概要
マンガ翻訳家志望者を育成し、活躍の場を増やすこと、世界のより広い層に日本のマンガ文化を発信する事を目的としている。文化庁及びデジタルコミック協議会(デジコミ協)が主催となり、翻訳コンテスト運営事務局を電通、公式ホームページ制作・運営を株式会社ディー・エヌ・エーの100%子会社の米国法人・MyAnimeListが担当する。マンガ翻訳コンテストでは、課題作の翻訳を応募し、ファイナリストの発表・受賞者決定ののち、授賞式・シンポジウムを行う。
本プロジェクトのプロモーション活動として、デジコミ協加盟社への周知や国内のマンガ/翻訳関連施設や学校への告知、SNSでの告知などを行い、また、課題作品にちなんだ日本文化紹介の動画を制作し、応募者以外も楽しむことができ、日本文化に触れてもらうためのコンテンツを用意するなど、特にホームページ上のコンテンツなどを工夫する。
中間報告
報告者:株式会社集英社 ライツ事業部海外事業課 課長代理 関谷博
今回の対象作品は『ハチ参る』『であいもん』『ニューヨーク・ニューヨーク』の3作品で、応募件数は249件と、今回も過去最高を記録した昨年並みの多さとなった。
問題点としては、「デジタルコミック協議会」は任意団体のため、協議会全体の事業として独自予算を使うことに限界があり、加盟各社が独自にプロモーションすることも難しいことが挙げられた。デジコミ協以外の団体との連携、協賛、協力してくれる機関や企業を国内外問わず広げて、対象作品以外にも多くの作品を広めていくことが重要となってくる。
関谷博
最終報告
報告者:株式会社講談社 ライツ・メディアビジネス局 国際ライツ事業部 森本達也
第6回マンガ翻訳コンテストは、早めに開催・対象作品の告知を行ない、海外に向けては、「New York Comic Con」や翻訳学校などにチラシを配布した。ウェブサイト内では、課題作品『であいもん』に登場する和菓子を再現する動画を制作・公開し、この動画は約3カ月で約5,000回再生された。また、海外のマンガ編集者や過去の翻訳コンテストの受賞者から、応援メッセージの動画を3本アップした。今回制作した動画は、過去のものより再生回数が2倍ほど多かった。結果、ウェブサイトへのアクセス数は昨年度よりも大幅に増え、応募件数も去年に続き過去最大規模となった。
第6回マンガ翻訳コンテストの結果は次の通りである。
応募総数
ハチ参る(遠藤淑子/秋水社):101件
であいもん(浅野りん/KADOKAWA):91件
ニューヨーク・ニューヨーク(羅川真里茂/白泉社):57件
合計:249件
大賞(1作品)
『ニューヨーク・ニューヨーク』
Preston Johnson-Chonkar(プレストン・ジョンソン・チョンカル)(米国)
作品賞(2作品)
『ハチ参る』
Stephen Kohler(スティーブン・コーラー)(米国)
『であいもん』
Cyrus Kwong(サイラス・クォン)(マレーシア)
授賞式では、各受賞者に賞状と目録が渡され、大賞受賞者のPreston Johenson-Chonkarには、作家の羅川真里茂からのイラスト入り直筆サインとメッセージが渡された。その後、審査員からの講評で、目立った翻訳の落とし穴やアドバイスなどを発表した。
授賞式の後、モデレーターに吉羽治(講談社)、パネリストにフランスの出版社KurokawaのGregoire Hellot(グレゴアール・エロ)、アメリカの出版社ダークホース社のMichael Gombos(マイケル・ガンボス)、前「週刊少年ジャンプ」(集英社)編集長の瓶子吉久(へいしよしひさ)を迎えてシンポジウムが開催された。後半のディスカッションでは、今後海外でマンガが読まれるためにはどのような展開が必要なのか、白熱した議論が飛び交った。例年、会場参加者は業界・関係者も多く、一般参加者は少ない傾向にあるため、一般参加者により広くリーチすることが今後の課題である。
前回は応募をアマチュアのみにし、学生賞を設けるなどの試みをしたが、「翻訳者はプロ、アマの概念が難しい」などの意見もあり、今回はプロ・アマを問わず募集した。結果、応募数も前回並みを維持した上、レベルも前回よりアップした。最終候補作の中にもレベルの高い翻訳が多く、3名の受賞者の活躍が期待されるとともに、受賞者以外の応募者にも翻訳者としての道が開かれるよう、サポートを検討していきたい。今後も、より多くのマンガ翻訳者を輩出し、日本発のコンテンツであるマンガをもっとアピールしていく必要性がある。「マンガ翻訳コンテスト」のさらなるブラッシュアップとともに、国内外の出版社、配信事業者だけでなく、行政や諸機関を含めて協力しあい、マンガの魅力を日本から世界へ広めていくことが課題である。
森本達也
※敬称略