「第21回文化庁メディア芸術祭 受賞作品展」が6月13日(水)から、国立新美術館にて開催されている。12日(火)には受賞作家も多数駆けつけ、報道関係者に向けての内覧会が行われた。その様子を踏まえて、本展の見どころをレポートする。

会場はアート部門、マンガ部門、アニメーション部門、エンターテインメント部門の順に作品が展示されており、中央は功労賞受賞者の功績が紹介されている

平成9年度から続く「文化庁メディア芸術祭」はアート、エンターテインメント、アニメーション、マンガの4部門に分けて世界中から作品を公募し、優秀作品を顕彰・展示する、文化庁主催のメディア芸術総合フェスティバル。第21回では、4部門合わせて世界98カ国・地域から4,192作品の応募があった。
本展は、厳正な審査で選ばれたメディア芸術作品の数々を、まとめて鑑賞、体験できる機会となっている。

アート部門

アート部門には、さまざまな視点から世界の見方を再考する作品が出揃った。
会場に入ってすぐ目に飛び込むのは、アート部門大賞のHaythem ZAKARIA『Interstices / Opus I – Opus II』だ。大きな壁面の表側は作家の母国チュニジアの砂漠が広がる静的な『Opus I』、裏側は海の風景を捉えた動的な『Opus II』の映像が映し出されている。モノクロームの風景の中で四角や直線といった図形が重ねられ、風や波音の自然音が断続的に響く映像世界に、鑑賞者は引き込まれることになる。
それから、優秀賞の折笠 良『水準原点』、DAI Furen『Language Producing Factory』と文字をテーマにした作品が続き、壁に囲われた一角は、菅野 創/やんツー『アバターズ』の展示エリアだ。『アバターズ』は彫像、自動車、観葉植物といったオブジェクトに、カメラ、マイク、モーター、小型コンピュータなどが組み込まれている。鑑賞者はウェブブラウザからログインすることで会場の各オブジェクトを「アバター」として操作する。また、特徴的なのは同サイトからログインすれば国立新美術館の会場の様子を世界中のどこからでも見ることができることだ。つまり、『アバターズ』の作品を会場で体験している鑑賞者はログインしている誰かから見られていることになる。現代社会における見ること/視られることの曖昧な関係を暗示した作品だ。しかし、展示エリアの入口にはサングラスや仮面が用意されているので、鑑賞者の匿名性は確保できるのでご安心を。
同じく優秀賞の畒見 達夫/ダニエル・ビシグ『進化する恋人たちの社会における高速伝記』は、シミュレータ内の仮想空間で、男性、女性、彼らの子ども、そして「もの」の個体が数千も存在し、それらの人生ドラマを高速で展開する作品だ。各個体の誕生、恋愛、離別、死といった出来事は画面に次々現れるとともに音声で読み上げられる。
そして新人賞のYANO『The Dither is Naked』、会田 寅次郎『I’m In The Computer Memory!』と実際に操作してデジタルの世界を可視化する作品が続き、最後は、アート作品を見る鑑賞者が十数秒という短い間しか集中できないことを皮肉った、新人賞のGary SETZER『Panderer (Seventeen Seconds)』で締めくくられる。

アート部門大賞 Haythem ZAKARIA『Interstices / Opus I – Opus II』
© Haythem Zakaria
アート部門優秀賞 折笠 良『水準原点』
© Ryo ORIKASA
アート部門優秀賞 DAI Furen『Language Producing Factory』
© Furen Dai
アート部門優秀賞 菅野 創/やんツー『アバターズ』。オブジェクトにはカメラやマイクなどが取り付けられている
©︎ Commissioned by Yamaguchi Center for Arts and Media [YCAM] 2017 / Co-developed with YCAM InterLab In collaboration with Yushin Suzuki and Takanobu Inafuku / Photo by Kazuomi Furuya Courtesy of Yamaguchi Center for Arts and Media [YCAM]
展示協力:山口情報芸術センター[YCAM]、多摩美術大学彫刻学科、株式会社GOOD
アート部門優秀賞 畒見 達夫/ダニエル・ビシグ『進化する恋人たちの社会における高速伝記』
© 2017 Tatsuo Unemi and Daniel Bisig
アート部門新人賞 YANO『The Dither is Naked』
© 2017 YANO
アート部門新人賞 会田 寅次郎『I’m In The Computer Memory!』
© 2018 Torajiro AIDA
アート部門新人賞 『Panderer (Seventeen Seconds)』のGary SETZER。作中に登場する男性は作家本人
© 2016 Gary Setzer.

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(作品情報)
第21回文化庁メディア芸術祭 受賞作品展
会期:2018年6月13日(水)~6月24日(日)
会場:国立新美術館、TOHOシネマズ 六本木ヒルズ、インターナショナル・デザイン・リエゾンセンター、スーパー・デラックス、表参道ヒルズ、ルミネ新宿 他
入場料:無料
主催:第21回文化庁メディア芸術祭実行委員会
http://festival.j-mediaarts.jp