CMにアニメーションは付き物だ。酒造メーカーの黄桜がマンガ家の清水崑を起用し始めた、かっぱのキャラクターが動くアニメCMは、1959年から長く続いたアニメCMの代表格。1978年より放送されたヤクルト「ミルミル」のCMは、粘土のキャラクターが変形していくコマ撮りのクレイアニメで目を引いた。そうしたトラディショナルなアニメCMとは別に、テレビで番組として見る商業アニメ作品と似たテイストの絵柄やキャラクターが使われたアニメCMを、ウェブでの展開も含めてよく見かけるようになった。最近では、日清食品の「カップヌードル」で、マンガやアニメが人気の『ONE PIECE』とコラボレーションしたアニメCMがつくられ、インドネシアでも日本のアニメと同じテイストのアニメCMが展開されて話題になった。2000年代以降から最近まで、どういったアニメCMの展開があったのかを振り返ってみた。

『FREEDOM』作中カット

カップヌードル「HUNGRY DAYS」シリーズ

「ハングリー」という言葉と、カップヌードルが強く結びついたのは、1992年に放送されたテレビCMがきっかけだった。原始人の集団が画面を行き来したり、マンモスが加わったりする映像もまた、人形を動かしながらコマ撮りしたアニメCMだったが、最近ではこれが、マンガのようなキャラクターによる美麗な映像と結びついている。

HUNGRY DAYS アオハルかよ。」というキャッチコピーとともに、2019年から2020年にかけ展開されたカップヌードルのCMには、尾田栄一郎が1997年から描き続けるマンガ『ONE PIECE』の登場キャラクターたちが、もしも高校生だったらという設定で描かれたアニメが使われた。

「HUNGRY DAYS アオハルかよ。」シリーズ 『ONE PIECE』篇

キャラクターをデザインしたのは、マンガ家で『ツルモク独身寮』(1988~1991年)、『ショコラ』(1999~2003年)といった作品を生み出した窪之内英策。現代の高校生風に描かれたゾロやナミ、ルフィといった人気キャラクターたちが、学園を舞台に繰り広げる青春の一幕には、もとからの作品の知名度で引き付けられた人たちだけでなく、ストーリー性を持ったアニメとして見て惹かれた人たちもいたようだ。

この「HUNGRY DAYS アオハルかよ。」シリーズ、実は2018年6月から2019年3月にも展開されていた。青春=アオハルという呼び方も耳に残るが、やはり国民的ともいわれるキャラクターを現代の高校生風にアレンジし、短い青春ストーリーとして描いたことで注目を集めた。選ばれた作品は、『魔女の宅急便』(1989年)、『アルプスの少女ハイジ』(1974年)、『サザエさん』(1969年~)、4作目はオリジナルの世界観で、地球滅亡の危機に瀕した未来にあって動じず青春を謳歌する男子と女子の姿を描いてみせた。『ONE PIECE』篇と同じく窪之内がキャラクターデザイン、BUMP OF CHICKENが楽曲を手掛ける点も共通で、これの成功が『ONE PIECE』というモンスターコンテンツの登場を後押ししたとも言えそうだ。

「HUNGRY DAYS アオハルかよ。」シリーズ 『魔女の宅急便』篇

日清食品の担当者へのインタビューでは、「国民的キャラクターを現代のアニメーションで高校生として描いたこと。そして、“すべての青春をカップヌードルは応援していく”というシンプルなメッセージにしたこと」が、このシリーズが話題になった理由として挙げられている。

「アルプスの少女ハイジ」に関しては、2012年から家庭教師派遣のトライグループが、内容をコミカルにアレンジしたアニメCMのシリーズもあって、賛否を巻き起こしている。作品に思い入れのある世代には憤りもあるようだが、今も続いてつくられていて、商品名と関連付けて語られていることが浸透を裏付ける。

「HUNGRY DAYS アオハルかよ。」の『アルプスの少女ハイジ』篇にも賛否はあったが、青春という要素をつきつめ、見たことのなかったビジュアルで表現したことで受け入れられたと考えられる。どちらの手法が正しいということではなく、目的に沿った起用やアレンジを行う必要があるのだろう。

カップヌードルとテレビアニメのような絵柄のCMの関係は、「HUNGRY DAYS アオハルかよ。」からさらにさかのぼることができる。発売35周年を機に2006年から2008年にかけて展開されたアニメを使ったブランディングプロモーション「FREEDOM-PROJECT」だ。『AKIRA』(1982~1990年)の大友克洋を迎え、ヒットメーカーの宇多田ヒカルによる音楽が使われたことでも話題になったプロモーションでは、アニメCM『FREEDOM』シリーズを軸に、特別編を含む全7話のOVA作品も発売された。

制作は「機動戦士ガンダム」シリーズでおなじみのサンライズだが、こうした作品とは違い描写には3DCGが使われた。大友克洋監督の映画『スチームボーイ』(2004年)でCG制作の技術が蓄積していたからだ。大友克洋テイストのキャラクターが2Dライクのビジュアルで動く映像は、現在のセルルック3DCGアニメーションの先駆けと言えるものだった。森田修平監督は後に『九十九』(2012年)が米アカデミー賞短編アニメーション部門にノミネートされた。『FREEDOM』シリーズのスタッフのなかには『けものフレンズ』(2017年)で一躍名を上げたたつき監督(尾本達紀名義)もいた。次代のクリエイターを送り出し、3DCGによるアニメ制作のノウハウ蓄積にもつながったシリーズだったと言えるだろう。

新海誠監督とアニメCM

長く続くアニメCMのシリーズでは、大成建設による『地図に残る仕事』がある。世界各地の建設現場で働く人たちの心情を描いて、仕事にかける思いを浮かび上がらせるアニメCMで、『君の名は。』(2016年)が大ヒットして国民的なアニメ監督となった新海誠が手掛けている。

大成建設ウェブサイト「テレビCM」より

第2作の2011年「ボスポラス海峡トンネル」篇から2019年の「ミャンマー」篇まで、シリーズ5作が新海監督作品となる。どれも新海監督ならではの光景を切り取って美しく見せる技法と相まって、工事の現場に生き生きとした雰囲気をもたらしている。

新海監督が「2011年8月にトルコ・イスタンブールの建設現場を、9月に長野県上田市のある女子高校生(ハイジャンプ選手)を取材をさせていただきました」と、自身のオフィシャルサイトで語っているように(註1)、2011年5月公開の長編アニメ映画『星を追う子ども』からまだ間もない時期の作品だ。2002年に自主制作の短編アニメ『ほしのこえ』が評判となり、『雲のむこう、約束の場所』(2004年)、『秒速5センチメートル』(2007年)などを経て劇場長編で勝負に出るほどの存在にはなっていたが、今ほど広く名が知れたクリエイターというわけではなかった。

それでも、依頼し続けたことによって新海監督が訴求する世代に大成建設の事業やイメージは伝わった。『言の葉の庭』(2013年)を経て『君の名は。』、『天気の子』(2019年)と続くヒット作の連発で“国民的”という言葉がふさわしくなった今、大成建設の“投資”はとてつもない成功を見せたといえる。

ちなみに第1作となる2008年の「新ドーハ国際空港」篇も、ほかのCMと同様に新海監督が所属するコミックス・ウェーブ・フィルムの制作で、『雲のむこう、約束の場所』で新海監督と組み、最近は『泣きたい私は猫をかぶる』(2020年6月配信予定)などに参加の田澤潮が監督を務めている。テイストが似ているのも道理だ。

大成建設よりも早く、新海監督の才能に目を向けていたのが信濃毎日新聞社。実に2007年というキャリア早期にアニメCMを依頼している。老舗の新聞がアニメーションのCMというだけでも話題性は高いが、それが新鋭の新海監督だったことも意外性を誘った。新海監督の実家が長野県にあって、地元繋がりでの依頼だったのかもしれない。大成建設以後では、2013年に野村不動産グループが実施した「プラウドボックス感謝祭」のシアター映像として『だれかのまなざし』を制作。そして、2014年にZ会向けのアニメCM『クロスロード』を手掛けている。

2013年に『言の葉の庭』を公開した新海監督が、2016年公開の『君の名は。』のあいだにZ会とコラボレーションしてつくったのがこの『クロスロード』。地方から東京の大学への進学を目指す少女と、東京に暮らす少年が、同じZ会の講座で学ぶ光景を切り替えながら見せ、そして受験を経て合格発表で再会へと至る道を、新海監督ならではの鮮やかな色彩とリアルな光景のなかに描いた。キャラクターデザインや作画監督を担当した田中将賀とは、そのまま『君の名は。』『天気の子』で組むことからも明らかなとおり、新海監督のフィルモグラフィーでも重要な作品と言えるだろう。

新海誠監督『クロスロード』受験生応援ストーリー120秒Ver.|Z会

シリーズものとして長く展開されていく

大成建設と同じ、何年も続くシリーズものでは、ダンロップブランドのタイヤを製造している住友ゴム工業が、スタッドレスタイヤ「WINTER MAXX 02」のプロモーションとして展開している『ROAD TO YOU』もある。第1作は2017年10月公開の『ROAD TO YOU -君へと続く道-』。雪国に暮らすさまざまな人たちの仕事に勤しむ日常を描きつつ、その中で雪道を走る車がスタッドレスタイヤで安定しているシーンを一瞬だけ映して安心感を与える。決して目立たず、けれどもしっかりと印象づける手法だ。

短編アニメーション『 ROAD TO YOU -君へと続く道- 』 #キミミチ| ダンロップ

制作を手掛けたのはアンサースタジオ。『いいひと。』(1993~1998年)のマンガ家、高橋しんがキャラクター原案を手掛け、文化庁による平成23年度若手アニメーター等育成事業の「アニメミライ」参加作品『ぷかぷかジュジュ』(2012年)を監督した川又浩が監督を務めている。アンサースタジオは、新海監督の大成建設のシリーズや『言の葉の庭』に参加しており、テイストに重なりが感じられる。

以後、ダンロップでは2018年にサンライズが制作し、『ローゼンメイデン』(2004、2005~2006年)、『紅 kurenai』(2008年)、『機動戦士ガンダム サンダーボルト』(2015~2016、2017年)を監督した松尾衡が監督の『ROAD TO YOU -星降る丘の約束-』を、2019年には篠田利隆監督による『ROAD TO YOU -記憶に舞う粉雪-』を公開。こちらはイメージシーンに東京芸術大学大学院映像研究科アニメーション専攻の修了作品『モフモフィクション』(2018年)などを制作した今津良樹が参加している。一人のクリエイターに偏らず、テイストも変えながらブランドイメージを訴求する内容のものをつくり続けている。アニメのバリエーションを楽しみたい人には気になるシリーズと言えそうだ。

こちらも長く続くシリーズもので、スタジオが移り変わっているアニメCM。味噌のマルコメが「料亭の味」シリーズの販促を兼ねて2014年から展開しているもので、最新となる2020年1月公開の『料亭の味 液みそ いつまでも一緒に篇』まで8本がつくられている。

第1作『料亭の味 たっぷりお徳 母と息子篇』では、後に『ペンギン・ハイウェイ』(2018年)を手掛けるスタジオコロリドが、2011年の会社設立からそれほど間を置かず制作を担当。上京した息子が母親から送られた宅配便に入っていた「即席みそ汁『料亭の味 たっぷりお徳』」を食べて故郷を思い出すストーリーが見た人の気持ちをあたたかくさせた。

ネットニュースのハフポスト日本版がマルコメに取材した記事によれば、スタジオコロリドを選んだ理由を広報担当者は「細かな描写、タッチといった表現性が、今回描きたかったストーリーに合うのではないかと考えました」と話していた(註2)。

以後、第3作目までをスタジオコロリド、第4作はテレビCMやOPなどを制作するリバティアニメーションスタジオ、第5作と第6作は日本アニメーションが手掛けた。第7作はトムス・エンタテインメントなどが担当して、声に『この世界の片隅に』(2016年)で声優を務めたのんが出演。そして最新第8作は、ダンロップの『ROAD TO YOU -君へと続く道-』と同じくアンサースタジオが手掛けている。

スタジオコロリドの方も、日本マクドナルドのアニメCM『未来のワタシ篇』を手掛けた。アニメテイストの絵柄のポスターが店内にも貼られて目を引きつけたウェブCMは、CMディレクターとして活躍するロボットの伊藤衆人が監督を務め、2016年に第1弾、2017年に第2弾がつくられた。

キャラクターデザインと作画監督はスタジオコロリドの石館波子。『台風のノルダ』(2015年)、『ペンギン・ハイウェイ』といったコロリド作品に作画監督で参加し、最新の『泣きたい私は猫をかぶる』にも共同の作画監督として参加している。シンプルな線で明るい表情を持ったキャラクターを描いてマクドナルドで働くことへの親しみを感じさせるCMだった。

スタンダードな表現が求められる傾向

老舗のスタジオに目を移すと、日本アニメーションが手掛け、2015年末から公開された大同生命保険の創業者、広岡浅子を紹介するアニメCMだ。小石川三井家の息女として生まれ商家に嫁ぎ、明治期に女性ながら銀行や生命保険会社を設立して女傑と呼ばれ、日本女子大学の設立にも携わった広岡の活躍を描いている。「きっかけ」篇、「あきらめない」篇が制作された。『母をたずねて三千里』(1976年)、『赤毛のアン』(1979年)といった世界名作劇場に近いテイストの作品で、アニメーションディレクターはベテランの佐藤好春。原画に山下明彦、賀川愛、尾崎和孝といった凄腕がそろう。

企業CM『広岡浅子“きっかけ”』篇

その佐藤好春と日本アニメーションは、福岡の製パン会社フランソアのアニメCMも2007年から展開してきた。パン職人を目指す女の子カシスとアルルの出会いを描いたこの内容で、こちらも世界名作劇場そのままの雰囲気が漂い、懐かしさのなかに優しさを感じさせてくれる。

「天然素材」、だけ。 最先端篇(60秒)

スタジオジブリもアニメCMを手掛けている。ハウス食品による「おうちで食べよう。」シリーズで、2003年に夏バージョンとして「ままごと編」「おつかい編」「路地裏編」「宣伝カー編」「ままごと編30秒」が公開された。監督したのは宮崎駿。いわずとしれた世界的なアニメ監督で、『千と千尋の神隠し』(2001年)は2003年の米アカデミー賞長編アニメーション映画部門を受賞している。演出はジブリ作品に多く携わる百瀬義行で、作画はジブリで『借りぐらしのアリエッティ』(2010年)、『思い出のマーニー』(2014年)を監督し、独立してからは『メアリと魔女の花』(2017年)を手掛けた米林宏昌。さすがといえる丁寧さで日本の家族の姿を描いている。

スタジオジブリでは、2004年に百瀬演出の冬バージョン「ソリ遊び編」「道草編」「ソリ遊び編30秒」も制作した。もしかしたら2000年代に、テレビや映画で見るアニメがCMに使われるようになったきっかけが、国民的なアニメ会社となったスタジオジブリによるこのシリーズによる露払いがあったからかもしれない。

ここまでを振り返ると、表現がとがったもの、また、アクションやバイオレンスが特徴のものは少ないことがわかる。商品やサービス、企業をPRするうえで、ファミリー層や若者層に伝わりやすく、公衆の目に入るなかで違和感を覚えられない表現のものが選ばれる傾向にあるのだろう。『フランダースの犬』(1975年)、『赤毛のアン』(1979年)といった名作アニメで家庭に浸透した日本アニメーションや、『となりのトトロ』(1988年)、『千と千尋の神隠し』(2001年)などの人気から広い世代に受け入れられているスタジオジブリの絵柄がこれに当たる。新海監督やスタジオコロリドの作品は、ジブリ作品の経験者がスタッフにいたり、一般性を考えてテイストを取り入れたりするところがあって、受け入れられやすい印象がある。

伝えるのは商品だけではない

商品そのものではなく、大成建設の『地図に残る仕事』のように事業全体をイメージさせるアニメCMはほかにもまだある。日野自動車が2019年に東京モーターショー2019で公開した『あの日の心をとらえて』は、サンライズとコラボレーションしてつくった短編アニメ。『ラブライブ!』(2013、2014年)の京極尚彦監督を迎え、キャラクター原案は、『センコロール』(2009年)をほぼ一人でつくり上げた宇木敦哉が担当した。

山を望むいかにも田舎といった風景で少年が佇むバス停に、ベンチを透明なケースで包んだようなコミューターが登場して、少し未来が舞台なのだと気づかせる。そうした世界に暮らす少年と、転校していった少女の日々を描いたストーリーのなかに、コンビニや美容院が連結されたワゴンカー、宅配便を自動で部屋まで届けるシステム、幹線を走るバスにミニバスが横付けされ、別の場所へと乗り移った乗客を運んでくれるシステムなどが登場する。

アニメならではの馴染みやすさのなかに、クライアントの日野自動車が目指す未来の輸送ビジョンが混ざることで、そうした世界の訪れを期待してしまっている。そんな効果がありそうだ。

アニメ「あの日の心をとらえて」本篇 | 日野自動車

同じ自動車メーカーでは、トヨタ自動車も「TOYOTA都市交通システム Ha:mo」コンセプト映像として、2012年に『約束への道』というアニメを公開している。2009年にアニメ映画『マイマイ新子と千年の魔法』(2009年)を送り出した片渕須直監督が、次の映画作品として『この世界の片隅に』(2016年)を構想しつつ、制作には入っていなかった時期につくったアニメ映像だ。

内容は、トヨタ自動車から新交通システムで、コミューターをシェアリングする「Ha:mo」のコンセプトを紹介するもの。制作は後に『この世界の片隅に』も担当したMAPPA、音楽を『マイマイ新子と千年の魔法』と同じ村井秀清、キャラクター原案は『この世界の片隅に』でもキャラクターデザインなどを手掛けた浦谷千恵が担当。今となっては見る機会に乏しい作品だが、『この世界の片隅に』へと至る片渕監督のフィルモグラフィーを埋める1本といえるだろう。

その片渕監督が、『この世界の片隅に』以後に手掛けたのがオタフクソース『わたしの名はオオタフクコ~小さな幸せを、地球の幸せに。~』。こちらは、キャラクター原案をこうの史代、音楽はコトリンゴと『この世界の片隅に』のメンバーが再結集している。

2018年末に3作シリーズで公開。オタフクソースのおかめがオオタフクコとして平安の世から現代までをずっと暮らすなかで、さまざまな出来事に遭遇する。戦後の焼け跡から広島でのお好み焼きや経営、そして世界を渡り歩いてお好み焼きを食べさせ難民キャンプへとたどりつく。美味しいお好み焼きがどこでも食べられる世界を描いて、平和を祈るメッセージに変える。CMを通じてしっかりとメッセージを送ろうとするところが片渕監督らしい。

企業ではなく大学が、同じ若者に訴求したいという意図から、アニメをプロモーションに使うケースもあった。いわき明星大学(現在は医療創成大学)が2015年4月に開設を予定していた教養学部を紹介する「きんいろのカタツムリ」という特設サイトが、2014年7月にオープン。このなかで2編にわたって大学生活を紹介するアニメが展開された。

制作したのは「攻殻機動隊」シリーズ、「PSYCHO-PASS サイコパス」シリーズのProduction I.Gで、CM・映像ディレクターの及川謙一の企画コンテを基に、アニメーターの頂真司がキャラクターデザインを担当。どちらかといえばエッジの効いた作品が多いアイジーにあって、学生の日常が描かれる“異色”の映像となっていた。

Production I.Gでは続いて、2017年4月に新しく看護学部が創設されるのに合わせ、ショートアニメ『オハイアリイ~輝く日のために~』も制作した。フラダンスなどに勤しみながら看護という学業に向き合っていく女子学生の日々が描かれている。監督・絵コンテ・原画を「きんいろのカタツムリ」でも参加した頂真司が勤めている。

いわき明星大学PV2016 「Ohai Alii ~輝く日のために~」

京都学園大学(現京都先端科学大学)にも、大学のPRアニメがある。トランジスタ・スタジオが手掛けた3DCGによる2Dライクな作品。キャラクターデザインは賀茂川、監督は先述したカップヌードルのシリーズにも関わっている森江康太が担当している。

今後の可能性を感じさせるアニメCM

以上、さまざまな分野で2000年代、とりわけ2010年以降にアニメCMがつくられていることがわかった。効果もあったのだろう。『天気の子』を仕掛けた東宝の川村元気プロデューサーが、プロデュースを買って出たアニメCMもつくられた。ロッテによる『ロッテ×BUMP OF CHICKEN ベイビーアイラブユーだぜ』は、BUNP OF CHICKENの楽曲のPV的な要素も盛り込みつつ、少年と少女が出会い、町中でおかしが食べられダンスが繰り広げられる賑やかな映像となっている。

ロッテの「小梅」「コアラのマーチ」「ガーナ」といった製品がこれでもかと登場し、イメージ戦略とは正反対の宣伝色にあふれながら、実に楽しい映像に仕上がっている。監督は東映アニメーションに入り、25歳で『映画 ハートキャッチプリキュア! 花の都でファッションショー…ですか!?』(2010年)の監督を務めた松本理恵。ほかに『京騒戯画』(2013年)でシリーズディレクター、ボンズ制作のテレビアニメ『血海戦線』(2015年)で監督を務めた気鋭のクリエイターで、今後が楽しみな逸材だ。

ロッテ×BUMP OF CHICKEN ベイビーアイラブユーだぜ フルバージョン

ここまで見てきて、CMやプロモーション映像に商業アニメ作品で見るようなテイストのアニメ映像が広がっていることはわかった。1995年の『新世紀エヴァンゲリオン』放送を契機にしたアニメブームや、その後の深夜アニメ激増などを経験した世代が、年齢を重ねてアニメに抵抗感を抱かない土壌、アニメCMを通じて商品に親しみを抱く心理が、社会に広く育っていると言える。渋谷パルコの改装時に大友克洋の『AKIRA』が工事の壁を彩ったように、マンガやアニメがクールなポップカルチャーとして認知されていることも、CMやプロモーションにアニメが使われる背景にありそうだ。

ただ、萌えキャラがエロティック過ぎると批判される問題がたびたび起こるように、あらゆる絵柄が受け入れられる訳ではない。ファミリー層を狙う食品や、企業イメージをアピールしたいCMに、日本アニメーションや宮崎駿監督に代表されるスタジオジブリのテイストが採用され、相次ぎ映画をヒットさせ認知を得た新海誠監督が起用されるのには、一般層から忌避されたくないという理由があるのだろう。時代が移ってアニメに対する意識が変われば、絵柄もさまざまなアニメCMが登場してくるかもしれない。発表の場がテレビではなくウェブ中心なら、ターゲット層を絞って展開できるため、実験的な映像の採用、特定層にヒットするクリエイターの起用もありうる。話題になれば全世界規模で拡散されるウェブだけに、挑戦的なアニメCMの登場を期待したくなる。

実際、日本の外にもアニメCMは広がっている。2019年の秋頃、インドネシアで日本風のアニメが「ポカリスエット」のCMに使われていると評判になった。展開したのは大塚製薬のインドネシアの子会社、PT. Amerta Indah Otsuka。当初は制作スタッフが明らかにされていなかったが、マッドハウスやMAPPAで片渕監督の映画を担当した松尾亮一郎プロデューサーが立ち上げたCLAPが制作を手掛け、日本画家として活動する一方、『言の葉の庭』『君の名は。』などに美術方面で携わった四宮義俊が監督を務めたものとわかった。

TVC POCARI SWEAT – Bintang SMA

2020年6月から配信が始まったネスカフェ香港のアニメCMは、ジブリを経てスタジオコロリドで『台風のノルダ』(2015年)を監督し、2019年にFILMONYを立ち上げた新井陽次郎が監督してキャラクターデザインも担当。コロリド作品や、絵コンテを手がけたマクドナルド『未来のワタシ篇』などに近いテイストを感じる映像だ。

海外で日本のアニメを見て育った人たちが増え、違和感よりも好感を持って日本風のアニメCMを受け入れる土壌が広がっているのだろう。この20年、日本で進んだようなアニメCMの広がりが海外で進むかもしない。同時に、日本のアニメに学びつつ独自のテイストを入れた中国のアニメ映画『羅小黒戦記』(2019年)がヒットしたように、各国でオリジナリティを持ったアニメCMがつくられる可能性もある。動向から目が離せない。


(脚注)
*1
Other voices「大成建設 TV CM」
http://shinkaimakoto.jp/taisei

*2
ハフポスト「「泣ける」と評判のアニメCM マルコメ広報部に制作秘話を聞いてみた」(2014年4月18日掲載)
https://www.huffingtonpost.jp/scoopie-news/cm_3_b_5157753.html

※URLは2020年4月30日にリンクを確認済み