「メディア芸術連携促進事業 研究マッピング」とは

メディア芸術連携促進事業を推進する事務局にて実施する「連携・協力の推進に関する調査研究」の3つの研究プロジェクトのうちの1つです。マンガ・ゲームの各領域の研究動向を調査・研究しました。

*平成27年度の実施報告書はページ末のリンクよりご覧いただけます。

●実施報告

 本プロジェクトは、国内外で拡大するマンガ/コミックス研究の状況を整理し、今後のさらなる研究の活性化と展開の促進を目的とします。平成27年度メディア芸術連携促進事業の基礎的事業として位置づけられており、その前景には、文化庁メディア芸術情報拠点・コンソーシアム構築事業にて、平成24年度・平成25年度に実施した「マンガ研究マッピング・プロジェクト」があります。

 前プロジェクトでは、おもに90年代以降に発表された国内外のマンガ研究の文献をピックアップし、各文献を学問領域や考察対象などの視点から分類しました。その理由は、マンガ研究の初学者や大学の授業などでマンガを取り上げる研究者、海外の研究者などを想定ユーザとして、彼らにとって有用となるデータベース構築をテーマとしたからです。

 日本のマンガ/コミックス/研究は各研究分野の境界を超えた学際的領域に属するものであり、かつ、公的な研究機関に属する研究者だけでなく、在野の研究者や評論家によっても支えられてきました。そのため、一連の作業によって以下の点が問題として明らかになりました。それは、誰が利用するための(誰にとって利用しやすい)マッピング(データベース)なのか、このようなデータベースにもとめられるニーズとはなにか、日本国内の文献情報と海外の文献情報をどのように接続し統合するか、という3点です。

 これらの点をクリアし、今後も発展的に有効活用できるマッピングとはどのようなものか。今回のプロジェクトではこれを課題とし、作業を進めました。

 今年度は、上記問題点の改善と、経年による関連情報の追加を企図として作業を実施しました。

 マンガ/コミックス研究は近年、社会連携や国際交流の文脈においてますます広がりを見せており、その方面で活用できる研究テーマや著作、論文などの情報が求められつつあります。そうした背景から今回は、例えば、マンガを活用して地域活性化を図ろうとする自治体の関係者に有用な情報など、広く社会展開・貢献できる研究マッピングの構築を志向しています。一方、研究マッピングの利用イメージを具現化するにあたっては、上記の目的にあわせ、内容だけでなくメディアとしての機能も見直していく必要があります。

 本プロジェクトは、いったん「マッピング・プロジェクト」としてなにをテーマにするか、という点に立ち返り、具体的な議論を来年度以降に進めるための土壌づくりからおこなうことにしました。そこで本年度は、文献情報のアップデートをするために、日本で発表された文献にあたる国内班と、外国語にて海外で発表された文献にあたる海外班の2班で分担し、平成26年から27年9月までに発表された国内外のマンガ/コミックス研究やマンガ文化についての文献をピックアップしました。収集した情報は、文献管理ツールの「Mendeley」を利用して整理しました。

 今後の作業としては、想定ユーザ層における「マッピング」にたいするニーズの把握についての詳細な調査、「マッピング」の設計構想と「マッピング」構築に向けた具体的な作業への着手、日本語文献と外国語文献の結びつけや法的問題への対応、という3点をおもな課題として挙げられると思います。また、アニメやゲームなどメディア芸術における他領域と情報のつながりをもつことができれば、研究活動のさらなる発展が期待できると考えられます。具体的な作業としては、マンガ/コミックス研究に関する文献の情報収集の継続、想定ユーザ層を中心としたマンガ/コミックス研究の活用可能性に関する調査、情報拠点としての「マッピング」構築の構想、という3点を掲げています。

 将来的には、世界各地の研究・教育・産業・行政分野に関わる人々が、マンガ/コミックス研究の全体像や新しい発展を共有できるヴァーチャル・スペースの構築を目標としています。

平成27年度の報告書は以下のリンクよりご覧いただけます。

実施体制 ※肩書きは平成28年3月時点のものです。

監修
吉村和真(京都精華大学副学長/同マンガ学部教授)
実務班
杉本=バウエンス・ジェシカ(海外班、龍谷大学講師)
石川優(国内班、大阪市立大学研究員)
西原麻里(国内班、京都精華大学ほか非常勤講師)
協力
日本マンガ学会

【実施報告書PDF】

報告書表紙画像

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本報告は、文化庁の委託業務として、メディア芸術コンソーシアムJVが実施した平成27年度「メディア芸術連携促進事業」の成果をとりまとめたものです。報告書の内容の全部又は一部については、私的使用又は引用等著作権法上認められた行為として、適宜の方法により出所を明示することにより、引用・転載複製を行うことが出来ます。