概要

本事業は、平成27年度・28年度に京都精華大学、平成29年度に明治大学で実施した準備事業を継続し、(1)未整理蔵書整理及び目録整備(2)複本の国内外連携機関への移送(3)マンガの史資料のアーキビストの育成、の3つを軸に、国内外の連携機関による、マンガ単行本等資料の連携型アーカイブの構築・人材育成環境の整備に向けた準備事業を行う。
(1)は明治大学各施設に保管されている未整理蔵書15,000冊を整理し、移送数は10,000冊を目標とする。(2)は熊本県内の自治体(マンガ関連施設)、熊本市、八代市などの国内連携機関、中国、ブラジル、コロンビア、アルゼンチンの海外連携機関へパッケージした複本を移送する。(3)は明治大学未整理蔵書の複本を熊本・森野共同倉庫へ移送し、分野別、年代別などのパッケージ編成できるスキルを有する人材育成を、昨年度事業の経験者及び特定非営利活動法人熊本マンガミュージアムプロジェクト(クママン)の知見・経験を最大限、活用して行う。

中間報告会レポート

報告者:明治大学 図書館総務事務室 柴尾晋

正本登録作業は順調に進んでいるが、複本の移送については自然災害等の影響から各種公共交通機関の混乱があり、予算内での代替移送手段を探しつつ作業を行った。海外に関しては、今回初めてアルゼンチンが連携先に加わり、北京大学漫画図書館閲覧室では移送した複本を現地の日本文化に強く興味を持つ学生たちに読んでもらうなど、連携がより深まった。アーキビストの育成では、中国からの留学生を含む熊本大学大学院生3人を人材育成対象とした。学生からの意見や提案をマニュアルに盛り込み、海外の連携先ではそれをベースに現地語版などを別に作成して対応していく方針である。

柴尾晋

最終報告会レポート

報告者:明治大学 図書館総務事務室 柴尾晋

明治大学が所蔵する未整理資料の正本整理業務を実施し、明治大学米沢嘉博記念図書館の所蔵資料データ作成に関する仕様書(マニュアル)を作成した。複本は明治大学から熊本・森野共同倉庫へ約11,000点移送され、国内連携先に計3,166冊、海外連携先に計3,038冊を移送した。国内連携先は、八代マンガミュージアム(八代市)、高森町政策推進課(阿蘇郡高森町)、橋本二郎記念 たまな創生館(玉名市)、湯前まんが図書館(球磨郡湯前町)、上天草マンガカフェ準備室(上天草市)の5館。海外連携先は日伯文化連盟、リオブランコ大学、ブラジル日本文化福祉協会(以上、ブラジル)、EAFIT大学(コロンビア)、日亜学院(アルゼンチン)、北京大学 漫画図書館閲覧室(中国)の6館である。国内連携先への複本寄贈は今年度が初の試みで、複本移送先をコミュニケーションが取れている熊本県内機関に限定したこともあり、県内の複数メディアに取り上げられるなど注目された。複本をパッケージ化する際、アルゼンチンにはサッカーマンガ、中国には水滸伝や三国志を題材にしたマンガなど、寄贈先の属性に沿った作品を選書した。国内連携先へも現地出身のマンガ家の作品のほか、上天草マンガカフェ準備室には海や離島、猫、キリスト教といったテーマの複本が移送された。移送された複本は本棚に並べられるほか、コロンビア・EAFIT大学ではマンガに関するシンポジウムが開催されるなど、閲覧以外の利活用もみられた。
また、アーキビスト育成のため、合志マンガミュージアムの開設準備経験者でもある熊本大学大学院生3名を雇用し、前述の作業に当たってもらった。彼らは「思案ノート」にて情報を共有しながら進めていった。彼らのなかには、北京大学向けのパッケージ化に大活躍した中国人留学生や、合志マンガミュージアムへの就職が決定した学生もおり、アーキビストとして学んだことを今後に活かせる期待が持てた。
課題としては、連携先へ寄贈するにふさわしい作品を選別するため、資料の経年劣化やタイトル、内容などを整理するためのマニュアル作成や、未整理資料を効率的かつ効果的に整理するための書架の充実と広大なスペースの確保が挙げられる。また、複本のさらなる利活用に向けて、国内外連携先とのより密なネットワーク化の推進、「戦略的」な連携と寄贈も重要となってくるだろう。人材育成に関しても、日本のマンガを含めたメディア芸術分野に高い関心と深い愛情を持つ幅広い人材に対し、資料と保管機関を連動させた人材育成を図る必要がある。

実施報告書(PDF 約2.1MB)

※敬称略