コンピュータグラフィクス(CG)とインタラクティブテクノロジーに関する世界最大規模の国際会議ACM SIGGRAPH 2013が2013年7月21日から25日にかけてアメリカ・アナハイムで開催された。
映画やゲーム産業への応用を中心に、精細で表現力の高い映像表現を追求するCG技術の発表は、今年もSIGGRAPHの華として注目を集めた。中でも今年は、新たな潮流として、3Dプリンタをはじめとするファブリケーションマシン(工作機器)と連動するソフトウェアやアルゴリズムの提案が目立った。例として、ニューヨーク大学の研究グループは、3Dプリンティング時に壊れやすい箇所や構造を指摘してくれるソフトウェアを開発。マサチューセッツ工科大学の研究グループは、複数の素材を用いる3Dプリンティングにおける直感的で効率的な処理に関する提案を行った。また、3Dプリンタやレーザーカッター、さらには独自の工作ツールを用いた最先端のものづくりを実際に体験できるワークショップも人気を博し、コンピュータ画面を飛び出して、実体を「つくる」ための技術が、SIGGRAPHにおける新たな軸となることを十分に予感させるものであった。
SIGGRAPHのもう一つの華、最先端のインタラクティブテクノロジーを体験できるEmerging Technologies部門では、今年も17件の研究が展示された。NVIDIA Researchの研究グループは、レンズアレイを用いた薄型のヘッドマウントディスプレイ(HMD)を発表し、南カリフォルニア大学などで構成される研究グループはプロジェクタアレイを用いた多視点裸眼立体ディスプレイを開発した。どちらも、人間の眼に対する負担を減らしながら、高画質でリアリティの高い立体映像を提示する興味深い取り組みである。また、イリノイ大学とDisney Researchをはじめとするグループが空気砲を利用した非装着型触覚ディスプレイAIREALを発表、Microsoft Researchはテレビとプロジェクタマッピング技術を組み合わせたホームシアターIllumiRoomを発表するなど、自然なインタラクションの中でリアリティの高い情報提示を可能にする取り組みが紹介された。今年は、エンタテインメントや医療分野など具体的な応用の方向性を見定めた完成度の高い発表が多く、近い将来我々の日常に入り込んでくることが期待される。
ACM SIGGRAPH2014は、2014年8月にカナダ・バンクーバーで開催される。
ACM SIGGRAPH 2013