉE de Karine Bernadou, Atrabile
・LES SAUVAGES de Lucie Lomova, Actes Sud - L’An 2
・VERS LA SORTIE de Joyce Farmer, Actes Sud - L’An 2
・LA PUTAIN P JETTE LE GANT de Anke Feuchtenberger & Katrin de Vries, FRMK
・TU MOURAS MOINS BÊTE de Marion Montaigne, Ankama
・L’HOMME EN PIÈCES de Marion Fayolle, Michel Lagarde
・COMMENT COMPRENDRE ISRAËL EN JOURS OU MOINS de Sarah Glidden, Steinkis
この賞は今年で5回目をむかえた。ひとりあるいは複数の女性によって作られた単行本を対象としており、すでに有名な女性作家ではなく、デビューして間もない、これからの作家に対して贈られるという。
フランスのマンガ作家に女性が少ないことはしばしば指摘されるが、『ペルセポリス』(訳:園田恵子訳、バジリコ、2005年)、『刺繍 イラン女性が語る恋愛と結婚』(監訳:山岸智子、訳:大野朗子、明石書店、2006年)などが日本でも翻訳されているマルジャン・サトラピなど、以前よりは女性作家の活躍を目にすることが多くなっている。ただ、全体としてはまだまだ少ない。その意味で、女性作家の活動を後押しし、注目を集めるきっかけとなるこのような賞はとても意義のあることだと思われる。
審査員のひとりであるシャンタル・モンテリエ氏(Chantal Montellier)は、今よりさらに女性作家が少なかった時代から活躍している作家。68年のパリ五月革命は、フランスの文化にさまざまな変革をもたらした。マンガ業界でも、それまでのマンガとは一線を画した大人マンガ(BD Adult)が登場する。メビウス氏らが活躍したSFマンガ雑誌「メタル・ユルラン」の創刊(1975年)は、その象徴のひとつとしてあげられるだろう。
「メタル・ユルラン」を出していたユマノイド・アソシエ社で、女性たちが女性たちのためにつくったのが、アメリカのアンダーグラウンド・コミックス(たとえば「Wimmen’s Comix」)と傾向の似た雑誌「Ah ! Nana」(1976年創刊)だった。モンテリエ氏も参加していたこの雑誌は、9号までと短命に終わったが、フランスの女性マンガ史を考えるうえできわめて重要な雑誌だ。モンテリエ氏のほかにも、フロランス・セスタック氏(Florence Cestac)やニコル・クラヴルー氏(Nicole Claveloux)、イタリア人のチェチリア・カプアーナ氏(Cecilia Capuana)、アメリカ人のトリナ・ロビンス氏(Trina Robbins)などが寄稿している。
最近の女性作家への注目は、この時代以来、ひさしぶりの出来事だと言えるだろう。「アルテミシア賞」を入り口に、女性作家というくくりだけでは語りきれない、さまざまな作品世界を楽しんでみたい。賞の発表は2012年1月9日。
「アルテミシア賞」の歴代受賞作品
2011年 TROP N'EST PAS ASSEZ d’Ulli Lust, Cà & Là
2010年 L’ÎLE AU POULIAILLER (t. 1) de Laureline Mattiussi, Glénat
2009年 ESTHÉTIQUE ET FILATURES de Lisa Mandel et Tanxxx, KSTR
2008年 NOS ÂMES SAUVAGES de Johanna Schipper, Futuropolis
「アルテミシア賞」の公式ブログ
http://associationartemisia.blogspot.com/
「アルテミシア賞」のプレスリリース
http://bdethightech.blogs.lavoixdunord.fr/media/02/01/902575305.pdf