「Computational Culture: a journal of software studies」は、査読を経たソフトウェア・スタディーズ領域における学際的な研究論文、本やプロジェクトのレビュー、インタビューなどをオンラインで無料閲覧(オープンアクセス)できるオンライン・ジャーナルである。
「Computational Culture」は、ゴールドスミス(ロンドン大学加盟)のカルチュラル・スタディーズ・センター(Center for Cultural Studies)、ロンドン・メトロポリタン大学、ランカスター大学などに所属する教授や研究者らによって設立された組織で、オンライン・ジャーナル運営のほか、今後、イベントやプロジェクトの展開にも意欲的だ。また、運営やプロジェクトの企画提案の参画を広く受け入れたいと考えている。
2011年11月の創刊号は、2010年にロンドンで開催されたワークショップの成果を基にテーマ「A Billion Gadget Minds」が設定され、公募による論考5本と近年出版された著書のレビュー6本が掲載されている。編集者のテキストでは、拡大し続ける現代のハードウェアとソフトウェアにおける「インテリジェンス(Intelligence)」の評価は、伝統的な認知心理学や心理学、人工知能などの専門領域だけでは困難であることに言及し、カルチュラル・スタディーズを視野に入れた広義の「インテリジェンス」について解説されている。新たな「インテリジェンス」を思考することをテーマに編まれた創刊号では、ウスマン・ハックとロバート・ディビス《Evolving Sonic Environment》など実験的な建築プロジェクトを取り上げて「拡張認知」の仮説を論じた「Thinking beyond the Brain」、同じく建築プロジェクトやウィリアム・フォーサイスの振付けをデータ化した《Synchronous Objects》などを取り上げ、より抽象的な「コードの数値的美学」や「コードの自立性」について論じた「Soft Thought」などが掲載された。
特別論考のレフ・マノヴィッチ氏(カリフォルニア大学(UCSD)ビジュアル・アート学科教授)による「Inside Photoshop」は、Adobe Photoshopのフィルターやレイヤー構造などを過去のメディアと関連付けながらメディア解剖学的な視点であざやかに解説している。マノヴィッチ氏は、今日のアプリケーションやソーシャル・メディアを理解するためには、メディアの系譜を知りインターフェイスやオペレーションを解析することが必要だという。なぜなら、1960年初頭に発表されたイワン・サザーランド氏の「Sketchpad」以降、さまざまな企業や人々が生み出してきたメディアの遷移が今日のソフトウェアに組み込まれているからだ。「Computational Culture」では、このような今日的理解だけでは読み取りにくい対象やプロセスに注目した批評も積極的に扱っていくという。
現在、第2号のテーマとして「データベースとソーシャル・メディア」が告知され、論文や各種レビューを募集中。締め切りは2012年3月30日。また、2012年6月28日のワークショップ「The Lived Logics of Database Machinery」開催にあたり、データベース・テクノロジーの社会動態論や政治倫理に関する論文や実践、ポスター・プレゼンテーションを募集中。プロポーザルの概要の締め切りは2012年3月9日。論文等の応募ガイドラインがあるので参照してほしい。その他の提案についてはコンタクトから受け付けている。
Computational Culture: a journal of software studies