概要

本事業はメディアアート分野に関連する資料の調査や関係者のヒアリングを行うことで、作品や催事などに関するデータや資料などの状況について把握することを目的とする。同時にメディアアート分野に関する関係者自身の考え、データの採録範囲やデータベースの活用、分野内・分野間の連携などについて調査し、連携を促進するような関係構築へ向けた準備を行う。実施体制はCommunity DesignCouncilを中心に、株式会社とお浅、有限会社フルティガで調査・データ作成を行い、関口敦仁(愛知県立芸術大学)、畠中実(NTT インターコミュニケーションセンター[ICC])両氏に事業助言の協力を仰いだ。8〜9月にかけてヒアリング対象者、調査対象催事などの事前調査を行い、以降調査を進め、12月頃から資料目録リストの作成を進める。

中間報告会レポート

報告者:特定非営利活動法人 Community Design Council 代表理事 野間穰

現在、名古屋国際ビエンナーレなどに関する資料5点を調査中で、ICC初期の展示資料のデータ化を検討している。ヒアリング対象者に関しては、メディアアート制作者に限らずエンターテインメント関係者や周辺の有識者、技術者なども対象とし、当初計画の13名以上20名程度を目標に実施を予定している。中間報告会の時点では、畠中実(ICCキュレーター)、八谷和彦(作家、PetWORKs代表)、中ザワヒデキ(作家)、谷口暁彦(作家)の計4名のヒアリングを終えた。作家本人へのヒアリングでは、自作のデータや資料を公開する可能性については、各氏で意見が分かれた。
メディアアートはチームプロジェクトでの制作や、作家の手を離れインストーラーなどの技術者が制作するケースも多く、作品そのものが時代や展示場所に合わせて変わっていく性質もあることから、現在公開されているメディア芸術データベース(開発版)では作家と作品によらない催事をベースとしたデータベースとなっている。作家や作品にフォーカスした調査をどのようにデータベースに落とし込んでいくか、検討している。

野間穰

最終報告会レポート

報告者:特定非営利活動法人 Community Design Council 代表理事 野間穰

個人に対するヒアリング調査は、メディアアート作家に限らずエンターテインメント関係者や周辺の有識者、技術者ら14名を対象に実施した。対象者への問いには、保存されている作品の有無やその状態、作品・催事などに関する情報の内容や利活用、作品に関する二次資料の有無およびデジタル化・公開などの項目を設けた。また、メディア芸術データベースへの意見やメディア芸術、メディアアートについて、関係者や業界間の連携についても意見をいただいた。データベースへの作品データ収録については一様に行いたいという意向であったが、自身の作品資料の保有、作品データなどについては整理し保有している方から、ほぼ持たれていない方までさまざまであり、美術館などからの提供を期待する声もあった。
また、メディアアート関連施設関係者へのヒアリング調査では、NTTインターコミュニケーション・センター[ICC]、山口情報芸術センター[YCAM]、せんだいメディアテークの3館に実施した。どの館も展示、イベントの情報はウェブサイトで公開している。展示、作品などの資料はいずれも残っているが各担当者の管理しているものが多かった。メディアテークについては質の高い保管庫があり、ある程度整理された状態で保存されている。ICCでは書籍、カタログなどの資料を多く所蔵されていることを確認し、現状では一般公開されていないが、メディア芸術データベースのデータ作成などの利用に関する協力の可能性も確認した。YCAMについてはアーキビストが1名配置されているなど、アーカイブ構築を考えている施設もあるが、現状では手が回っていない状況だった。
ヒアリングの結果としてデータベースの必要性の認識は確認できメディア芸術データベースについても周知できたが、継続的な運用の為には関連組織などを中心に運用スキームの構築が必要と考えられる。
資料調査では、インターネット上でも情報の少ない催事、作品、作家などの資料、制作関連の資料などを調査し、一部を実際に入手してデータの試作も行った。カタログ資料では、「名古屋国際ビエンナーレ・ARTEC」、「キヤノンアートラボ」、「スタジオ200」、三上晴子の資料を入手および確認した。80〜90年代の催事などは情報が少ないものも多く、カタログを入手しての調査が有用であるが、残念ながらカタログにも作家名と作品名、展示期間の情報のみの場合もあった。また、制作資料においては多様な情報が確認されたが、権利処理などの問題からすぐに公開できるものではなかった。今後、作家、インストーラー、関連施設、制作会などの協力のもとでデータ作成を行う枠組みをつくり、集合知による充実したデータがつくられるようにしていきたい。
今年度の成果物として、名古屋国際ビエンナーレARTECの4回の催事に関する全イベント、作品、文献データを作成、ICCに関しては開館以降のすべての催事・作品データを作成できた。また情報の少ない60年代70年代のインターメディアに詳しい有識者にインタビューも行った。
今後はYCAMやライゾマティクスの協力によるデータ作成を行うと同時に、継続的な運用の為の仕組みの構築を行っていきたい。

報告書(PDF 約2.3MB)

※敬称略